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2019.04.12

週休4日? 週末のみオープンする鮨屋の謎

「週末会いにいけるアイドル」ではなく、「週末にしか食べにいけない鮨屋」が「谷中 松寿司」。なぜ週末だけ? その謎と美味しさの秘密を解明します。

CREDIT :

文/秋山 都 写真/吉澤健太

毎回、旬のレストランや話題の新店をご紹介していく連載「美食のネタ帖」。「なんか面白い店ないかなぁ」「最近どこか行った?」と聞かれることが多いLEON.JP食いしん坊担当がガチでおすすめなお店やネタを紹介いたします。

その、第15回のお題は週末限定オープンのお鮨やさん。思えば、この連載を始めるとき下記の3つを条件にしていたのでした。

第一条:高くて美味いは当たり前。たまには贅沢できる適度な価格帯であるべし。

第二条:予約がとれない名店は高嶺の花。会員制や紹介制ではなく、実際に電話が通じるお店であるべし。

第三条:大通りの洒落たハコばかりではなく、路地裏のひっそりとした名店を探すべし。縄のれんや赤ちょうちんを嫌う女子はこちらから願い下げるべし。


のっけから謝っておきます。ごめんなさい。
今回ご紹介する「谷中 松寿司」は現在、夜は6月まで満席。こんなことでは第二条に抵触しかねないのですが、そこを押してご紹介したい魅力にあふれたお鮨やさんなのです。

なぜ「谷中 松寿司」が数か月先まで一杯か……と申しますと、実はこちら金・土・日曜しかオープンしていない、“週末限定”なお鮨やさんなのでありました。
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週末限定オープンの「谷中 松寿司」

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「谷中 松寿司」はカウンター8席とテーブル2卓。
さて、金・土・日曜しかオープンしていないとは、いかがなことか。お相撲さんはかつて「1年を三日で暮らすいい男」と言われましたが、その力士ですら今は年に6回の場所があり、ほかに地方巡業に回ることも考えれば決してラクな職業とは言えません。そこへ、週に3日しか開いていないお鮨やさんとは……週休4日とはうらやましいですね?
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大将の野本やすゆきさん。鮨屋らしくないノリの気さくなお兄さんです。 
「いや、ぼく月曜から木曜まで遊んでるわけじゃなくて(笑)、別の仕事をしているんです」

聞けばこの野本やすゆきさんは、彼で3代目になるお鮨やさんの跡取り息子。初代である祖父は、戦前に千駄木駅前で鮨の屋台を出しており、戦後になって現在の谷中に店を開いた「谷中 松寿司」を継いだのは2代目となったお父さん。寺町である谷中で、近隣の人々やお墓参りに訪れる人などに愛されるお鮨やさんとして、家業を盛り立てていたのだそうです。

このころまだ若かった野本さん(今も若いけど)は「鮨屋なんて継ぎたくない」と思っており、「でも料理は好き」だったことから、料理研究家の道へ進んでいたのでした。そこへきてお父さんが60代の若さで急逝……急遽、鮨屋を継ぐことになった野本さんですが、順調に運んでいた料理研究家を辞めるわけにもいかず、月~木曜は料理研究家、金~日曜は鮨屋、という兼業ステイタスが誕生しました。

つまりパートタイム鮨屋でしょ? 味はどうなの?と懐疑的なそこのアナタ(かく言う私もそうでした)!
野本さんのお鮨はいたって正統派で、まっとう。席について刺身、焼き物、握り…と続いていく一連は銀座などの高級店となんら変わることなく、そのスムーズな流れに身を任せているだけで心地よく満腹・満足できるのでご安心を。ちなみに申し添えますと、あの日から4年……いまでは野本さん、すっかり鮨屋であることが大好きになったのだそうですよ。

あ、ひとつだけ彼の料理研究家らしい一面が見てとれるのは、このスペシャリテともいえるアジフライでしょうか。
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この日はアジフライ。季節によって魚が変わります。
常連さんがこれだけは何度でも食べたいというアジフライは、タルタルソースにガリとたくあんを刻み込んだ「鮨屋のアジフライ」。古典的な鮨屋で魚のフライが出てくることはめったにありませんので、これだけは料理研究家と鮨屋の大将としての、それぞれの野本さんのコラボ作品だといえるでしょう。
そのほか、お鮨はご覧のとおり。どれも丁寧に仕事され、塩をチョンと乗せたり、煮切り、ツメなどをさっと一刷毛塗られた“東京前”な握りの数々です。ほどよい赤酢でキリリと酸っぱい酢飯もまた私好みなんですよね。
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お土産の稲荷ずしは6個入り900円~。
そして忘れちゃいけないのが、このおみやげ用稲荷ずし。甘辛く煮た油揚げに、キリリと酸っぱい酢飯、そしてシャクシャクした食感が楽しいレンコンが入ったこのお稲荷さんは「谷中 松寿司」に行った翌朝のお楽しみ。夏以外は冷蔵庫に入れずに柔らかいままいただくのが好みです(夏は野菜室などに入れてください)。
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さて、ここまで「谷中 松寿司」の魅力を口をすっぱくして(鮨だけに)お伝えしてきましたが、最後に大切なことについて触れないと。それは、価格。冒頭で、この連載は「たまには贅沢できる適度な価格帯であるべし」と掲げています。
それゆえに気になるところでしょ? さて、お値段は‥‥‥

「夜6500円、昼4500円いただいています」(野本さん)

私はいままで数度訪れましたが、いずれもかなり飲んで、ときにお稲荷さんを持ち帰って、お会計は1万円と千円札が数枚(ひとり分です)……お料理の質とお酒の量を考えれば、いつも大変リーズナブルだと納得しています。

思い立ったときにふらりと行ける価格はうれしいのですが、うれしい人が多すぎてなかなか予約が取れないというジレンマ。この原稿を書くことでさらに自分の首を絞めているんでしょうか? これはもう食いしん坊ライターのカルマともいえるでしょう、嗚呼。
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◆ 谷中 松寿司

住所/東京都台東区谷中3-2-7
予約・問い合わせ/03-3821-5087
営業時間/12:00~14:30(L.O.14:00) 18:00~22:30(L.O.21:00)
定休/月~木曜
*東京メトロ「千駄木」駅より徒歩2分
*カード使用不可

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