猫も杓子も踊り子も、みんな恋をしたロートレックのポスター展が開催中

モンマルトルの名門キャバレー「シャ・ノワール（黒猫）」のためののポスター。テオフィル・アレクサンドル・スタンラン作（1896年）。

アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレックによるムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ（1891年）のポスター。

「アリスティド・ブリュアン、彼のキャバレーにて」アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック（1893）

人気歌手を描いた「エルドラド、アリスティド・ブリュアン」アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック（1892）

アイルランド出身の歌手を描いた「メイ・ベルフォール」アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック（1895）

イギリス出身の踊り子を描いた「メイ・ミルトン」アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック（1895）このポスターはのちにピカソの作品「青い部屋」の背景に描きこまれた。

当時の版画・ポスターは主に知的エリートの間で芸術へと推し進められた。そうしたエリートたちの評論は数多く残るが、街中にあふれるこのグラフィックを声なき市井の人々がどのように見つめ、何を思っていたのかはまったく分からない。

版画・ポスターの大流行の立役者に画商のアンブロワーズ・ヴォラールがいる。彼は版画芸術の振興のために図録の出版などを精力的に行った。また、彼はポール・セザンヌの絵画にもいち早く目をつけ、それらが世に出る契機を作った。

この展示を通して、それまで情報手段のひとつにすぎないと見なされていた版画・ポスターの価値を芸術の体系に組み込んだ当時の人々の尽力がうかがい知れる。