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2025.06.08

【第78回】 上湯、清湯のスープそば

西早稲田「らぁ麺やまぐち」、京都「研野」、四谷「新楽記」ほか上湯、清湯スープの名店食べ比べ

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。

香港「福臨門」ふかひれスープの淡味を知ってしまうと……

円高で海外旅行に出かけることが容易だった1980年代後半、しばしば香港へ3泊4日の食べ歩きに出かけた。必ず訪れたのが、九龍にある「福臨門魚翅海鮮酒家」だった。どの料理も逸品ばかりだったがとりわけ「魚翅(ふかひれのスープ)」と「脆皮鶏(クリスピーチキン)」は香港中の名店でも味わえない「福臨門」のスペシャリテだった。
メニューには「ふかひれのスープ」は、なんと5段階あり、最上級は「Most very superieur shark’s fin」とあり、一杯日本円にして2万円ぐらいだっただろうか? 私たちは清水の舞台から飛び降りる覚悟で3番目の「Very superieur shark’s fin」を注文した。
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パイロセラムの透明な容器に入ったふかひれは翅状ではなく、一本一本ほぐされ、その一本がもやしほどの太さがあった。これだけでもびっくりしたのだが、もっと驚いたのが、スープの味わいだった。

「老鶏」と「金華ハム」から丁寧に採った、いわゆる「清湯」で、ダイレクトに塩味を感じさせず、「金華ハム」の塩味のみで淡麗に仕上げた逸品というか、絶品だった!
この「淡味」を知ってしまうと、濃厚な出汁を敬遠するようになった。例えば、「塩ラーメン」を食べた時、いきなり塩味を感じさせるのは「ラーメン」といえどもスープの品格を欠くのではなかろうかと。いままで「塩ラーメン」でスープに感動したのは、湯河原の「飯田商店」ほか何店もない。
ラーメン LEON 山本益博 ラーメン革命! WebLEON 飯田商店
▲ 湯河原 「飯田商店」の塩らぁ麺。
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比較にはならないが、例えば、中国料理店だったら南麻布「茶禅華(さぜんか)」。この店の料理のコースの終わりにでてくるスープ麺のスープは、香港の「福臨門」を思い出させるに十分な「清湯(ちんたん)」である。

今年オープンした四谷「新楽記」の香港の味を思わせる「上湯」によるスープ麺も存分に満足できる、言ってみれば「香港ラーメン」。
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▲ 南麻布「茶禅華」の清湯麺。
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▲ 四谷「新楽記」の上湯生麺。
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蛇足だが、この店の前菜の「焼き物」、チャーシューはじめ、すべての焼き物が、東京の中国料理の名店、横浜の中華街の広東料理店以上に素晴らしい。
意外にも、京都の「日本料理 研野(けんや)」でも見事な「清湯」による麺が出てくる。京都の日本料理で「清湯」とは? なんとも意外だが、青森出身のご主人は京都「菊乃井」で修業のあと、同じ京都の中国料理店で学んだと異色の経歴の持ち主である。

そうそう、仙台の中国料理店「KUROMORI」の「香麺」も「清湯」ベースで忘れ難い味である。
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▲ 京都「研野」の上湯ラーメン。
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▲ 仙台「KUROMORI」の香麺。
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東京のラーメンに眼を移すと、白糸台の「Ramen Rouge」が、昨年開店当初のメニューは「中華そば」だったが、今年になって「上湯(しゃんたん)そば」という表記になった。スープの味はほとんど変わらないが、フランス料理のテクニックで、中国料理の上品なスープを生み出すところから「上湯(しゃんたん)」の表記に替えたのではなかろうか?
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▲ 「RamenRouge」の特製上湯そば。
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最近、Instagramで見つけて出かけて行ったのが、西早稲田の「らぁ麺やまぐち」。チャーシュー、メンマ、青味、のりなど、ラーメンのどんぶりに添えられる脇役たちを何も盛り込まず、スープと麺だけで仕上げた果敢な「かけそば」。
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▲ 西早稲田「らぁ麺やまぐち」の塩かけそば。
「塩」と「醤油」の2種あり、はじめに出かけた時「塩」をいただいた。スープは淡味のうま味が丁寧に抽出されているのだが、「塩味」がストレートに出ていて、かなりしょっぱい。連食は努めて避けているので、日を改めて出かけ、「醤油」のかけそばを注文した。
ラーメン LEON 山本益博 ラーメン革命! WebLEON  らぁ麺やまぐち
▲ 「らぁ麵やまぐち」の醤油かけそば。
鶏のうま味が存分に出たスープで、醤油がそこへ彩りを添えている。細いストレート麺が巧みに絡んで、するすると喉を通っていく。食べ進むと、麺の味わいがスープにミックスされるが、味は濁らず、最後まで澄んでいた。

今、あちこちのそば屋で、「もりそば」「せいろそば」が一枚900円の時代、この「かけそば」930円、決して高くない。品格のある高潔な一杯と呼びたい!
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山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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