写真/菊地和男(ルンゴ)

元々日本でも山間部ではイノシシや鹿肉を食べる文化がありましたが、一般的にはなじみの薄いもの。しかし、実は野生の鳥獣が農作物を食べる被害が年200億円にものぼっているなど、日本の野山を駆け巡る鹿やイノシシなどの存在は社会的な大問題に。10年ほど前から国や地方自治体がその対策に徐々に本腰を入れ始め、この7〜8年ほど前からは野生の鳥獣を捕獲するだけでなく、「それじゃもったいない!肉として売ろう!」という流れができました。
ということで、「獲って売りたい」側と「美味しいものを、もっと知りたい・食べたい」側との利害が一致&スパークしているのが、今というワケなのです。
オフィス街の居酒屋にも登場! カジュアルな入門編が大盛況
◆ 「ルンゴ」



こう語る「ルンゴ」料理長の後藤啓太さんはその理由を、信頼できる会社から仕入れをする肉の、丁寧な下処理にあると言います。また、後藤さんは元々イタリア料理人のため、ジビエを扱うことに慣れており、和洋に縛られないアレンジを利かせられるのも大きなポイントです。

夏の間は鹿とイノシシに限定されますが、10月以降、猟期が始まれば、クマや鴨なども入荷予定。鹿のハツなど、内臓も定期的に仕入れが可能なルートをもっているので、その時々でオンメニューされるそうです。
◆ ルンゴ
住所/東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル B1F
営業時間/11:00〜14:00(L.O.)、17:30〜22:30(L.O.)
土・祝12:00〜20:30(L.O.)
定休日/日曜
予約・お問い合わせ/☎03-6551-2503
●鹿レバーペースト カラザウ添え 480円、鴨ハツの唐揚げ 680円、日本ワイン・グラス 550円、ボトル 3000円〜
自らが獲って捌いた肉を調理する、レアスタイル・レストランも登場
◆「 ELEZO HOUSE(エレゾ ハウス)」


身体にダメージを与えないために、撃つのは首や頭だけ。鹿なら4歳までのメスと3歳までのオスしか獲らない。捕獲から自社の食肉処理施設で行う一次加工までを2時間で完了させる。これらはエレゾ・ルールのわずか一部ですが、いずれもこれまでの狩猟ではなかなか実践されていなかったこと。特に、性別や月齢をここまで細かく規定した例はほぼありません。「エレゾハウス」では時折、鹿肉が、性別違い・月齢違いで供されますが、それが可能なのもこのルールがあるからなのです。
ちなみに、「エレゾ」のスタッフは全員、狩猟免許を保持。通常の狩猟は専属ハンターである尾崎松夫さんや約30名いる会員ハンターが行いますが、「命を丁寧に押し頂くこと」を徹底するため、他スタッフも定期的に山へ入るそうです。
「鹿は通年で提供していますが、もちろん冷凍モノではありません。春夏は若々しくさっぱり、秋冬はうま味が強まるなど、四季で変化する肉質を楽しんでいただきたいですね」と、代表の佐々木は言います。
一見、普通の話のようですが、四季での食べ比べが可能なのも、自社で肉を供給できるから。また「エレゾ」は近年、牛や豚などの家畜生産も手がけており、「エレゾハウス」での料理にもそれらを織り交ぜて供しています。ジビエをそれだけでなく、牛肉などと食べ比べることで、各々の美味しさが楽しめるのも、うれしいところ。食経験値の高い女性をお連れしても、従来にない満足を感じてもらえるはずです。

そう、佐々木さんは笑います。ご興味をもたれた方、ぜひ訪問したい方は、「LEON.jpを見た」とメールにてご相談してみてくださいね。

◆ ELEZO HOUSE
住所/非公開
営業/18:00〜19:30までの入店(木・金・土のみランチ営業あり、12:00〜13:00までの入店)
定休日/日・月曜
予約・お問い合わせ/☎非公開。予約は、「LEON.jpを見た」とe.house@elezo.comまでメールでご相談下さい
●価格/ランチ8100円、12960円。ディナー12960円、16200円
鴨やベキャスなど、より奥深いジビエの世界を知るなら、このフレンチ
◆ 「アタゴール」
木場にあるフレンチレストラン「アタゴール」は、青い車両が目印。オーナーシェフの曽村譲司さんはホテルオークラ、在ベルギー日本大使館・公邸料理人を経て、オリエント急行で腕を振るった方。オリエント急行のシェフを務めた、唯一の日本人です。海外での修業時代にジビエのおいしさに開眼、帰国後に開業した自店でも、多彩なジビエ料理を提供しています。

曽村さんは決めたら、とことん突き詰めるタイプ。そして時流に流されることのない頑固さが彼の身上でもあります。2005年に恵比寿で「アタゴール」を開業して以来(2012年に木場へ移転)、メニューは「お客さんが好きなものを、好きなように選べるように」と、プリフィクススタイルが中心。狩猟シーズンである秋冬はもちろん、現在は夏でもほぼ、このメニューブックにジビエが登場しています(4〜5月の鹿の出産時期には、お休みになります)。


曽村さんがお付き合いしているのは、前述の長野・下諏訪の他、青森・秋田で猟をする方、千葉・房総で活動されている方など。いずれもジビエに情熱を傾ける曽村さんが色々なご縁を経て出会った、熟練のハンターさんばかりです。
「例えば下諏訪の竹内清さんは、家の庭先に完全な食肉処理施設を作り、肉や内臓はもちろん、角までもすべて使い尽くそうとされる人。ジビエの捕獲・解体・販売まで、信念を持ってやってらっしゃる、“本当に格好いいおじい”ですよ」(曽村さん)
その方から届く肉は、もちろん最上のもの。それを時にガチのクラシック手法で、時には東南アジアのエッセンスを交えて、曽村さんは特別なひと皿へと仕上げていくのです。
9月・10月からは、本格的なジビエシーズンの到来。鹿やイノシシはもちろんのこと、ライチョウやハトなど、未経験なジビエに挑戦するなら、「アタゴール」へぜひ! 更なる新しい美味の世界が拡がりますよ。

◆ アタゴール
住所/東京都江東区木場3-19-8
営業時間/11:30~13:30(L.O.)、17:30~21:30(L.O.)
定休日/火曜
予約・お問い合わせ/☎03-5809-9799
●ディナーコース(プリフィクス)5500円〜