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2020.11.13

三浦彰の「ラーメンはファッションだ!」

「銀座 魄瑛」の特上ラーメンはパリ・オートクチュールに匹敵する!

長年ファッション業界紙で編集長を務めてきた三浦彰さんが、ファッションと同じくらい、いや、ファッション以上に愛しているのがラーメン。その偏愛を語ります。

CREDIT :

文/三浦 彰  写真/秋山 都  

私はファッション週刊紙WWDジャパンに1982年から37年間携わってきたが、今年9月に退職した。この間ファッションとともにその真髄に到達したのではないかと自負しているのがラーメン道だ。この37年間で、仕事の合間や休日に札幌から福岡までゆうに2,000軒は食べ歩いてきた。そのファッションとラーメン道をドッキングさせるというのが、今回のミッションだ。 
▲「銀座 魄瑛」の特上ラーメン(1,800円)
ラーメンがグルメ道の1アイテムになったのは1980年代前半だ。そのきっかけは、レストランガイドの革命と言われる山本益博著の『味のグランプリ』(1982年・講談社刊)に寿司、天ぷら、蕎麦、洋食、鰻とともにラーメンが取り上げられたことに端を発する。それまでは、東京都内といえども、旨いラーメン屋は、今のように「林立」するという状況ではなかった。その『味のグランプリ』以後、博多とんこつラーメン、喜多方ラーメン、和歌山ラーメンなどの地方ラーメンが続々東京進出を果たした。

しかし、ここ40年間のラーメン史を語る上で重要だった出来事は、三田の「ラーメン二郎」、東池袋の「大勝軒」、横浜の「吉村家」を発祥とする家系ラーメンの多店舗展開だったと思う。とくに「大勝軒」のメインメニューだったつけ麺は、ラーメンに並ぶ人気アイテムになった。ファッションで言えば、1960年代後半にイヴ・サンローランが提案したパンツルックがスカートコーディネートに並ぶスタイルになったようなものである。
今回はまず、このつけ麺をメインにしている店で、世界のファッション消費の中心である銀座で最もラグジュアリーなつけ麺を提供している「銀座 魄瑛(はくえい)」を取り上げる。

場所は松屋通りを昭和通りに向かって歩いて行って右側の円柱型のビルの地下1階だ。その1階は行列のできるシュークリームショップの「緑花堂(ろっかどう)」である。この日も午後4時の時点で8人ほどの行列ができていた。これは後に知ったのだが、この1階のシュークリームショップと「銀座 魄瑛」には、ヴィジュアル系バンド「ペニシリン」のHAKUEIが経営にかかわっているらしい。きっとHAKUEIはシュークリームとつけ麺が好きなのであろう。
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◆「銀座 魄瑛(はくえい)」

▲「銀座 魄瑛」(東京都中央区銀座4-10-1)
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「銀座 魄瑛」は、階段を下りてドアを開くと、中は黒を基調にした実にシックな佇まい。店員もカフェのギャルソンという出で立ちである。とは言え、カウンターはコロナ対策でアクリル板によって仕切られている。営業時間も現在はコロナ対応で午後4時半までの変則営業だという。

「特製つけ麺」1500円を注文する。この価格はラーメン・つけ麺のカテゴリーではたぶん日本一であろう。自信がなければ、つけられる値段ではない。特製つけ麺の、さらに上には味玉やチャーシューが増量された「特上つけ麺」2000円というのもある。フレンチレストランのランチメニューに匹敵する値段だが、果たしてどんなものなのか。
まず、つけ麺が着丼する前にはシジミのスープが小さな錫の盃に入れられて登場する。アペリティフというわけである。

この店のスープは、丸鶏から取ったスープと鶏油(ちーゆ)がベース。これにシジミのスープをミックスするダブルスープである。もっちりした中太の麺(信州産小麦)にはかすかにトリュフオイルの香りづけがなされ、ピカピカと輝いている。トッピングには、江戸前シジミのムース、鴨ロース、和牛ロース、豚ロースのチャーシューが1枚ずつ、それにラディッシュのスライス、青菜、これにライムが添えられている。
▲まずは江戸前しじみのムースがついていない部分の麵からつけ汁につけて食べ、好みで徐々にムースを絡めるのが楽しい。
まずダブルスープに麺を浸していただく。トリュフの香りとシルクのようなのど越しがたまらない。ファッションで言えば、かつての大巨匠ムッシュ・ディオールの柔らかいシルク使いを思わせるのである。しばらく食べ進んだ後、つけ汁にシジミのムースを溶かして麺を浸して食べてみる。さらに濃厚な味わいに味変。昼間のデイウエアから夜のソワレに移行したような感じだ。さらにシメは、ライムを絞り、麺にかけて食す。朦朧とした夜のムードから一変、真夏のサントロペに連れて行かれたような感じである。なるほどライムである。レモンではない。すだちでもない。
▲鶏油(チーユ)が黄金色に輝くつけ汁。
食べ終わったのを見計らって、ギャルソンが鰹と昆布でとった熱々の出汁をつけ汁に注いでくれる。これを飲み干すと、入店後20分ばかりの間のさまざまな味が走馬灯のように思い出される。
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素晴らしい時間だった。つけ麺というよりも、フレンチのコースを食べたような食後感である。ちょっと量が足りないという方もいらっしゃるだろう。そういう方にはトリュフ卵かけご飯(1000円)というとんでもないサイドメニューをぜひ勧めたい。トリュフを惜しげもなく使った逸品である。特製つけ麺1500円と合わせて2500円! 一度体験していただきたい。
▲つけ汁をトリュフ卵かけごはんにかける、という反則技も。
まさに銀座に輝くラーメン・つけ麺界のエベレスト、ファッションで言うならその最高峰であるパリ・オートクチュールに匹敵する存在であった。

三浦彰/ジャーナリスト

福島市生まれ。慶應義塾大学卒業後、野村證券を経て、1982年WWDジャパンに入社。同紙編集長、編集委員を務めた後、2020年9月に退職。現在は和光大学で教鞭をとる。

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