
それはとてもスリリングで楽しい時間でした。
彼らの話を聞いて改めて思ったのは、建築家の仕事とは実際に家や建築物を建てるずっと以前、図面すら引く前に、彼らの頭の中だけで自在に思索を巡らせている時間こそが、もっとも重要な意味があるのだなということです。
ある建築家はひとつの建物をつくるために、太古の昔にまで遡って土地の歴史を調べたかと思えば、遠い未来を見据えて、建物が継承していくべき価値について考察を巡らせます。
また別の建築家は、建設予定地を離れて地球の果てまで情報を求めたかと思えば、今度は宇宙にまで視野を広げて、はるか上空から土地を俯瞰してみます。
時空も常識も超え縦横無尽に思索を広げ深めていく、その発想の自由さとしなやかさこそが優れた建築家の条件なのかと、感じたものでした。

そんながんじがらめの中で、建築家たちは文系と理系の両方の脳をフル回転させながらアイデアを現実のものにしていくわけです。いやぁ、大変!
その高いハードルを何度もクリアしてきた彼らが人として練れてくるのは理の必然というべきでしょう。建築家が若くてもおしなべて話し上手であるのは、職業柄の必要条件というわけです。
その時に話を伺った若き建築家たちの興味深い頭の中を垣間見ることができる貴重な展覧会が開かれることになったのでご紹介させて頂きます。
タイトルは「ユメイエ展 日本の若手建築家」。
日本の若手建築家9人とふたつのユニット、計13名を、彼らが作成したドローイングと模型を通じて紹介しようという試みです。
彼らには「夢の家」というテーマが与えられています。これは先程の話とは正反対に、何の条件もないなかで自由に自分の理想の家を作るとしたら、それはどんなものになるかという問いです。
小学生ならば喜んで描きそうですが、建築家にとってはいささか意地悪なテーマであるかもしれません。さまざまな制約を失った時、建築家は何を拠り所にしてどんな「夢の家」を描き、つくるのか?
興味は尽きません。
彼らのしなやかで強靭な発想の産物をぜひご覧いただきたいと思います。
詳細は以下の通りです。
■開催概要「ユメイエ展 日本の若手建築家」
参加建築家/⻘⽊弘司、畝森泰行、⼤⻄⿇貴+百⽥有希/o + h、海法圭、⽥根剛、teco (⾦野千恵+アリソン理恵)、中川エリカ、能作淳平、能作⽂徳 、萬代基介、御⼿洗⿓
会期/2017年7⽉28⽇(⾦)〜8⽉12⽇(⼟)※⽇祝⽉・休(7/30, 7/31, 8/6, 8/7, 8/11)
会場/ TARO NASU (〒101-0031東京都千代⽥区東神⽥1-2-11 ☎03-5856-5713)
開場時間/ 10:00〜18:00
主催/公益財団法⼈ ⽯川⽂化振興財団
URL/http://www.taronasugallery.com/exh/exh_forth.html
展覧会アドヴァイザリー/鈴⽊布美⼦
建築家選定/千葉学(建築家/東京⼤学⼤学院教授)
会場構成/中川エリカ
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