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2022.11.13

【第19回】たいめいけん(日本橋)

東京のスタンダード版ラーメンは洋食屋にあった!

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

山本益博 LEON.JP たいめいけん ラーメン革命!
▲ 日本橋「たいめいけん」のラーメン。
10月15日の朝日新聞土曜版「be」に「ラーメンは好きですか?」という読者アンケートが掲載された。「国民食ともいえるラーメン。そこにあえて挑戦状を突きつけるかのように、今回のアンケートを実施しました」とある。

「ラーメンは好きですか?」の問いに「はい」が89%、「いいえ」が11%で、「ラーメン好き」の回答からは「匂いはもちろんのこと、映像を見ただけでも瞬時に食べたくなる。私が好きなのは、オーソドックスなネギ、チャーシュー、メンマのラーメン。最近はいろいろなトッピングやスタイルが登場しているけど、誰もが思い浮かべる絵にかいたようなラーメンが一番。あー食べたい」(岡山、48歳女性)。
「ラーメン嫌い派」からは「並んでまで食べたいのが不思議でしかたない。TVに出てくる材料や製法にこだわりが強い店主をみると、言い方は悪いが、たかがラーメンをそこまで追究したくなるものなのかなと思う」(東京、53歳女性)。

「ラーメンが好き」の「その理由は?」では「だしの利いたスープ」が圧倒的で、「嫌い」な「理由は?」は「脂っこすぎる」「塩分が多い」が多数を占めた。アンケートに答えた方たちの年齢層が高いことが反映している結果だが、みなさん「しょうゆ」味が好みで「こってりよりあっさり」系を望まれているとのことだった。
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誰もが思い浮かべる絵にかいたようなラーメンとは

山本益博 LEON.JP たいめいけん ラーメン革命!
回答にあった「オーソドックスなネギ、チャーシュー、メンマのラーメン。最近はいろいろなトッピングやスタイルが登場しているけど、誰もが思い浮かべる絵にかいたようなラーメン」を読んで、私がすぐに思い浮かべたのは、東京・日本橋「たいめいけん」のラーメンである。
ご存知のように「たいめいけん」はれっきとした洋食屋である。初めて出かけたのは、かれこれ50年ほど前、店は今の室町の場所と違い、神田川対岸にある大和証券の向かいにあった。店内の壁には、凧作りの名人橋本禎造さんが制作した干支の凧がぐるりと飾られてあった。のちにご主人の茂出木心護さんに伺うと、大の凧好きで、パリまで出かけた際、凱旋門で凧を揚げてきたとおっしゃっていた。今でも室町の新店舗の並びに「凧の博物館」がある。
その後、大和証券向かいにあった店を、そのまま平行移動させ店をビルにした。1階は食堂、2階はレストランの趣で、その上の階を大広間にし、先代の林家正蔵(のちの彦六)や先代の金原亭馬生の落語会を開いたりしていた。

私は出かけるたびに1階で食べていたのだが、茂出木さんに見つかると、2階へ案内され、そのつど四方山話をしてくださった。この時、必ず飲まれるのが小瓶のビールなのだが、冷えたのは美味くないと、いつも常温のビールをグイとやってらした。
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映画『タンポポ』に出てくる「タンポポオムライス」も「たいめいけん」製

山本益博 LEON.JP たいめいけん ラーメン革命!
今でも「たいめいけん」では、ボルシチのスープとコールスローのサラダが50円だが、これは初代の茂出木心護さんの遺言である。

そして、また茂出木さんは大のラーメン好きでもあった。ビルにした店の横には「ラーメンコーナー」があって、店に入らずとも、立ち喰いで食べられたのだった。

このラーメンが醤油味の澄んだスープでいただく、スタンダード版の東京ラーメンなのである。何が懐かしいかと言って、チャーシューに食紅を使い、シンプルながら彩りをよくしてある点だ。
山本益博 LEON.JP たいめいけん ラーメン革命!
余談だが、「たいめいけん」と「ラーメン」がつながって、伊丹十三監督の『タンポポ』の中に出てくる「タンポポオムライス」は伊丹監督の発案で「たいめいけん」で作られたものである。いまでも店のメニューに載っている。ケチャップ味のチキンライスのうえにオムレツが載っていて、それをナイフでふたつに割ってゆくと、トロトロのオムレツがライスにかぶさってオムライスになる。

私は、昨年オープンしたての室町「たいめいけん」でラーメンをいただいた時、50年前の味を思い出していた。この変わらぬ味こそ、老舗の洋食屋の東京ラーメンの味である。
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山本益博 LEON.JP たいめいけん ラーメン革命!

たいめいけん

住所/東京都中央区日本橋室町1-8-6
営業時間/11:00~21:00(日・祝~20:30)
定休日/月曜
TEL/03-3271-2463
HP/たいめいけん (taimeiken.co.jp)

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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