2025.07.13
【第80回】 甲殻類のラーメン2
ついに出合った、 目黒 「Break Beats」のオマール海老らぁ麺は申し分なき傑作!
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)
「ミシュラン」掲載のフレンチ出身シェフが作る「オマールらぁ麺」
最近では、今年の2月、パリ8区のレストラン「アピシウス」で食べた「オマール海老」は、甘味が強く、プリプリとした歯ごたえが心地よく、カラから取ったソース(ビスク)とともに忘れられない味となった。

店を入ると、すぐにカウンター内でラーメンをつくっている店主に顔が割れ、声をかけられた。そして、注文した「醤油らぁ麺」を食べた。素晴らしい出来の一杯だった。何より、食材の調和と、塩味の加減が見事で、店主は「絶対味覚」の持ち主ではなかろうかと考えた。

期待に胸を膨らませて、店ののれんをくぐり、カウンター席で待った。

たちまちのうちに、一杯を平らげたが、どうしても「チャーシュー」が添えてる違和感がぬぐえなかった。
金目鯛のソテーとプリプリ海老のワンタンを添えて
そして、2週間後、再度願い出た、チャーシューなしの「オマール海老らぁ麺」(3500円)。どんな姿で現れるかと、調理過程をカウンター越しに眺めていると、なんと金目鯛をポワレ(フライパン焼き)し始めた。

まずは、スープをいただく。なんという香しい、そして品格のあるスープ。金目鯛のソテーもぴったりと寄り添う。申し分のない、オマール海老のラーメンの傑作!
食べ終えて、フランス料理の巨匠アランシャペルの「料理人はテーマをもらうと、俄然やる気がでるのさ」という言葉を思い出していた。


● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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