• TOP
  • GOURMET
  • コロナを逆手に取れるか? 今だから味わえる人気飲食店のアレコレ

2020.04.15

コロナを逆手に取れるか? 今だから味わえる人気飲食店のアレコレ

新コロナウィルスに負けるな! 食通で知られる柏原光太郎さんが、コロナ禍に苦しむ飲食店の対応策をレポートします。

CREDIT :

文/柏原光太郎

新コロナウィルスにより苦しんでいるのは第一に患者のみなさま、次に医療従事者の方々でしょう。また、ビジネス上苦しんでいるのはまず飲食店業界が筆頭に上がるでしょうか? ある時は出版社の社員、ある時はグルメサイトのNo.1レビュワー、またある時は娘のために弁当を作り続ける料理男子……さまざまな顔を持つ食通、柏原光太郎さんが、苦しい時期を乗り越えようと頑張るさまざまな飲食店の姿をレポートします。

こんな時だから名店の味を気軽に楽しめる!

「お店の前でドライブスルーでお渡しできるようになっています」
「普段やっていないランチを始めて、夜は時短営業です」
「通販サイトで買っていただいたら、その金額と同額の商品をプレゼントします」
「普段のコースをお弁当のなかに詰めた豪華弁当を作ってみました」

新型コロナショックで、目に見える形で被害を受けているのは飲食店です。2月から来店者数は下降線をたどり、3月末の小池都知事の具体的な営業自粛要請でさらに下降。そして4月10日の記者会見で営業が20時までにするよう求められ、私の周囲の経営者、シェフたちからは、「これはやめろというのと一緒だ」と怒る声も数多く聞こえてきます。

しかしその一方で、早めに営業自粛をする代わりにデリバリーやテイクアウトに活路を見出す店も多くなってきています。当初は店のメニューをそのまま出していた店が多かったのですが、「いつ終わるかわからないなら、いっそ自粛を楽しんでしまおう」とばかりにこの数日間、お店もこの状況をなんとか乗り切ろうという取り組みが出てきました。

冒頭のドライブスルーを4月から採用したのは「霞町三〇一ノ一」。西麻布のビルの奥に潜む隠れ家のような日本料理店で、芸能人や財界人など客筋のいいことで有名ですが、いち早く「三密」を避けるために目の前の道路でお渡しできる方式にし、弁当はもちろん予算を伝えてのおかまかせもOK。人目にもつかないと好評です。13日からはランチ営業も始めました。

同じく、ランチタイムを再開したのはイタリアンの老舗「キャンティ」。こちらも深夜には芸能人や文化人が多く集まる店ですが、深夜営業を自粛する代わりにランチをはじめ、テイクアウト対応もしています。あの名物「スパゲティ バジリコ」も持ち帰れます。

イタリアンの名店「キャンティ」のテイクアウトメニュー。写真はコース20,000円(2名さま分)。名物「スパゲティ バジリコ」単品は2,700円。
通販サイトで倍返しサービスを始めたのはおかきの専門店「赤坂柿山」。営業自粛で在庫過多の商品を少しでも食べていただきたいという思いで始めたものです。

テイクアウトがうれしいのは、普段は予約が取れない名店の味が楽しめることです。先の豪華弁当を作ったのは、一年以上予約が取れないことで有名な五反田「食堂とだか」。営業自粛をするかわりに看板メニューが入った弁当販売(個数限定)を開始したのですが、予約をキャンセルせざるを得なかったお客様向けに弁当の中でコースが楽しめる特別な豪華弁当を始めました。誰もが頼めるわけではありませんが、こういう楽しみはうれしいですね。

予約開始日に100回以上電話してもつながらないといわれる目黒の焼鳥「鳥しき」も、いまなら誰でも弁当のテイクアウトができます。といっても毎日午前11時から受付開始、店の予約よりはまだ容易ですが、争奪戦なのは一緒。弟子筋の恵比寿「鍈輝」や目黒「鳥かど」でも弁当をやっていますが、こちらもかなりの競争です。なお、焼鳥屋さんのテイクアウト情報はFacebook公開グループ「#コロナ焼鳥サポート~トリタツ弁当で応援しよう~」にくわしいので、ぜひご覧ください。
焼き鳥の名店「鳥しき」の弁当2,800円。最近パワーアップして油淋鶏も入っている。
同じように通常は入れない店が楽しめるのは紀尾井町「福田家」も一緒。本来は紹介制の料亭ですが、昼はバラちらし(3,240円)とお弁当(5,400円)、夜はお惣菜盛り合わせ(10,800円)とバラちらしが予約注文で食べられます。

また、ミシュラン三つ星の嵐山吉兆の系列「HANA吉兆」では花山椒鍋の宅配が出来ます。一年で1~2週間しか味わえない香り豊かな花山椒に朝掘りの筍を合わせ、鶏肉と一緒なら16,200円、近江牛なら21,600円です(いずれも2人前)。

まだまだたくさん魅力的なテイクアウトはありますが、ひとつひとつご紹介できないのが残念。食べログやレッティもテイクアウト紹介ページを作っていますが、一番動きが早かったのはFacebookページの「#コロナフードアクション コロナに負けるな!!飲食店応援ページ」だと思います。こちらはお店自身が投稿しているだけにとてもリアルなので、ぜひご参照ください。
 
一方、変わらずに営業している店もあります。たとえば日本橋茅場町「不二楼」を経営する「和僑ホールディングス」社長の高取宗茂さんはFacebookにこう書きます。

<我々の業界にとって、このコロナに関してのポイントはたった2つ。本来我々にとってなぜこの環境が逆風かというと、問題の本質は我々の業界の特性が「クラスタ感染リスク」と思い切りバッティングしているところにあるだけで、この「三密対策」と「衛生管理」が逆風の飲食店戦略のキモなわけよ。(中略)
言っておくけど営業する飲食店が悪いわけじゃないからな。お前たちは必死にやってるわけで、それを人命軽視の輩のような負い目を感じる必要など1ミクロンもない>

とにかく「三密」と「衛生管理」をしっかりし、外にもその旨を表明していれば、恐れることはないと彼はいいます。10日の都知事の記者会見についても、
<これで国と東京都は俺たちに免罪符を与えた事になる。要は「それ」以外は何でもやれということだ。(中略)いちいち心を折るな>
と業界人にエールを送っています。

いま飲食店が大変な状況にあるのは、どこも一緒。すべての店が個々に判断を迫られています。私の知っている繁盛店は、従業員にとっては会社都合の失業保険をもらうほうが金額的に得だという冷静な計算から、従業員を解雇し、店は休業しました。再開の際には再雇用する約束ですが、「再開できるかわからないよね」と笑っていました。

テイクアウトやデリバリーで頑張っている店も、知恵を絞らなければ食材が残ります。だからこそ、みんな悩みながらポジティブに進んでいます。営業を続ける店も、感染源にならないように最大の注意を払っています。
私も慎重に考えながら、飲食店を応援したいと思います。
 

●柏原光太郎

1963年東京生まれ。(株)文藝春秋でウェブ事業、宣伝部門を担当する傍ら、十数年前から食の魅力にはまる。食べるだけでなく、作る楽しみを普及させようと男性が積極的に料理をするコミュニティとして、「台所男子の会」「軽井沢男子美食倶楽部」「日本ガストロノミー協会」を立ち上げる。
インスタグラム:kashiwabara_kotaro

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        コロナを逆手に取れるか? 今だから味わえる人気飲食店のアレコレ | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト