2018.08.15

観終わって彼女と語り合いたくなる、最新映画2本

松田龍平主演の『泣き虫しょったんの奇跡』と趣里主演の『生きてるだけで、愛。』。この秋公開の2本は、一見対照的な作品ですが、共に観た後に語りたくなる映画。デートにもオススメですよ。

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文/森本 泉(LEON.JP)

こんにちは、LEON.JPのモリモトです。皆さんは映画デートの時にどんな作品を選ぶでしょうか? 
ディズニーやSWみたいな超大作でワクワクドキドキ体験を共有して“言葉はいらない……”という楽しみ方もあれば、大作じゃないけど、観た後に無性に語りたくなる映画というのもあって、それもまた映画デートに向いた作品だと思うのです。今回はそんな語り合いたくなる映画を2本ご紹介します。

元奨励会員の豊田監督が撮った、感動の将棋ムービー

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まずは9月7日から公開の『泣き虫しょったんの奇跡』。泣き虫の正体は松田龍平です。あの、常に遠い目をして何かを見ていないようで実はしっかり見ている龍平兄ぃが将棋を指しながら、たまに泣く映画です。

なぜ彼(龍平演ずる瀬川晶司)は泣くのか? それは自分が不甲斐ないから。彼は子供の頃から将棋が大好きで、中学3年の時にプロ棋士を目指す「奨励会」に入ります。プロになるためには、ここで26歳の誕生日までに4段になることが条件。その歳までに昇段できないと奨励会は退会となり、プロを諦めるしかないのです。
瀬川は12年、この奨励会で将棋一筋の道を歩みますが、結局、4段にはなれずに退会。その際も、“なんで自分はもっと努力できなかったんだ”と泣きます。彼は泣き虫ですから。けれどもその後、彼は一念発起し、再びアマチュアの棋士として頭角を現すと、見事アマ名人となります。そして周囲の応援も得て、プロ編入試験を受けるチャンスをつかみ、見事35歳でプロになるのです。これは史上初の快挙。本作はそういう異色の棋士、瀬川晶司氏の実話なのです。
まさに「感動のサクセスストーリー」。結果はわかっている話ですが、それでも小ネタやスターのカメオ出演なども挟んで、飽きさせません。観終わって誰もが素直に笑顔になれるような作品です。
監督は豊田利晃。映画好きならその名をご存知の方も多いでしょう。デビュー作『ポルノスター』(98年)で日本映画監督協会新人賞を受賞し、松本大洋原作の『青い春』(02)では今回も組んでいる松田龍平を主演に素晴らしい青春群像を描いて話題となり、その後も『ナイン・ソウルズ』(03)『空中庭園』(05)『モンスターズクラブ』(12)など、どれもちょっとクセのあるエッジの効いた作品で評価されてきた、業界にもファンの多い監督です。
そのとんがった監督が、今回は、一見“らしからぬ”「感動のサクセスストーリー」を正攻法で撮った。それはなぜ? というところで、まずは2時間ぐらい話ができそうです。豊田監督自身が9歳から奨励会に入って17歳で夢が叶わず退会したという過去をもつことはよく知られています。「負けっぱなしじゃ、終われない」というキャッチコピーが示すような“挫折からの復活”というテーマは豊田監督にとってもいろいろ思うところがあるのかな……などなど、本筋じゃないところも含めてこの映画への興味は尽きません。

素直に感動している彼女に、実はこの監督はね……みたいな話でも盛り上がれる作品かと。音楽がBlanky Jet Cityの照井利幸というのも、ファンにはたまらないところでしょう。
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人と人はどこまで深くつながれるのか?

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さて。お次は『生きてるだけで、愛。』。こちらは『泣き虫しょったん…』と違って、どこをとっても“まとも”ではありません。原作は劇作家・本谷有希子の同名小説。この人の舞台も小説もとにかく過剰なエネルギーに満ちていて、タイプは違うけれど私には女版つかこうへいみたいに思える。で、それが大好きなんですが、この映画もそんなクレージーな本谷ワールド全開で、とにかくパワフルな作品です。
過剰な自意識に振り回されて自分ですらコントロール不能な女子・寧子(趣里)は、昼間も布団から抜け出せないズブズブのダメ生活中。そんな彼女にも同棲中の恋人・津奈木(菅田将暉)がいるのですが、ある日、元カノだという女(仲里依紗)が突然、家に押しかけてきて、彼と別れろと言い出し……。

出てくる人物がみんなどこか変。変なんだけれど、変と変が絡み合うなかで、人の心の繊細な喜びや哀しみがヒリヒリするようなリアルさで描かれる。とにかく濃密な世界観にグイグイ惹き込まれてしまいます。
でも、なんといっても趣里がいい。劇中の寧子のエキセントリックなキャラクターを実に自然にそして(ある意味)キュートに演じています。さすが“キャンディーズ”伊藤蘭と“兄貴ぃ~”水谷豊という最高の遺伝子を継いだサラブレッド。しかも役者としての根性が座っています。菅田と趣里の不器用で切実な愛の形は日本版『ベティ・ブルー』とでも呼びたくなる内容。見ていて辛い。けれど愛を求められずにはいられない人の性(サガ)が痛いように伝わってくる迫真の演技は衝撃的ですらあります。
監督は今作が長編初めてとなる関根光才。彼はCMやMビデオでは世界的な賞をいくつも獲っているのだそうで、全編16 ミリフィルムで撮られた映像のセンスは抜群。光の処理が天才的で、すべての場面が夢のように美しいのです。

ガツンとくる映画だけに、デートで見に行った後の彼女の反応が見ものではあります。「ありえない」と思うのか、自分の中にも寧子的な要素があると思うのか。この映画を見終わってお互いに言いたいことがたくさんあるようなカップルだと素敵だなぁと思います。

ちなみに松田龍平の父親・故松田優作と、趣里の父親・水谷豊は私生活でも大の親友だったとか。その息子と娘同士が主役を張った素敵な映画が見られるのって、なんだか幸せです。
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『泣き虫しょったんの奇跡』

出演:松田龍平 野田洋次郎/永山絢斗 染谷将太 渋川清彦 駒木根隆介 新井浩文 早乙女太一/妻夫木聡 松たかこ 美保純 イッセー尾形 小林薫/國村隼
原作:瀬川晶司『泣き虫しょったんの奇跡』(講談社刊)
監督・脚本:豊田利晃
制作:『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会
製作幹事:WOWOW/VAP 制作プロダクション:ホリプロ/エフ・プロジェクト 配給・宣伝:東京テアトル
コピーライト:©2018『泣き虫しょったんの奇跡』制作委員会
公式サイト:http://shottan-movie.jp/
9月7日(金)全国公開

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『生きてるだけで、愛。』

出演 :趣里 菅田将暉 田中哲司 西田尚美/松重豊/石橋静河 織田梨沙/仲里依紗
原作 :本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊)
監督・脚本:関根光才
製作幹事 :ハピネット、スタイルジャム  企画・制作プロダクション:スタイルジャム  配給:クロックワークス
コピーライト:©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会
公式サイト:http://ikiai.jp
11月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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