2019.01.31

で、ゴアテックスって何がスゴイの?

一昔前、防水性と透湿性を高次元で両立した素材「ゴアテックス ファブリクス」は、アウトドアマンにとってマストでも、一般の人々には縁遠い存在でした。ところが現在では、ファッションブランドが採用することも多く、より身近になっています。では、ゴアテックス ファブリクスとはそもそもどんな素材なのか? 歴史を振り返りつつ、その魅力を検証してみました。

CREDIT :

文/南井正弘 編集/長谷川茂雄

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電子顕微鏡によるゴアテックス ファブリクスの構造写真。この複雑に絡み合った構造が比類なき防水透湿性能を発揮します。

防水性と透湿性を両立した夢の素材

「ゴアテックス ファブリクスってどんな素材?」と聞かれて、正確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。優れた防水性能は有名ですが、意外と認知度が低いのが、比類なき透湿性のこと。

外部からの水をシャットアウトしつつ、内部の水蒸気を排出する構造は衣類内部の蒸れを防止して、長時間の着用でも快適な着心地をキープしてくれます。

そんなゴアテックス ファブリクスが誕生したのは1969年のこと。少し専門的なお話になりますが、ゴア社がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を延伸加工したePTFEフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して製造したのです。

ePTFEには、水滴の2万分の1、水蒸気分子の700倍の大きさの孔が、1㎠あたり14億個以上開いています。それにより、高い防水性をキープしつつ透湿性を確保することに成功しました。
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ゴアテックス ファブリクスを生み出したW. L. Gore & Associatesを創業したのは、ビル・ゴア(左)とヴィーヴ・ゴア。1958年、自宅の地下室でその歴史をスタートさせました。
そんな素材が最初に製品に使用されたのは、1976年に発売されたアウトドア用のテントでした。その後レインウェアやアウトドアジャケットにも採用され、1979年にデビューしたダナーの“ダナーライト”が、世界初のゴアテックス ファブリクス採用シューズとなりました。
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イラストにあるようにゴアテックス ファブリクスは外部からの水は侵入させないのに対し、内部の水蒸気は排出するので、衣類内の環境を快適に保つことができるのです。
さらに、翌1980年には、ブルックスのハガーGTが、初めてランニングシューズのアッパーにゴアテックス ファブリクスを使用。モデル名にあるGTは、GORE TEXを意味します。

自分が初めてゴアテックス ファブリクスという素材を知ったのは、1981年のこと。雑誌「POPEYE」にて、ケルティという現在もバックパックなどがポピュラーなブランドのゴアテックス ファブリクスを使用したマウンテンパーカが紹介されており、防水性と透湿性を両立する素材が存在することを知ったのです。

当時、自転車通学の際にゴム引きの雨合羽を使用して、夏季などは蒸し暑さに悩まされていたので「水を通さないのに水蒸気は通す」というゴアテックス ファブリクスの特徴に興味津々だったものの、月のお小遣いが5千円の高校生が数万円もするアウターを買うことは夢のまた夢でした。

その後、ゴアテックス ファブリクスを採用するブランドは着実に増え、その比類なき防水透湿性能を武器にアウトドアシーンでは確固たるポジションを築くこととなりました。
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ゴアテックス メンブレンと呼ばれるこのテクノロジーの基幹となるePTFEの膜と撥水性に優れたシェルが組み合わされることによって、抜群の防水透湿性能を発揮します。
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もはやあらゆるシーンでゴアテックス製品は不可欠!?

それからも度々ゴアテックス ファブリクスは、雑誌やスポーツ用品売り場で見かけましたが、「ゴアテックス=アウトドアシーン」というイメージが強く、しばらくはこの素材のことは忘れていました。

実際に自分自身がゴアテックス ファブリクスを使用した製品を購入したのは、社会人になってからです。1998年にプラダのスポーツラインとして人気を集めていたプラダスポーツ(現リネアロッソ)からリリースされていたゴアテックス ファブリクスを使用したアウターコートを買ったのです。

優れた防水透湿性能に加えて軽量なこのジャケットは、雨の日も強い風の日も快適な着心地をキープしてくれました。

この頃になるとアウトドアファッションがトレンドとなったこともあり、ゴアテックス ファブリクスを街で着る人も増えましたし、ゴアテックスのバリエーションも増えました。

ゴアテックス製品のアウターコートの次に自分がゴア社の素材を使用した製品を買ったのは、ゴア® ウインドストッパー® プロダクトを使用した同じくプラダスポーツのフリースパンツです。

ゴア® ウインドストッパー® プロダクトは、優れた防風性と透湿性を兼ね備えた素材で、冬のアクティビティに最適で、このパンツも風の強い寒い日に履くことが多かったです。

自分がゴアテックス製品を初めて身に付けてから20年が経過しましたが、この防水透湿性に優れたファブリックを使用した製品は、アウトドアブランドのみならず様々なブランドからリリースされており、一昔前と比較すると私たちにとって、とても親しみのある存在となっています。

最近では雨天の際に長距離を歩かなければならないときは360°で高い防水透湿性を発揮するゴアテックス サラウンド® プロダクトテクノロジーを採用したエコーのCOOL2.0というシューズを履くことが多いですし、激しい有酸素運動に対応する比類なき透湿性能、優れた防水性と防風性に、快適な肌触りもプラスしたゴアテックス アクティブ プロダクトを使用した、アークテリクスのノーバンSLフーディは、悪天候時でも快適に走ることを可能にしてくれました。
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シューズの分野でもゴアテックス製品は活躍。エコーのCOOL2.0に採用されたゴアテックス サラウンド® プロダクトテクノロジー
は、360度の防水透湿性を確保しました。
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ゴアテックス アクティブ プロダクトは、激しい有酸素運動に対応する比類なき透湿性能、優れた防水性と防風性に、快適な肌触りをプラス。アークテリクスのノーバン SL フーディなどに採用されています。
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防水性に縛られない新しいゴアテックスも誕生!

耐久的な防水・防風・透湿性により、アウトドアシーン、スポーツシーン、そしてライフスタイルシーンにおいて確固たるポジションを築くことに成功したゴアテックス ファブリクスですが、2018年、新たなコンセプトのニューブランドが登場しました。

それがGORE-TEX INFINIUM™ PRODUCTS (ゴアテックス インフィニアム™ プロダクト)
です。この新たなブランドは、従来のゴアテックスと共存するかたちで、防水性に縛られない快適性を追求し、コンフォート・サイエンス(気候条件の変化に対して人体がどのように反応するか)に関連する幅広い知識を活用し、様々な機能の向上を実現しながらも、必ずしも防水性を必要としないシーンへのテクノロジーとして開発されました。

ゴアテックス インフィニアム™ プロダクトは、日常のライフスタイルシーンにおいて、快適かつ安全に野外で過ごす時間を楽しみたいというユーザーの増加に対応したブランドですから、今後この分野の市場規模は拡大することが予想されています。
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新たに誕生したゴアテックス インフィニアム™ プロダクトは、防水性に縛られない快適性を追求した新ブランドで、写真のような白いブランドタグが付けられます。

● 南井正弘(みない まさひろ)

フリーライター、ランナーズパルス編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。「フイナム」「ランニングスタイル」「スポーツナビDo」「SHOES MASTER」「デジモノステーション」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナーで、ランニングギアマガジンとウェブサイトの「ランナーズパルス」の編集長も務める。ベストタイムはフルマラソンが3時間56分09秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。

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