2020.04.04

人気薄型ノートPCが1年半ぶりに「大幅刷新」

新「MacBook Air」が大ヒットする2つの理由

2008年に誕生したアップルの薄型ノートパソコン「MacBook Air」が1年半ぶりにマイナーチェンジを行った。2018年モデルの2つの問題点も解消するなど概ね良好な仕上がりを見せているが、まだ残念なポイントも残っており……。新型機種の使用リポートをお送りする。

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文/松村太郎(ジャーナリスト)

キーボードはMagic Keyboardに刷新された。静かで軽快ながら、実に打ち心地がよい。また右上には独立したTouch IDセンサー付きの電源ボタンが配置され、ウェブのパスワード入力もワンタッチだ(筆者撮影)
3月18日、アップルは薄型ノートパソコン「MacBook Air」を刷新した。一言でいえば「コストパフォーマンスが極めて高い、長持ちするノート型Mac」という評価だ。

今回は1年半ぶりのマイナーチェンジに相当するが、それまで抱えていた問題を2つ解決した。それがそのまま、大ヒットする理由を作り出していると感じた。

MacBook Airの誕生は2008年

MacBook Airは、アップルのノートパソコンで、デビューは2008年にさかのぼる。当時のCEOだったスティーブ・ジョブズが、茶封筒からパソコンを取り出すパフォーマンスで「超薄型」「金属ボディ」「ノートパソコン主体のパソコン市場」など、いくつものトレンドを作り出すきっかけとなった。

ノート型パソコンの「デスクトップに対する補助的な存在」という価値観を覆し、ノートパソコンだけをデスクでも出先でも使うスタイルを確立した。とくに海外の企業では「BYOD」(Bring Your Own Device、自分のデバイスを持ち込む)で持ち込みたいデバイスの代表格となったり、IBM等の大企業がMacへ移行を促し、生産性を上げてコストを下げたことも話題になった。
MacBook Airは、それまでのMacが強いとされていたクリエイティブや教育市場に加えて、ビジネス市場開拓にも一役買った。また2010年代のiPhoneアプリ市場の拡大で、アプリ開発用の需要に応えるなど、アップルによると、最も人気のあるMacであるという。

にもかかわらず、2010年にデザインを刷新して以来、2018年の刷新までの間、長らくプロセッサーなどの小幅な変更を繰り返すだけだった。2010年からの10年間、アップルはiPhoneによって大きく成長を遂げてきた。その反動からか「Mac軽視」と批判を集めた。

2018年のMacBook Airの刷新では、ノート型Macで最後となる高精細「Retina」ディスプレーへの対応や、Thunderbolt 3(USB-C端子)への統一など、2015年からのMacBookシリーズの標準的な機能を踏襲した。
しかし2018年モデル、これをマイナーチェンジしやや値下げした2019年モデルのMacBook Airには、2つの問題があった。2020年モデルが賞賛される理由は、2つを同時に解決したことだった。

2018年のモデルチェンジで、当時のMacBookシリーズの統一仕様だった「バタフライキーボード」がMacBook Airにも搭載された。本体の薄型化を極めるため、0.55mmと極めて浅いキーボードが採用されたが、これは2015年から不評で、不具合の報告も多かった。

そこで2019年10月に発表された最上位モデル、16インチMacBook Proからは、深さ1mmに変更されたはさみのようにキートップを上下させるシザー方式の「Magic Keyboard」が採用され、今回のMacBook Airにも採用された。キーボードの深さが増したため、本体の厚みは0.41~1.61cmと、ヒンジに近い部分が2018年モデルの1.56cmから0.5mm厚くなっている。

持ち比べたところ0.5mmの違いを明確に感じることは難しく、むしろ重さが40g増したことのほうをやや感じる程度だ。しかしこのわずかな変化のおかげで、キーボードの使い心地は大きく改善した。
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仕事がはかどるキーボード

これまでのMacBook Airに搭載されたバタフライキーボードは、キーを押し込むとすぐ底打ちし、余った力のやりどころがなくなる。跳ね返る力も弱いため、自分で指を意識的に上げ下げする必要がある。確かになぞる感覚を心得れば、軽快なタイピングが可能だが、それはあまり一般的ではなく、音は大きめだった。

新モデルのMagic Keyboardで感じることは、まず音が非常に静かになったことだ。力をかけても、ノートパソコンにありがちな、そして前モデルでも際立っていた「ぱちぱち」という音は抑えられている。これはオフィスや公共の場所での作業にとって非常に有利だ。

またキーの深さ以上に、Magic Keyboard向けに独自に開発したというラバードームが絶妙な感覚だ。適度な力加減を受け止めて、次の運指に向けて指を跳ね返す。手元にある巨大なトラックパッドも合わせて、外付けのキーボードやマウスを用意しなくても快適な作業環境が手に入る点は、MacBook Airの大きな魅力だ。
MacBook Air(Early 2020)ゴールドモデル。1.29kgのアルミボディは高い質感を誇る(筆者撮影)
筆者がテストしているのは1.1GHzデュアルコアIntel Core i3、メモリー8GB、256GBストレージを搭載する、価格10万4800円、学生・教育関係者向け9万3800円の最も安いモデルだ(価格はいずれも税別)。

メーカーが用意するテスト機は、性能も価格も最も高いモデルを用意することが多いのだが、今回あえてベースグレードを試すことができ、最も価格が安いモデルのパフォーマンスを知ることができた。この点は、収穫が大きかった。ベースモデルは、極めて高いコストパフォーマンスを発揮することがわかったからだ。

筆者は普段、テキストエディターUlyssesで原稿を書き、Microsoft Wordで構成をし、AppleのKeynoteでスライドを編集し、Adobe Lightroomで写真を調整し、iMovieもしくはAdobe Premiere Rushで動画を編集している。

そのほかに、ウェブブラウザーSafariでの情報収集や、Slack、メールでのコミュニケーションを行う。基本的には、主たる作業の背後で、カレンダーやリマインダーなどのアプリが起動している状態だ。

おそらく多くの学生や一般的なオフィスユースにおいては、これらの作業が一般的なレベルではないか、と思う。その環境で5日間ほど作業をしてみた。

まずパフォーマンス不足、というよりはけたたましくファンが回転してしまうタイミングは、iMovieやPremiere Rushで4K動画の編集をしたり、書き出しを行っているときだ。またKeynoteにビデオを貼り付けて再生しようとしたり、複雑なエフェクトを試す際にもファンが回り、キーボード部分がじわりと熱を帯びる。

しかしファンが回ったのはそれぐらいで、そのほかの大半の作業中はファンの音もなく静かなキーボードの音が聞こえるだけだった。

2018年、2019年のMacBook Airは、第8世代1.6GHzデュアルコアIntel Core i5しか選択できなかった。今回の第10世代1.1GHzデュアルコアIntel Core i3は、以前のモデルと処理速度は同等だが、グラフィックス性能は8割向上しており、手元のマシンのベンチマークでは2倍以上の性能を記録した。
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13インチRetinaディスプレーは自然な発色で、設定によって高精細で文字の大きさを拡大したり、より広い作業スペースを確保することもできる。大型トラックパッドは使いやすい(筆者撮影)
2020年モデルのMacBook Airでは、より性能のよいプロセッサーが用意され、1.1GHzクアッドコアIntel Core i5、1.2GHzクアッドコアIntel Core i7の選択が可能だ。前述の動画やグラフィックス処理の頻度が高い場合は、16GB、クアッドコアのプロセッサーを選択しておくとよいだろう。

不評だったキーボードを刷新し、プロセッサーの選択肢を与えたことで、より広い顧客層にフィットするスタンダードモデルへと進化したMacBook Air。

昨今のリモートワーク需要で、もう1台作業用のコンピュータが家に必要、という人にとって、最も価格が安いエントリーモデルでも十分な性能を発揮してくれる点はうれしい限りだ。

MacBook Airは3つのマイクを搭載し、ノイズキャンセリングをしながらクリアに声を伝えられるよう工夫されている。またTouch IDを搭載しており、コンピュータへのログインやスリープからの復帰、ウェブでのパスワード入力を人差し指のタッチで済ませることができる点も、快適さを増してくれるだろう。

改善可能なはずの残念なポイント

しかし、簡単に改善可能なはずのポイントを放置している不満もある。リモートワークといえばビデオ会議とチャットの組み合わせが一般的だが、ディスプレー上部に用意されているFaceTime HDカメラは1280×720ピクセルと、フルHDやそれ以上の解像度で相手に映像を届けることができない。

これだけリモートワークが世界中で注目を集めている中、解像度の低いカメラはMacBook Airの欠点として際立ってしまう。またプロセッサーに関してクワッドコアを選択可能であれば、メモリーについても16GB以上搭載できるようにしてもよかったはずだ。

この2点を除けば、MacBook Airは、性能、コスト、そしてメインマシンとして長く利用できるブランドの発展、いずれを取っても非常に優れた製品であると言える。
記事提供/東洋経済ONLINE
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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