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2022.02.13

【第1回】「神保町黒須」

トリュフとラーメン。「神保町黒須」、塩蕎麦の現在地とは?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

▲ 「神保町黒須」の塩蕎麦。
フランスでは1月2月は黒トリュフの最盛期、官能的で妖艶な香りが食べる人を魅了する。一昔前までは「キャビア、フォアグラ」と並んで「世界の三大珍味」と呼ばれていたが、最近日本ではお菓子にまで使われ、大衆的嗜好食材にまでなってきている。さらに、近年ラーメンの具材にも使われるようになった。
トリュフの魅力とはなんだろうか?  トリュフには白と黒があるが、黒のほうが断然、調理の幅が広い。秋口から採れる白トリュフは、加熱に弱く、熱々のパスタの上に載せると、妖艶な香りが一層引き立つ。それに対して冬の黒トリュフは、生でも火入れをしても、その妖艶な魅力は変わらない。

私は、トリュフの産地に何度も出かけ、豚や犬が土の中からその鼻で掘り出したトリュフをその場でかじってみたことがあるが、採れたてのトリュフは、土とカビの味と東京ガスの匂いがしたのだった。

それが、洗浄され、識別され、選別され、駕籠に入れられて、出荷の番を待つ大型の冷蔵庫の中に入ったところ、トリュフから発するガスが凄くて、眼がシバシバして1分と入っていられなかった。これが、産地からパリまで運ばれるまでに、香りが1割減になるとトリュフの帝王と呼ばれたカオールのペベール爺さんから教わった
▲ パリ「ランブロワジー」のトリュフのパイ包み焼き。
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ペベールさんのお宅に招かれていただいたトリュフのオムレツ、パリ「ランブロワジー」のフォアグラを分厚いトリュフでサンドし、パイ包み焼きにした一皿、パリ「ジャマン」のベーコンと玉ねぎをタルトの上に載せ、その上にトリュフの薄片を美しく並べたジョエル・ロブションのスペシャリテは、生涯忘れることができない。日本だったら、このところ毎年いただいている東京・笹塚「オーベルジーヌ」の分厚いトリュフを添えた百合根スープにとどめを刺す。
▲ 笹塚「オーベルジーヌ」のトリュフのスープ。
トリュフはフォアグラ、ベーコン、バター、牛乳、クリームなどの油脂、卵、じゃがいもや百合根など地下茎の野菜、米、小麦の穀類、そして肉なら豚、鶏との相性がとても良い。
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「神保町黒須」の塩蕎麦に添えられたトリュフのピューレ

「神保町黒須」の人気メニューに「塩蕎麦」がある。鶏スープに細麺、豚ロースに穂先メンマと青味の端麗な塩ラーメン。以前は「醤油蕎麦」にトリュフのピューレが添えられていたように記憶しているが、醤油にはトリュフは難しく、現在はこの「塩蕎麦」に少量のトリュフのピューレが添えてある。ただ、一緒に添えられた牡蠣のペーストの強さに負けてしまっているのが惜しい。

ラーメンの食材は小麦の麺、鶏のスープ、豚のチャーシュー、味玉などどれもトリュフと相性がいいものが揃っている。

「神保町黒須」

住所/東京都千代田区神田神保町 3-1-19
営業時間/11:00~15:00
定休日/日・祝日
TEL/050-3573-2295
HP/神保町 黒須|純粋主義的料理 - (jinbochoukurosu.net)
※写真はご主人の黒須太一さん

ラーメンにトリュフを使ったのは巣鴨時代の「Japanese Noodle Soba蔦」がその嚆矢のようだが、沖縄・宮古「紺碧リゾート」の渡真利シェフは、パリの「ランブロワジー」の「トリュフのパイ包焼き」を食べた途端、それまで「宮古そば」と称したかけそばに安易にトリュフを削っていた自分を恥じ、二度としまいと心に誓ったという。

黒須さんには、ぜひとも、トリュフの季節の真っ只中の時期だけでもいいから、トリュフを主役にした名品ラーメンを創作して欲しいと思う。
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※次回は2月27日予定です。

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique


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