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2019.11.13

話題の新オープン「貴族と平民」で「とんかつはご馳走?」と自問する

名店「もんじゃさとう」でもんじゃ界に旋風を巻き起こした佐藤幸二氏がオープンさせたのは「カツレツ 貴族と平民」。この不思議な店名が意味することとは?

CREDIT :

文/秋山 都  写真/吉澤健太

「鮨、うなぎ、ステーキはご馳走である」。これはきっと、みんなの共通認識。では「とんかつ」はどうだろう? わたしが学生だった30年前、とんかつは定食の“松”くらいの感覚だった。早稲田にはチョコレート入りの“チョコとん”が名物のとんかつ屋があったけれど、あれはたしか1000円もしなかったのでは? 実際“チョコとん”はおいしくなかったらしいし、オーダーしている人を見たこともなかったけれど、その店は学生たちにとても愛されていた。とんかつがさほど特別な料理じゃなかった時代の話。

当時も目黒の「とんき」や御徒町の「ぽん多本家」など名店は数多あったし、そんなお店は高価だったのかもしれない。でも、とんかつが劇的にご馳走化したのは、わたしの記憶では当時赤坂にあった「フリッツ」がきっかけだった。洗練された洋食で知られる「旬香亭」斎藤元志郎シェフによる揚げ物専門店だった「フリッツ」のとんかつは、母が家で長い菜箸を使ってシャアシャア揚げるそれとはひと味もふた味も違う、言うなればワインが飲みたくなるような味わいだった。

そしていま、とんかつ。選り抜いた豚肉を、中までしっとりとやわらかくロゼに仕上げるスタイルが流行している。わたしの好みはあまり生っぽくないオールドスタイルのとんかつなのだけど、それは置いておいても、とにかくとんかつはグルメ化し、ご馳走化しているように思う。たとえば某人気店のロースかつ定食は3000円超。おいしいし、キャベツはおかわりできるし、ごはんや味噌汁も吟味されているから満足度は高い。

でも、ときに、もう少し気楽なとんかつが食べたい。カジュアルな、目黒の「トラットリア ダル・ビルバンテ・ジョコンド」で出しているランチのコットレッタのような、薄くて、上にルッコラのサラダをのっけるから、始めはカリっとしていた衣も次第にビショつくような、そんなのもいい。そうか、とんかつと言うからグルメっぽいけど、もしかして私が食べたいのはコットレッタ的な、つまり「カツレツ」なのかも⁉
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「ぼくはカツカレーに乗っているような、うっすいカツが作りたくて。衣がソースのなかで泳いでいるような。イメージはちょっとシュニッツェル(ドイツやオーストリアのカツレツ)みたいな」と語るのは佐藤幸二さん。「納豆ゴルゴンゾーラ」や「発酵羊挽肉」などヘンタイ的探究心から生まれるもんじゃ焼きで、もんじゃ界を震撼させた「もんじゃさとう」の店主だ。

このほど、その佐藤さんが、「もんじゃさとう」の3軒隣りにカツレツの専門店をオープンさせた。その名も「貴族と平民」。そのココロは?
レースがかかるドアがレトロでいい感じ。
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「貧乏と金持ちというと性格悪そうに聞こえてしまうので、中世の呼び名に頼りました。“貴族”は筋切りして叩いて柔らかくしたイベリコ豚のロースを使用。“平民”は薄切りにした白豚のロース。平民だってまあまあ美味しい(笑)。みなさんには、平民カツを食べながら(俺は、このくらいの味でも満足だぜ。ふふふ)とおいしく食べてもらえればコンセプト通りなんですけどね」と語る佐藤さん。

つまり、貴族はスペイン産のイベリコ豚ロース(1枚550円)、平民はドイツ産白豚ロース(1枚220円)と肉質と価格が異なり、そのほかはすべて共通メニューというわかりやすいお店なのだった。
こちらは平民セット(880円)。ブドウ色素を炊きこんだパープルライスに卓上のヨーグルトソースと紅ショウガチリソースを混ぜて食べるのが美味。
このカツレツ、ソースをじゃぶじゃぶかけて食べるのが正式ないただき方でして、その作り方もユニーク。
薄く叩いた肉をラードで揚げるところは普通のカツレツ。
揚げたてをソースにドボン。
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揚げたてのカツレツを、鳥ガラベースにこんぶ出汁、スパイス、ハーブ、ニンニクなどで調味したソースにドボンとつけ、そのカツレツに、さらに卓上でレモンバターソースをジャボジャボ。
そしてレモンをギュッ。
まだ終わらない。さらに卓上に置かれた7つの調味料をお好みでプラスして、サラダをのっけたり、のっけなかったりしながら食べるという、なんとも融通無碍、自由自在なカツレツなのであった。わたしの好みは「黒酢ブラックペッパー」と「ヨーグルトソース」「アイオリ」をトマトサラダと混ぜつつ乗せるという、いま自分がどこの国にいるのかちょっとわからなくなる、なんともエトランゼな味わい。
こんな感じでいろいろなソースをちょっとずつ乗せて、混ぜながら楽しむ。
この平民カツがセットで880円(貴族セットは1210円)、カツ一枚追加も平民なら220円というのも気楽でうれしい。というので、何枚食べられるか挑戦したく頼んでみたのがこちら。
平民カツ5枚盛り。
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いくらソースで味に変化をつけられるとはいえ、5枚は多かったか。いや、カメラの吉澤氏とペロリいただいたけれども。たくさんオーダーしてはしゃいでしまうのも、わたしが平民ゆえの浅はかさということでお許しいただきたい。
カリフラワーライス200円。
でもここにはたくさん揚げ物を食べても大丈夫な秘策が用意されているのであった。なんと、米の代わりにカリフラワーをみじん切りにしたカリフラワーライスが用意されているから、糖質制限のある人でも大丈夫! (もちろん、衣は糖質なので、そこはご自分で判断ください)
店の奥にはキッズコーナーを完備。
さらにお店の奥には、こどもたちを自由に遊ばせておけるキッズコーナーを完備! 代々木上原マダムおそるべし、こんな隠れ家でこどもを見守りつつ、昼間から平民カツをむさぼっているのであろうか。いや、上原なら貴族カツか。いつかはわたしも貴族カツと思いながら、次も平民カツを食べちゃうのだろうなぁ。佐藤さんの術中にまんまとハマっている。

◆ カツレツの店 貴族と平民

住所/東京都渋谷区富ヶ谷1-9-20 リンデン代々木公園 1F
予約・問い合わせ/03-6407-1791
営業時間/11:00~20:30
定休/年内不定休

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