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2021.02.04

『007』でロジャー・ムーアだけが例外だったこと

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

さて、前々回に続き、『007』シリーズとシャンパーニュについて考察します。最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は新型コロナウイルス感染症の影響で公開が延期されていますが、秋には予定通り公開されることを願いながらご紹介してまいります。

モテるワイン道入門~『00』とシャンパーニュ (その2)

モテ男の代名詞ともいえるジェームス・ボンドが映画『007』シリーズで飲むシャンパーニュ、以前はドン ペリニヨンがほぼ定番のように登場していたことはすでにご紹介したとおりです。しかし、第11作の『007 ムーンレイカー』(原題Moonraker、1979年、ロジャー・ムーアがボンド役)以降、公開済みの最新作である第24作『007 スペクター』(原題PECTRE、2015年、ダニエル・クレイグがボンド役)までの間は、ほぼ一貫してボンドが飲むのはボランジェとなりました。『007』の映画製作権者とボランジェ社の良好なパートナーシップ関係が続いているからだと思われます。

2019年には両者のパートナーシップ40周年を記念してBollinger Tribute to Moonraker Luxury Limited Edition((ムーンレイカーへのトリビュート-ボランジェ・ラグジュアリー・リミテッドエディション)が発表されました。世界限定407セットで、日本では2020年4月から発売されましたが、有名なクリスタル・メーカーであるサン・ルイ社のシャンパーニュ・クーラーがついて、お値段なんと110万円(税込)!
▲ 日本における発売元、株式会社アルカンのウェブサイトより
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また、実際にフランスのアイ(Ay-Champagne)という村にあるボランジェの本社を訪問すると、『007』とボランジェをテーマにしたDVDをもらえます。歴代の『007』シリーズにボランジェのシャンパーニュが登場するシーンが抜粋で収録されており、なかなか見応えがあります。筆者も2011年に訪問した際にゲットしました。
▲ 筆者所蔵のBollinger/007のDVD
▲ ボランジェ本社のサロンでくつろぐ筆者
『007 ムーンレイカー』で登場するシーンは、再びヴェニスのホテル(前回の『007 ロシアより愛をこめて』ではグリッティ・パレスでしたが、今回は別の高級ホテルのダニエリ)で、

ボンド:Bollinger! If it's '69 you were expecting me! 
   ボランジェだ! 69年ものだったら僕が来るだろうと思っていたってことだね! 

とのやり取りがあります。興味深いのは、この時の発音が「ボリンジャー」と英語読みであることです。英米のChampagne市場を意識したからなのでしょうか? その後も、ロジャー・ムーアがボンド役の時はずっと「ボリンジャー」のままです。

また、映画後半では大人気の悪役だった不死身の大男ジョーズ(リチャード・キール)が「ボランジェ R.D.」を自慢の歯で抜栓するシーンがあります。別に歯を使わなくても手で問題なく開けられるはずなのですが、ジョーズのトレードマークの武器が鋼鉄の歯でしたからね(笑)。
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その後、ジェームス・ボンド役はティモシー・ダルトン、ピアーズ・ブロスナン、そしてダニエル・クレイグと引き継がれます。

最近で興味深いのは第21作の『007カジノ・ロワイヤル』(原題Casino Royale、2006年)。前半、バハマのオーシャン・クラブという高級ホテルのコテージで「ボランジェ・グランダネ」とベルーガ・キャビアをルームサービスでオーダーするシーンでは、しっかり「ボランジェ」とフランス語の発音です。どうも「ボリンジャー」と言っていたのはロジャー・ムーアだけのようです。

ちなみに、カジノ・ロワイヤルは映画化こそ第21作目ですが、原作であるイアン・フレミングによる小説としてはジェームス・ボンドシリーズの第1作として1953年に出版されています。この時に小説の中で登場するシャンパーニュはボランジェではなくテタンジェ、しかも「コント・ド・シャンパーニュ」ができる前の、「テタンジェ ブラン・ド・ブラン 1943」です。原作の出版から50年以上も経過して映画化されたため、登場するシャンパーニュのヴィンテージはもちろん、ブランドも様がわりしてしまったのですね。

『007』シリーズは今後も映画化が続くと思われますが、ボンドが飲むシャンパーニュがどのように変遷していくかに注目して映画を鑑賞するのも一興だと思います。ジェームズ・ボンドにあやかって、少しでもモテるようになりたいものですね。
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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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