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2022.10.23

【第18回】旅ゆけば、ラーメン北陸編

北陸に行ったらぜひ食べておきたいラーメン

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!
北陸新幹線が開通するまで、金沢へ出かけるには羽田から飛行機で小松まで飛び、小松から金沢まで電車に乗らなければならなかった。

よほどのことがない限り、小松の空港は閉鎖にならないが、例えば冬の大雪の時は時々飛行機が欠航になった。そんな時、東京へ帰るためには、金沢から列車に乗って北へ向かい、直江津、長岡経由で戻らなくてはならなかった。今は、東京からわずか2時間半、乗り換えなしで金沢に着いてしまう。

今回は昨年から今年にかけて出かけた北陸の旅を一筆書きのようにコースを作り、燕三条-長岡-金沢-氷見のラーメン紀行。

燕三条「杭州飯店」で全国に知られた背脂ラーメンを

昨年まで三条市に「イル・リポーゾ」というイタリア料理店があった。私のお気に入りの一軒で、東京から燕三条まで新幹線に乗り三条の卓越したイタリア料理の昼ご飯を楽しんだ。昨年冬、そこから真っすぐ東京へ引き返すのはもったいないので、夕方の店の開けはなに「杭州飯店」へ出かけた。

ここに全国に知られた背脂ラーメンがある。背脂の甘み、うま味が丼全体を覆う。スープのボリュームもある。若者が気に入るラーメンではなかろうか。壁には、どなたかに誘われてきたのだろう、私の友人林真理子さんの色紙が飾ってあった。
燕三条 杭州飯店 中華そば
▲ 燕三条「杭州飯店」の中華そば
新潟県燕市西燕 杭州飯店

杭州飯店

住所/新潟県燕市西燕49-4
営業時間/11:00~14:30/17:00~19:50 (L.O.)、土・日・祝11:00~19:50 (L.O.)
定休日/月曜
TEL/0256-64-3770

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長岡「麺の風 祥気」で端麗なスープの「塩そば」を

長岡のラーメンは「生姜醤油ラーメン」で知られ、「青島食堂」がその元祖という。今回は、1軒のみしか訪ねる時間がなく、長岡に店を持つ三条市の友人が駅まで迎えにきてくれ「麺の風 祥気」までクルマを走らせてくれた。店名の大きな看板が目を引く。席にはすぐに座れ、「塩そば」を注文。塩味がやや残るものの、端麗なスープが印象的なラーメンだった。クルマを運転してくれた友人が言う。「やっぱり『青島食堂』を食べてもらわないと、長岡のラーメンを食べたことにはなりません」
長岡 麺の風 祥気 塩そば
▲ 長岡「麺の風 祥気」の塩そば
その「青島食堂」、東京の秋葉原近く、神田佐久間町に支店がある。後日、そこへ出かけてみると、長岡同様、30人ほどの行列ができていた。40分並んで入店。「青島チャーシュー」というチャーシューメンを食べた。「生姜醤油」のイメージを持ってまずスープを飲むと、生姜も醤油味もどちらも突き出たところがない。まあるい柔らかな、それでいて滋味深いスープなのだ。飲みすすむうちに心に染みてくる。

麺は細麺、チャーシューも味はしっかりするが、くどくない。青味のほうれん草と紅白のナルトが往年のラーメンのイメージを装うが、ノスタルジックな醤油味ではなく、改革派の醤油ラーメンである。いつか長岡の本店に出かけなくてはなるまい。

麺を茹で上げるのは昔ながらの網手の笊による手加減、スープは目分量。それでいて、バランスが見事なほど狂いがない。 
麺の風 祥気(めんのかぜ・しょうき)

麺の風 祥気(めんのかぜ・しょうき)

住所/新潟県長岡市寺島町729
営業時間/火~金11:00〜15:30、17:00〜20:30
土・日・祝11:00〜20:00
定休日/月曜
TEL/0258-29-6232
Facebook/麺の風 祥気

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金沢「麵屋大河」でいかすみ入り黒味噌ラーメンを

さて、金沢だが、かなり前、評判の自然派ラーメン「神楽」で食べた。なんとも後味の清々しいラーメンだったことを覚えている。今回はその対極にありそうな味噌ラーメンの「麵屋大河」を訪れた。鰻の寝床式の長いカウンター席の続く店で、味噌ラーメンに味噌・黒・赤と3種ある。「黒」はいかすみ入りの味噌ラーメン。もしや「いかすみ」の匂いがスープを壊していたらと躊躇したが、飲んでみると杞憂に終わった。北陸ならではの一杯である。
金沢 麵屋大河 いかすみ入り黒味噌ラーメン
▲ 金沢「麵屋大河」のいかすみ入り黒味噌ラーメン

麵屋大河

住所/石川県金沢市堀川町6-3
営業時間/11:30~15:00、17:30~21:00
定休日/月曜
TEL/076-260-7737
HP/麺屋大河 | 金沢市の味噌ラーメン

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氷見「貪瞋痴」で洗練されたスープの「白醤油ラーメン」を

最後は、氷見。氷見といえば、名物は寒ぶりとうどん。ところが、「ミシュラン」にまで載るラーメン屋が一軒あるのである。その名を「貪瞋痴(とんじんち)」、仏教用語で「人間の三悪」をいう言葉だそうである。金沢からクルマを飛ばして1時間余り、店に近づくと開店前というのに長蛇の列。うわあ、40人は並んでいる。この日ラーメン一杯食べて東京へ帰るだけ、時間はあまりあるので、2時間待ちを覚悟して4人で列に並んだ。
貪瞋痴 とんじんち 行列
ユニークなのは店名ばかりでなく、店頭に「らあめんあります」の表札のような看板がかかっていた。「ラーメン屋」で「らあめんあります」は面白い。

予想通り2時間待って店の方から「お次の方どうぞ」と声がかかった。店に入ったすぐ左手がカウンター越しの厨房でご主人がひとりで働いていた。その主人と目が合った瞬間「山本さん!」と声をかけられた。「以前、富山の仲間と一緒に『次郎』へ連れて行ったもらった者です」。なんという出会い!
氷見 貪瞋痴 白醤油ラーメン
▲ 氷見「貪瞋痴」の白醤油ラーメン
案内された奥の部屋のテーブルで「白醤油ラーメン」を食べた。スープが比類ないほど洗練された滋味あふれる美味しさ。かつてホテルの料理長をしていた仲間が注文した「氷見産煮干しラーメン」もひと口飲んで「うまい」と静かに声を漏らすほど素晴らしいスープのようだった。
氷見 貪瞋痴 氷見産 煮干しラーメン
▲ 氷見「貪瞋痴」の氷見産煮干しラーメン
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部屋の棚にはなんとシャンパンのドン・ペリニョンの空きビンがずらりと並んでいた。帰りがけ、ご主人の紅谷さんと記念撮影した折に伺えば、夜は料理屋なのだそうだ。きっと、その時の〆のラーメンが人気を呼び、昼は「らあめんあります」の専門店になったのだろう。

「旅ゆけば~」いろんな出会いがあるものだ。
貪瞋痴 とんじんち

貪瞋痴(とんじんち)

住所/富山県氷見市朝日本町1-30
営業時間/11:30~14:00
定休日/月曜
TEL/0766-72-0104
HP/食・麺・呑・笑・貪瞋癡(とんじんち)

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

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