2017.10.05

素材を知れば、ファッションがわかる!?

一昔前なら、スーツやスリムなデニムは窮屈で少々着にくいのが当たり前だった。ところが今やどんなに身体にフィットしたタイトな洋服も着心地は快適というが当たり前になっている。我々が日常では気づいていないその巨大な変化は、実は素材の革命によるものだ。テクノロジーがオトコの服飾を変えつつある。

CREDIT :

文/川田剛史

時代や流行が変わっても、スーツやパンツは男性の必需品。昔は重みがある生地で縫製されたスーツや、打ち込みのしっかりしたデニムが高品質の証であり、かつそれがスタンダードだった。けれど、”伸びる”素材の誕生により男性の装いは大きく変わった。そんな素材の最新事情を、繊維に詳しいアバハウスインターナショナルブランドディレクターの川城一敏さんに伺った。
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ストレッチ素材は日進月歩で進化中

カシミアやシルクといった、軽くてしなやかな天然素材を使ったメンズウェアは実に快適。高級な素材が快適の条件であることは今も昔も変わらないが、一方で、実は革新的な機能素材の出現により安価に快適性を手に入れられるようになった。そのキーワードとして注目されているのが”伸びる”素材だ。

”伸びる”素材は、文字通り伸縮性がよく、しかも軽くて快適、丸めてもシワになりにくいといった実用性を備え、出張や旅行などに重宝する。その歴史は存外古く、ポリエステル性の伸縮素材は1970年代に”パンタロン”の流行ととも一大ブームとなったこともあった。ただし、当時のものは見るからにカジュアル感が強く、ビジネスやドレスシーンには採用できるものではなかったようだ。

ところが、それもいまや過去のもの。素材の開発や縫製技術の進化により誕生した現代の”伸びる”素材は、生地の風合いは普通のそれとほとんど遜色のない見栄えを実現、お洒落着としてはもちろん、仕事にもドレスにも使える生地が登場している
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有名ブランドも「伸びる」素材を採用

”伸びる”生地が普及した背景について、アバハウスインターナショナルの川城一敏(以下川城)は次のように言う。

「一昔前のファッションといえば、デザイン力やアイコニックなアイテムで差別化を図るのが主流でした。しかし、いまでは技術の進歩により、ほかのブランドよりいかにいち早く新素材を開発できるかのような技術競争になっています。とりわけ”伸びる”素材の競争は著しく、海外の高級ブランドもこぞって採用しているくらいです。というのも”伸びる”素材の動きやすさや快適さ、メンテがラクなど、ほかの素材と比べ多数の利点があるから。ドレススタイルに落とし込めるようになった技術の進歩も大きく、より一層”伸びる”素材の競争が加速しました」

例えばロロ・ピアーナのストームシステム®は外見は極上の天然ファブリックなのに、裏にフィルムを貼ることで完全防水・防風性を実現している。素材の革新性にラグジュアリーブランドが取り組んでいるという代表例と言ってもいい素材だ。

「伸びる」素材が男の服を変えた

川城の説明によれば、現在のストレッチ素材の発展に重要な役割を果たしたのは、東レ・オペロンテックスが販売する「ライクラ®T400™ファイバー」(以下T400™)というポリエステル系複合繊維だそう。
「素材に加え、ストレッチ素材を縫う技術も非常に進歩しました」

たとえば、長い直線を正確に縫わなくてはいけないコートは分かりやすい例。いまではカルゼジャージーを使ったステンカラーコートなども、きれいに縫うことが出来きるようになった。本来、ストレッチ素材は裁断すると、性質上、縁がカールして縫いづらくなってしまうものだが。

「カールした縁を揃えて問題なく縫えるようになったのは日本の技術です」
※ライクラ®(LYCRA®)およびT400™はインビスタ社の商標です。
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次世代の伸縮繊維

T400™は従来のストレッチ繊維よりも生地の軽量化が図りやすいうえにイージーケア性に優れるという特徴があります。また、ポリウレタン弾性繊維に比べ汗への耐久性があり、繊維の寿命が従来よりも長くなったことも革新的な部分です。

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「伸びる」素材は男性のスタイルアップに貢献

無論、”伸びる”素材が変えたのは実用性だけではない。それを使うことで、シルエットに無駄なゆとりをとる必要がなくなり、その結果、タイトなウエアをスマートに着ることができるようになった。それはスーツなど制約の多い洋服だとさらに効果は大きい。

さらに、”伸びる”素材は意外なカジュアルウェアにも普及している。

ストレッチレザーは近年の大ヒットファブリックのひとつ。これはレザーを引っ張り伸ばした状態で、”伸びる”素材のポリウレタンなどのシートを圧着、その圧着したレザーを特殊な加工で元の大きさに戻すというもの。硬いうえに重苦しいイメージが先行するレザージャケットも、ストレッチレザーが採用されたものなら、購入した瞬間から快適でスタイリッシュに着られるのだから最高だ(文中敬称略)

大人の冬アイテムもストレッチが効いています

いまや前述のとおり”伸びる”素材はファッションに欠かせないファクター。ここからは、そんなストレッチ素材を用いた冬に活躍しそうなアイテムを紹介する

軽い暖かいダウンがストレッチと、最強の冬アウター

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表地はナイロン(ポリウレタンラミネート2レイヤー)中綿はダウン63%、ポリエステル30%、フェザー7%。6万9000円ヘルノ(ヘルノ・ジャパン)
1948年、イタリア北部で創業した高級ブランド「ヘルノ」。実際に役立つ機能を高いレベルでファッションに落とし込んでいる同ブランドの新作がコチラ。今季からラミナーシリーズのラインナップに加わった新素材「イグルー」のフード付きダウンベスト。

”伸びる”素材を採用しストレッチ性はもちろん、高い撥水性、ダウンパック無しの超軽量設計、止水ジップ、撥水機能をもった機能性中綿など、高機能満載。
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出張に旅行にストレスフリーなストレッチジャケット

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7万8000円C.P.カンパニー(トライステイトジャパン)
1975年、イタリアのボローニャで創設されたブランドを前身として1978年に現在のC.P.カンパニーが誕生。創業当初から得意としているミリタリーテイストのほか、スポーツやトラッドなどの要素を加え、現代的なコレクションを展開中だ。

最新のテクノロジーを駆使した高いパフォーマンスと、世界最高峰の染色技術を生かしたウェアに定評のあるブランド。独自に開発した生地、「NYCRA(”伸びる”素材が使われた)」が採用されたジャケットは、ストレッチナイロンなのでストレスフリーの着心地でありながら、すっきりとしたデザインが魅力。

シワ感が特徴なので丸めて旅行に持っていった時こそ真価が発揮される。旅先のレストランやホテルでキメたい時はタイドアップでもいける優れもの。

大人の美脚パンツはストレッチで温か

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2万5000円ジョゼフ オム(オンワード樫山 お客様相談室)
1950年代にイギリス・ロンドンにて創設されたブランド。90年代にはジョゼフのパンツなくしてはスタイリングが完成しないと言われるほど、世界に名を広めた。今回、ご紹介するのはスーパーストレッチギャバのパンツ。

その名の通り、抜群のストレッチ力は一度履けば手離せなくなるほど快適な美脚シルエット。表側は上品な素材感だが、裏面は起毛素材で温か。これさえあれば、冬の屋外デートやスポーツ観戦、コンバーチブルの幌を開けてのドライブも快適だ。

● 川城一敏さん / アバハウスインターナショナルブランドディレクター

1962年生まれ。在学中にシップスの前身であるミウラ&サンズにて販売からキャリアをスタート。その後バイヤーを始め様々な要職を経て、2000年に退社。その後、国内外のブランドディレクターを務め2015年にフリーで活動開始。現在はコートブランドの「coherence」を始めとし、物作りからリテイルマネージメントまで活動範囲を広げている。

■ お問い合わせ

オンワード樫山 お客様相談室 03-5476-5811
トライステイトジャパン 03-6455-4332
ヘルノ・ジャパン 03-6427-3424

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