2021.03.10
敏腕スタイリストに訊いた、コートアレンジの流儀
男のダンディズムが演出できるコートの装い。ただし理想のスタイルを目指すなら、そこに個性とテクを加えることが肝心です。今回は、ロングコート歴20年のベテランスタイリストに、驚きのアレンジテクをお聞きしました。その興味深いプロセスをご紹介します。
- CREDIT :
写真/大森 直 スタイリング/石川英治 ヘアメイク/NOMATA(&'s management) 文/長谷川剛(TRS)
ただの黒で終わらせない渾身の試行錯誤

スタイリング歴25年の石川英治さんこそは、広範なコート知識を持つだけでなく、自己流の着こなし方まで完成させているマスターです。今回特別にロングコートのクールな着こなし方を披露していただきました。
コートの達人が愛用する一着は、英国老舗の定番型。長年掛けて熟成したフォルムとデザインが、男の渋みを引き立ててくれると石川さん。
「マッキントッシュのコートは、メンズファッションの原点である英国的エッセンスが集約したアウター。どのモデルも素敵ですが、とりわけ男子の存在感を引き立てる一着が、ゴム引き素材のステンカラータイプ。
僕も何着か所有してきましたが、個人的に着こなす場合は、いかに自分らしく演出するかを考えます。写真のスタイリングはブラックスタイルにこだわっていたときのもの。ストリートな感覚を盛り込もうと、グラフィックアーティストにオリジナルのドローイングをコートに施してもらいました。たっぷりしたコートの余裕を引き立てるため、合わせるパンツは細身のジーンズ。ストリートな気分にマッチするようゴツめのワーク風ブーツを選んでいます」
達人スタイリストのこだわりは、着こなしだけに留まりません。実はグラフィックを加えたときに、まだ何か足りないと感じる部分があったとのこと。そこでイギリス出張の際にそのマッキントッシュを持ち出し“最終仕上げ”を施しているのです。


このとき少しばかりテンションアップしてしまい穴が開いてしまいましたが、ソレも結果的には良いアクセント(笑)。本当の最終仕上げとしてスコットランドの湖に出向き、湖水にてウォッシュを掛けました」


ちなみに日々愛用しているのは定番のこちら


「つまり、コートは、本当に自分のモノになるまでとことん試行錯誤することが肝心だということです。英国アイテムはシンプルながらアレンジを受け付けてくれる深い懐を持っており、長年じっくり付き合うことで、真に自分にマッチする一着となるのです」

プロフィール
(いしかわ・えいじ)
メンズファッション誌やカルチャー誌、それに広告等のシーンで活躍するスタイリスト。クリエイター事務所、テーブルロック スタジオの代表。