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2021.06.28

現地からお届けします! 海治郎のパリコレ&ピッティ どす恋(こい)日記【4】

【パリコレ速報】テキサスの風を感じさせるディオール×トラヴィス・スコット

2022年春夏シーズンの「パリ・メンズ・ファッションウィーク」の“今”をファッションジャーナリストの増田海治郎さんが日記形式でお届け。4回目はトラヴィス・スコットとの衝撃なコラボレーションを披露したディオールについてです。

CREDIT :

文/増田海治郎

▲ @Brett_Lloyd 
6月9日、フランス政府は観光客の受け入れを表明し、特段の理由がなくてもフランスに入国できるようになりました。すぐさま思い立ってパリへ飛んだのは、ファッションジャーナリストの増田海治郎さん。2022年春夏シーズンのパリ・メンズ・ファッションウィークを中心に、フランスの今をリポートしていただきます。4回目はトラヴィス・スコットとの衝撃なコラボレーションを披露したディオール。
ディオールの創設者、クリスチャン・ディオールは1947年、アメリカの地を訪れています。その時の目的地のひとつが、ウエスタン文化が色濃く残るテキサス州でした。メゾンの歴史を紐解きながら、メンズ アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズが着想したのは、この時の旅から始まるディオールとアメリカの繋がり。

そして過去と今を繋ぐ存在として、以前から友人関係にあったアメリカのラッパー、トラヴィス・スコットに白羽の矢を立てます。ラッパー界きっての服好きであることは以前から知られていますが、彼は同時にテキサス州出身。こうして点が線となり、今回のコラボレーションは実現したのです。

会場はナポレオンの墓もあるアンヴァリッド廃兵院の前の庭園。ディオールは通常、ショーのための空間をゼロから作り上げます。今回もそれは同じで、この庭園の場所に仮設というにはあまりに立派なショーのための空間(Hotel National des Invalides)を作り上げました。
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▲ 自身で手掛けたロゴの前でポーズを取るトラヴィス・スコット。
30分前に会場前に到着すると、いつもと同様にセレブ待ちの観客、報道陣でごった返していました。黒塗りのVIPカーが会場前に到着するたびに、人が波のように押し寄せ、それが目当てのセレブリティだと分かると強烈な歓声が上がります。

会場に入ると左横がVIPのフォトブースで、流れ作業のように次々と世界的な俳優、芸能人、文化人らをブースに案内し、手際良く各メディアのフォトグラファーが撮影します。メイクとヘアを整えるスタッフもいて、これまた流れ作業のように瞬間的に公の場の顔に整えるのです。このスムーズな流れは本当に見事でした。
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ショーの内容に目を向けてみましょう。全体的な印象はとても力強く、キムの過去のコレクションの中ではステューシーとコラボをしたフォール 2020 メンズ コレクションと同じくらいストリート色が強いものでした。それはやはり、キムのアメリカのストリートカルチャーに対する造詣の深さと、トラヴィスの意見が色濃く反映されているからだと解釈しました。

まず目に付いたのは、極端にフレアしたパンツのシルエットです。写真で見るとそれほど裾が広がっているように見えないかもしれませんが、会場で横から見ていると相当幅広のベルボトムであることが分かります。リーバイスのジーンズに例えるなら、646というより684並のフレアっぷりです。イタリアのファクトリーブランドがフレアを提案するのは数年後になるかと思いますが、モードの最前線では完全にフレアパンツが主流になっているのです。

これに合わせるのは、タイトなシルエットの立ち襟のジャケットとコート。バブル期の文化人のようなスタンドカラージャケットを提案した昨シーズンに続き、襟を立ててスタンドカラーとして着られるジャケットを提案しています。その多くはパンツも同じ生地で、スーツとして提案されています。
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カラーパレットは乾いた土を連想させるブラウンとベージュ、サボテンのグリーン、サンタフェ風の陽に焼けたピンクとパープルなど。差し色の蛍光グリーンは、毒々しい毒ヘビを連想させます。手書きのイラストのシャツは、アメリカ人アーティストのジョージ・コンドの手によるもの。同じく手書きの新しいディオールのロゴは、トラヴィスが手掛けたものです。

フィナーレでトラヴィスはランウェイの反対側から弾けるように飛び出してきました。そしてキムと熱い抱擁を交わします。その様子は若々しく喜びに満ちていて、ヴァージル・アブローのルイ・ヴィトンでのファーストショーと同様に、トラヴィスにとっても達成感のある素晴らしい瞬間だったのだと思います。今や世界のスーパースターは、ポップスターではなくラッパー。彼らの思考や動向をトップメゾンとて無視できなくなってきている証左だと改めて感じました。

今回のコレクションは、テーラードとてストリート寄りではありますが、着こなすのは比較的難しくない部類のものだと思います。フレアパンツはオヤジさんには無理って話もありますが、渋カジ後期にベルボトムを引き摺って歩いていたのは、他ならぬ30年前のオヤジさんたちです。裾幅18cmのパンツも素敵ですが、両極のフレアも楽しめるようになると着こなしの幅が飛躍的に広がると思いますよ。ちょっと違うテイストを取り入れてみたいと思ったら、発売は半年後になりますが、ぜひディオールのサマー 2022年 コレクションをチェックしてみてください!
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● 増田海治郎

1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、雑誌編集者、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをもカバーする。

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