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2020.02.22

日本の「ホンダ」と英国の「ダイソン」── その意外な共通点とは?

累計1億台の生産台数を誇るホンダ「スーパーカブ」と、「吸引力の落ちない掃除機」で知られるダイソン。世界を席巻したその2社には意外な共通点があることをご存知でしたか?

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写真/R.Moon 文/平井敦貴

ベトナムで売れに売れた「ホンダ」

ベトナムでは「二輪バイク」を総じて「ホンダ」と呼んでいるのをご存知でしょうか?

その理由は1967年に初めて日本から輸出された「スーパーカブ」が売れに売れたため。一説によると、当時のベトナムにおけるバイクのシェア率は90%以上を誇ったとか。

女性でも乗りやすい低床設計に俊敏な機動力。そして独創的なデザインは、以後ベトナムのみならず世界中で大ヒットし、2017年には累計生産台数がなんと1億台を突破! 日本の「スーパーカブ」は世界に鮮烈なインパクトを与えたのです。

ところで ── 。いま、世界で売れている「掃除機」といえば、どのメーカーを想像しますか?

おそらく多くの方が「ダイソン」と答えるのではないでしょうか。

ベトナムでバイクが「ホンダ」と呼ばれるように、掃除機=「ダイソン」のイメージが定着しつつある現在。ここでは、そんな世界を変えた2つの企業のあまり知られていない共通点をご紹介します。
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共通点.01

日本も英国も、創業したのはエンジニア

「ホンダ」こと本田技研工業は、本田宗一郎氏によって1948年に設立(その前身となる本田技術研究所は1946年に設立)されています。氏はもともと自動車修理業を生業としていましたが、この時よりバイクという「ものづくり」を始めることにしたのです。

一方、ダイソンの創業者ジェームズ・ダイソンも、もともとは工業デザイナーでありエンジニアでした。1980年代よりサイクロン方式の掃除機を自身で開発し、英国や米国、日本などで販売していましたが、1993年に自社工場と研究所を備えたダイソン社を英国コッツウォルズに設立。その後の破竹の勢いは周知の通りでしょう。

つまりこの2社は、創業者が技術を持ったエンジニアであること、そして創業時から「研究所」を有していたという点で共通しているのです。
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共通点.02

製品を商品に変える、ものづくりの哲学

ただ、いくら技術力が高くてもそれだけで製品が売れるとは限りません。機能や技術だけでなく、使いやすさやデザインなどの要素が一体となって、初めて「製品」は「商品」となるのです。

そのことを、ホンダもダイソンもよく理解していました。

例えば、世界的に成功したスーパーカブについて、ホンダの歴史を深く知るモビリティ・クリエイターの中島好雄氏はこう語ります。
▲モビリティ・クリエイターの中島好雄氏。中学時代から“自作”でクルマを作っていたという筋金入りの技術者。学生時代から本田宗一郎氏と親交を深め、後に英国ホンダのブランディング事業や、ホンダのスーパースポーツバイク全般の開発に携わるなど多岐にわたり活躍。
中島氏「スーパーカブは『スポーツバイク』でもなく『ビジネスバイク』でもないというのがその特徴で、車体もとにかく軽い。さらに低床設計だから女性がスカートでも乗れるんですね。それでいて積載量も高く、商用でも使えます。確かスーパーカブが発売された翌年のレースでも優勝した実績を持っていて、まさに『万能バイク』と呼べるのがこのスーパーカブなんです」
中島氏の言葉からも分かるように、スーパーカブのヒットの要因は、実用的でありながらも、男女を問わず、さらに言えば国を問わないその総合力の高さにあります。中でも、今も色あせないそのデザインは秀逸の一言。当時の技術者のレベルの高さは、「丸みの付け方などデザインのディテールにまでこだわっていることからも分かる」と中島氏は続けます。
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一方、ジェームズ・ダイソン氏は、そんなホンダのデザイン哲学や本田宗一郎氏に深い敬愛の念を抱いているといいます。というのも、ダイソンの「ものづくり」には「DISRUPTIVE DESIGNS(常識を覆すデザイン)」というコンセプトがあり、スーパーカブはまさにその成功例として捉えられているからです。
▲独創的で常識を覆すデザインのダイソンの掃除機。その根幹には「技術に裏打ちされたものづくり」という、ホンダのスーパーカブに通じる哲学があります。(写真はダイソン「V8 slim」)
独創的なデザインのダイソンの掃除機ですが、その根幹にはスーパーカブ同様、技術力に裏打ちされた「ものづくりの哲学」があり、それゆえに唯一無二の存在となったのではないでしょうか。

ちなみに、ダイソンの日本オフィスには「ホンダルーム」と呼ばれるミーティングルームがあり、その壁面には本田宗一郎氏の言葉やデザイン画などが飾られています。両者のつながりはそういったところからも感じられるのです。
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共通点.03

エンジニア育成のため、学校を設立

技術者の育成についても両社には共通点があります。

ホンダは、1976年にホンダ テクニカルカレッジ(現在は関東と関西の2校)という自動車専門の大学校を開校しています。同校からは多くの技術者が誕生し、世界企業となった現在のホンダを支えています。

一方のダイソンも、2017年にダイソン インスティテュート オブ テクノロジー(Dyson Institute of Techonology)という専門大学を英国に設立。高校を卒業したエンジニア志望の学生たちは、全寮制のこの学校で研究をしながら、週に数日はダイソン社の研究デザイン開発チームで働いています。学費は全額無料で、そのうえ給料も支給されるため、優秀な人材が集まるのもうなずけるでしょう。

特にこの学校では、これまでは学問としては別物であったエンジニアとデザインを同時に学ぶことを目指しており、ダイソンのエンジニアに対する哲学が色濃く現れているのです。

こうして見てくると、日本の「ホンダ」と英国の「ダイソン」は、業種も違い、遠く離れた企業ではあるものの、その共通点はいくつもあることに気づかされます。
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日本のエンジニアの課題とは?

ところで、いくら環境を整えたからと言って、エンジニアの育成が順調に行くとは限りません。特に、今の日本における「ものづくり」において、先の中島氏は一つの警鐘を鳴らしています。

最後に中島氏の言葉を借り、日本の「ものづくり」の未来をうらなってみたいと思います。

中島氏「(クルマの設計をするのに)今は昔と違って、広いスペースや工具がなくても、CADを使った3Dのデータで設計ができます。そういった意味では、量産性や効率のよいものづくりができるようになったのかもしれません。ですが、『新しいもの』を作れるかというと、そこは甚だ疑問です。これは本田宗一郎さんから直接聞いた話ですが、初めて輸出用のスーパーカブを作った時には、(先に進んでいた)欧米のモデルに負けないように、相当の覚悟をもってつくり込んだそうです。そういった覚悟が、これからの『ものづくり』には必要だと僕は思います。(その反対に)途上国向けにつくるとテクノロジーのレベルはどんどん下がっていってしまうでしょう」

世界に誇る「日本のものづくり」――果たしてその輝きは、この先も保ち続けられるのでしょうか?

■ダイソン

ダイソンのオフィスには、ホンダの「スーパーカブ」やソニーの「ウォークマン」など、世界を変えた革新的なデザインの工業製品をアーカイブとして展示しています。ダイソンのデザインの源泉には、日本の「ものづくり」の結晶が脈々と流れているのです。

https://www.dyson.co.jp/

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