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2025.07.27

【第81回】 天空落とし×ロックンインパクト

天空落とし・中村栄利×ロックンインパクト・嶋崎順一。稀なるラーメン共宴をリポート

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

BY :

文/山本益博
CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。

嶋崎順一さん×中村栄利さんという夢のようなコラボ

7月19日に六本木「MASHI NO MASHI」で開かれた「ROCKNTHREE × NAKAMURA ×MASHI NO MASHI」というラーメンのイベントへ出かけてきた。

「ROCKNTHREE」の主人は「ロックンビリ―S1」の嶋崎順一さん、「NAKAMURA」の主人はニューヨークでラーメン店を開いている中村栄利さん。ラーメンファンにとっては、夢のようなコラボという。
ラーメン LEON 山本益博 ラーメン革命! WebLEON 天空落とし・中村栄利×ロックンインパクト・嶋崎順一
▲ 嶋崎順一さん(左)と中村栄利さん(右)。
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当日のメニューは、

1.「ドラフト昆布水」
2.「25年ぶりの昆布ネーション」
3.「鰻とフォアグラの花椒仕立て」
4.「天空落とし×ロックンインパクト」
昆布水ラーメン誕生にかかわる二人ならではの「ドラフト昆布水」がアミューズとして出された。小さなグラスのお見立ては、20世紀末から今世紀初めまで、世界の料理界を席巻したスペインは「エルブリ(エルブジともいう)」の名物エスプーマを思わせる小品。天才フェラン・アドリアの調理技術が、いまや日本のラーメンにも当たり前のように登場している。
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▲ アミューズとして出された「ドラフト昆布水」。
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「昆布出汁」と「麺」と「キャヴィア」の相性は抜群!

「25年ぶりの昆布ネーション」は、冷たくも熱くもないスープと麺に、キャヴィアを添えてある。「昆布出汁」と「麺」と「キャヴィア」の三位一体の相性は抜群! 食べながら思い出したのは、イタリアはミラノの天才、グアルチエロ・マルケージが生み出した「冷たいスパゲッティーニ、キャヴィア添え」だった。
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▲ 2品目の「25年ぶりの昆布ネーション」。
イタリアでは、パスタは茹でたてを食べるもので、冷たくして食べることがなかったが、1985年、来日して食べた「もりそば」をヒントに、マルケージが「冷たいパスタ」を考え出し、それにキャヴィアを添えて、前菜としてサービスした。1980年代半ばのことである。

彼は、本来包み込む意味を持つ「ラヴィオリ」を、セルフィーユが透けるように打ち込んで、帆立をを包まず盛り込み「ラヴィオリ・アペルト(開かれたラヴィオリ)」と題して供したりもした。
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▲ 二人で一緒に作る「昆布ネーション」。
マルケージは、イタリアで初めて「ミシュラン」の3つ星を獲得した天才料理人である。

「昆布ネーション」がもうひとつ画期的なのは、熱くもなく冷たくもない温度だったこと。言ってみれば「生温かい」味わいの美味しさ。

フランス料理では「ティエッド」と言って、「生温かい」温度で供される料理があって、フランス人はそれを受け入れるが、この温度、日本ではかなり珍しい。この勇気に拍手!
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もうひとつ、アイデアが欲しかった鰻とフォアグラ

3つ目は「鰻とフォアグラの花椒仕立て」。バゲットに鰻の蒲焼とフォアグラのペーストをのせ、花椒(ホアジャオ)を添えてある。中国の香辛料で柑橘の香りが魅力だが、これが効果的ではなかった。
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▲ 3品目の「鰻とフォアグラの花椒仕立て」。
まず、地焼きの鰻とフォアグラの油脂と油脂のあいだになにか挟んだ方がよいのでは。例えば、奈良漬けのスライス。京都なので、奈良漬けではなく都漬けなのだが、老舗「田中長」の「すいか」の味醂漬けなどはどうだろう。
そして、「花椒」だが、柑橘の柚子や夏みかんの汁を、効果的に使ってみては? 昔「エルブリ(エルブジ)」でやっていたのは、名刺大の白い紙を二つ折りにし、そこへ柑橘のスプレーをして、食べる人が、その柑橘の香りを嗅ぎながら、料理をいただくという趣向があった。今回の二人にこそふさわしいアイデアではなかろうか?
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「行ってらっしゃーい!」の掛け声が店内に響き渡る

最後は、お目当ての「ラーメン」で、「天空落とし」と「ロックンインパクト」の湯切りのパフォーマンスで、カウンターに並ぶ客たちを楽しませてくれた。
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▲ 最後は「天空落とし×ロックンインパクト」と名付けられたラーメン。
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▲ 中村栄利さんの「天空落とし」と呼ばれる湯切りパフォーマンス。
ふたりの麺を丼に一緒に盛り込み、お客様へ差し出す時、ドスの効いた大声で「行ってらっしゃーい!」と掛け声が店内に響き渡る。

カウンターの私たちは、その丼を黙っていただくだけだったが、次回は、ぜひ「待ってました!」と掛け声をかけて丼を受け取りたいと思う。
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▲ ドスの効いた大声で「行ってらっしゃーい!」。
山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
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