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2021.06.24

現地からお届けします! 海治郎のパリコレ&ピッティ どす恋(こい)日記【1】

現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」はパリの新名所に?

2022年春夏のファッションの話題を中心に、フランスとイタリアの“今”をファッションジャーナリストの増田海治郎さんが日記形式でお届け。1回目は、安藤忠雄さんが内装を手がけた新しい現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス/ピノー・コレクション」(Bourse de Commerce Pinault Collection)についてです。

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文/増田海治郎

6月9日、フランス政府は観光客の受け入れを表明し、特段の理由がなくてもフランスに入国できるようになりました。すぐさま思い立ってパリへ向かったのは、ファッションジャーナリストの増田海治郎さん。2022年春夏のパリ・メンズ・ファッションウィークとピッティ・ウオモの話題を中心に、フランスとイタリアの今をリポートしていただきます。パリコラム1回目は安藤忠雄さんが内装を手がけた新しい現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス/ピノー・コレクション」(Bourse de Commerce Pinault Collection)について。


2021年5月22日、パリに新しい現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス/ピノー・コレクション」がオープンしました。1767年に建築された商品取引所(21世紀の初頭まで現役だった)を、世界の安藤忠雄さんが改修設計を担当。

ケリング会長兼CEOでフランスきっての大富豪として知られるフランソワ・ピノーさんが私蔵する現代美術館に生まれ変わったのです。いや〜太っ腹ですね。お金持ちたるや、こういう素敵なお金の使い方をしてほしいものです。
▲ 気持ちの良いグリーンと歴史的な建造物に囲まれたレ・アール公園。写真の建物はサン・トゥスタッシュ教会。
この現代美術館はパリ1区の中心にあります。2017年に改装されたレ・アール公園とサン・トゥスタッシュ教会に隣接していて、セットで訪れるとさらに楽しめます。美術館来訪の前後に近辺のレストランでテイクアウトして公園でブランチ&チル! なんてのも最高かと。訪れた日は30℃を超える真夏のような日で、公園では子供たちが気持ち良さそうに水浴びをしていました。

さて、建物の前に到着。予約はしていませんでしたが、建物の横の券売コーナーで14ユーロを払ってスムーズに入ることができました。今後は観光客が一気に戻ってくると思うので、確実に見たい方は予約したほうがスムーズかと。

私はこの建物に思い入れがあります。今世紀初頭に商品取引所としての機能を終えた後、しばしばイベント会場として使われていて、ファッションショーの会場としても使われてきました。とくにポール・スミスさんはこの建物がお気に入りで、何度もショー会場に選んでいます。阿部千登勢さんのサカイも2016年春夏シーズンにこの会場を使用しました。幾度となく私はこの会場の門をくぐって、スペクタルなショーを拝見してきたのです。
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▲ マルシャル・レイスの2012年の作品「Ici Plage, comme ici-bas」。
門をくぐって荷物チェックを終えると、モダンに改装された懐かしい回廊が姿を現しました。最初に出迎えてくれたのは、フランスのマルシャル・レイス(Martial Raysse)の2012年の作品。

まるでコロナ禍の全世界の欲望を予言したかのような、人々がビーチ&パーティーを欲しているような絵です。あぁ、早くマスクなしでビーチに寝転がって、夜は爆音で踊りたいですよね。
▲ メイン会場につながる円形の回廊。安藤忠雄さんの作品とは思えないほど明るい印象を受けませんか?
中央のメイン会場に足を踏み入れました。そこにはスイス出身でアメリカを拠点に活動するウルス・フィッシャーの蝋による作品が展示されています。

ここでふと気付いたのですが、先に説明したようにこの建物の改装は安藤忠雄さんが手がけています。なのに、あの冷たいかんじが皆無なんです。天井がガラスになっていて太陽の陽が差し込むということを差し引いても、私が知る氏の建築としては圧倒的に明るい。そのことにとても驚かされました。
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▲ 電車のシートを象った蝋による作品は、肩の部分に火が灯っていて、常に溶けていく様子を表現しています。
▲ 蝋のルネッサンス彫刻は期間中に大きく崩壊してしまうかもしれません。それを含めての美なのだと思います。
ウルスさんの作品は、中央に展示されたルネッサンスの彫刻を模したものを含め、椅子や人の形を蝋で表現しています。ゆえに展示中に姿を変えていくのは必然で、なかには火が灯っているものもあります。

完璧な形状のものが姿を変えていく儚さや、即興の美を表現しているのでしょうか? ルネッサンス彫刻の一部も落下していたりしますが、それもそのまま展示しているのです。
▲ ベルトラン・ラヴィエさんの手による、シトロエン・ピカソのフェンダーとピカソを結びつけたユニークな作品。
回廊にもさまざまなアーティストの作品が展示されています。どれもとても素敵ですが、なかでも気に入ったのが、こちらのピカソの作品! ブルーがいかにもピカソっぽいなぁと思ったら、なんか違うような気がしてきました。

Picassoのロゴにも既視感があります。種明かしすると、この作品はシトロエン・ピカソのフェンダーそのもの。フランスのベルトラン・ラヴィエ(Bertrand Lavier)さんの作品ですが、ブルーのボーダーシャツを着て改めて見にいきたいほど気に入りました。
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▲ デイヴィッド・ハモンズさんのタイヤが歪んだ自転車は、何か心に訴えかけてくるものがありました。民族楽器の上で眠る猫もしかり。
ギャラリー2は、アフリカ系アメリカ人のデイヴィッド・ハモンズ(DAVID HAMONS)さんの30点の作品が展示されています。ハモンズさんは人種差別で受けた傷を動機に、1970年代から屋外で見つけた廃材などを利用してドローイングや彫刻、インスタレーションを制作してきた作家で、ヨーロッパでまとまった形で紹介されるのは今回が初めてとのことです。

美術は素人なのであまり大層なことは言えませんが、とにかく彼の作品はどれも見逃せないほど素晴らしかった。アフリカン・アメリカンフラッグや歪んだ自転車、民族楽器の上で眠る猫など、深く心に刻まれました。
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▲ 鳩の糞によるヘアスタイルとポップコーンを食べる男。なんか強烈に印象に残りました。
上階にもさまざまなアーティストの絵や写真が展示されています。とくにアフリカ系のアーティストの作品はとても新鮮でした。この日の滞在は2時間ほどで上階の展示はじっくり鑑賞する時間はなかったのですが、できれば半日くらい時間を割いて期間中に再訪したいと思っています。
▲ 地下2階ではサウンド・アートの展示が。休憩にも最適な音楽ホールも併設されています。
地下2階のフロアは、私たちが知る安藤忠雄さんの世界観に近い空間が広がっています。コンクリートの色もグレーが濃く、サウンド・アートの展示もその世界観にとてもあっています。併設された音楽ホールは、ゆったり座れて休憩するのに最適。おそらくこの場所でさまざまな音楽イベントが開催され、きっとファッションショーも開催されることになるのでしょう。その日が来るのを今から楽しみにしています。

会場を出て、近所のジェラート屋さんでアイスをテイクアウェイし、レ・アール公園のベンチに座って初夏の味を堪能しました。この日(6月17日)の時点では飲食店の営業と外出は23時までに制限されていましたが、Covid-19の感染状況が想像以上に改善されてきていることから、6月20日からは一切の制限がなくなることになりました。パリは以前の日常が戻ってきています。夏休みは人の少ないパリでの観光も視野に入れてみてはいかがでしょうか?

■ ブルス・ドゥ・コメルス 開幕展

会期/2021年5月22日〜12月31日
住所/2 Rue de Viarmes, 75001 Paris
電話番号/+33 1 55 04 60 60
HP/https://www.pinaultcollection.com/fr/boursedecommerce
開館時間/11:00〜19:00(金、第1土曜日は〜21:00)
休館日/火
料金/一般 14ユーロ、割引10ユーロ、第1土曜日の17:00~21:00は入場無料

● 増田海治郎

1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、雑誌編集者、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをもカバーする。

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