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2020.04.30

コロナに苦しむ生産者のために私たちができることとは?

新コロナウイルスに負けるな! 食通で知られる柏原光太郎さんが、コロナ禍に苦しむ飲食店に続き、食品生産者の現在をレポートします。

CREDIT :

文/柏原光太郎

ある時は出版社の社員、ある時はグルメサイトのNo.1レビュワー、またある時は娘のために弁当を作り続ける料理男子……さまざまな顔を持つ食通、柏原光太郎さんが、苦しい時期を乗り越えようとテイクアウトやイレギュラーな営業で頑張るさまざまな飲食店に続き、食品生産者の危機を私たちがどう手助けできるのか、考えます。

生産者の悲鳴がSNSから聞こえてくる。

「酒の販売は夜7時まで、営業は8時までということは定食屋をやれということでしかありません。どうやって利益をあげればいいんですか」
と飲食店経営者は憤りながらも、デリバリーやテイクアウトなど、さまざまな工夫をこらしながら、出口の見えない未曽有の危機に精いっぱい対処しています。

しかし、飲食店は私たちの身近にいるので大変なことがわかりますが、実は飲食店が厳しいことで同様に危機的な状況に置かれている業界はほかにもあります。
飲食店に食材を共有している仲卸や生産者たちです。客が来なくなった飲食店が食材の購入を絞れば豊洲や太田などの仲卸市場、直接食材を購入している農家や漁師、肉の生産者への注文が減ります。

市場は大切なインフラですから注文が減ったからといって閉じるわけにはいきません。先日は火急な仕事があり、午前8時に豊洲市場の水産棟に訪れました。普段はターレが行き来し、大変な賑わいですが、すでに閉店の準備をしている店もかなりあり、そのうちのひとつに話を聞いたら、「開けていても客がこないしさ」と寂しそうに笑っていました。

また、養殖魚の生産者は需要が少なくなったからと言って、急に生産を止めるわけにはいきません。ある仲卸は、「鯛の養殖会社の社長と話をしたら、4月に入ってから全く売れないのに、餌代だけで月に3000万円かかる」とこぼしていました。

鶏肉や牛肉の生産者も事情は同じです。毎日餌をやらなければならないし、ある程度の大きさになれば食肉にしなければなりません。野菜だって売れないからといって畑に放置することはできません。

神保町の焼鳥店「蘭奢待」主人の和田浜英之さんは、3月下旬にSNS上でこう呼びかけました。
秋田から直送された比内鶏。画像は和田浜さんのSNSで告知時に使用されたもの。
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「普段お店で使用している比内地鶏がピンチです。
コロナの影響で飲食店での消費量が減ってしまい余っています。
通常比内地鶏は180日前後飼育されるため、半年後まで生産をストップ出来ません。
今後、減産する予定ですが完全に生産をストップすると生産者の生活が立ち行かなくなってしまい、比内地鶏の消滅すらあり得ます。
普段、鶏に生かされている自分としては、少しでも生産者のお役に立てればと相談した所、冷凍にはなりますが、ご家庭に直接配送して頂けるようになりました」

同じような状況は私が知っているだけでも奥久慈軍鶏や土佐ジローなどの地鶏生産者も同様ですし、牛肉では誰も知っているような牛肉料理店が在庫を抱えて困っています。
ただ、私たち一般消費者からみれば、これまでスーパーなどではおいそれと手に入れられなかった希少な業務用の高級食材を直接購入できるチャンスが生まれたのです。

そんな思いの方に見ていただきたいのが「コロナ支援・訳あり商品情報グループ」です。立ち上げた幹事はこのように思いをつづっています。

「こちらのグループは賞味期限切れ、在庫を抱えて廃棄しなければならない。
廃棄するくらいだったら訳あり価格で販売したい。
そんな方々の救済グループです。
ただの割引商品の販売サイトではありません。
赤字覚悟で販売協力頂きたい方のみ投稿お願いします。
地域や業界を支えてきた人たちがいます。
そんな方々の命の灯火を消してはいけない。
そんな思いでこのグループを立ち上げました。
また、暗いニュースばかりで、気持ちまで落ち込んでしまう。
そこで少しでも明るいニュースを届けたい。そんな思いもあり、
立ち上げました」
肉、魚、野菜などの生鮮食品のほか、生花や漬物、加工食品など幅広い商品について情報が掲載されている。
立ち上げから10日ほどで24万人が「いいね!」を押し、すでに数百の投稿があるようですが、どれも今回のコロナショックで想定外のことが起こり、在庫を抱えてしまい、廃棄するなら安くていいから味わっていただき、次回につなげたいという思いがこもっています。

そこまでして売らなくてはいけないのか、困っている人のものを安く買っていいのか、という意見もあるようですが、何をすることが正解なのかわからない中、誰もが試行錯誤しているのが正直なところだと思います。

ほかにも、個別で情報を発信している業者、生産者はいくらでもあります。彼らが汗水流して作ってきた食材を無駄にしないという思いを共有しながらも、新しい食材をいただける機会を試すことは、けっして悪いことではないと私は思います。

●柏原光太郎

1963年東京生まれ。(株)文藝春秋でウェブ事業、宣伝部門を担当する傍ら、十数年前から食の魅力にはまる。食べるだけでなく、作る楽しみを普及させようと男性が積極的に料理をするコミュニティとして、「台所男子の会」「軽井沢男子美食倶楽部」「日本ガストロノミー協会」を立ち上げる。
インスタグラム:kashiwabara_kotaro

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