2024.01.20

映画「NOGUCHI -酒造りの神様-」

91歳現役杜氏が私に教えてくれた不屈の精神

「酒造りの神様」と称される農口尚彦氏の酒づくりに密着したドキュメンタリー映画「NOGUCHI -酒造りの神様-」の配信がスタート。

CREDIT :

文・編集/秋山 都(LEON.JP) 

先般の能登半島地震で被害に遭われたみなさまにお見舞いを申し上げます。

1月1日の午後4時過ぎ……おそらく多くのご家庭でお酒など飲みながら新春を寿いでいらしたことと思います。私もこの時間は東京の実家で家族と日本酒を飲んでいました。テレビから流れる地震警報に飛び上がり、「今すぐ逃げて!」というアナウンサーの切迫した声(日頃の訓練のたまものかと思います)にお正月気分が吹っ飛びました。能登や金沢、富山などに住んでいる友人・知人を案じましたが、みなさん、家屋や店舗などに一部の倒壊があったものの、怪我はなかった様子……とりあえずホッとしました。でも、この寒さのなかで、いまだに避難生活を余儀なくされている方もいるので、忘れずに心を寄せ続けていきたいと思います。
NOGUCHI
▲ 石川県小松市の「農口尚彦研究所」(映画「NOGUCHI-酒造りの神様-」より)。
能登での地震と聞いて、次に心配になったのが日本酒の酒蔵です。能登は、岩手の南部杜氏、新潟の越後杜氏、兵庫の但馬杜氏と並ぶ杜氏の郷として知られるエリア。能登半島だけでも20近い酒蔵があり、銘柄は100を超えるのだそうです。その酒蔵は大丈夫だろうか……SNSなどで辿るうちに、だんだん状況が見えてきました。

全壊/松波酒造、櫻田酒造、鶴野酒造、日吉酒造、中納酒造
半壊/清水酒造、白藤酒造、中島酒造、中野酒造 
土砂崩れ/宗玄酒造(1月15日に酒造り再開を発表)
津波浸水と建物破損/数馬酒造 

冬はまさに日本酒造りのシーズンだと言うのに、お酒を造ることはおろか、お蔵自体も倒壊してしまい、再建の見込みが立たない酒蔵も多くあります。これは何とかしないと。せめて今、市場に出回っているお酒を飲んで応援しようと考えましたが、酒販店ではすでに能登のお酒は売り切れていました。そこで、もっと直接的な支援を、と考えていたところ、石川県酒造組合と富山県酒造組合で義援金受付口座が開設されたとのこと。口座の詳細は本記事末に置いておきますので、支援したい!というお気持ちのある方はぜひご確認ください。私も微力ながら“飲んだつもり”支援を送りました。
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農口尚彦氏の酒造りに密着したドキュメンタリー映画

◆「NOGUCHI-酒造りの神様-」

さて、能登など石川県には取材に行くことも多く、なかには何度もお会いした方もあります。なかでも、1年に数回、継続的にお会いしているのが農口尚彦さん。16歳で酒づくりの世界へ入り、90歳を超える現在も現役で酒づくりを続ける農口杜氏は「酒づくりの神様」と呼ばれ、能登杜氏の代表的な存在ですが、このほど杜氏の酒づくりに密着したドキュメンタリー映画が完成したと聞き、さっそく拝見しました。
NOGUCHI 農口尚彦
▲ 米を洗い、水分を吸わせる洗米。米の水分量がこの後の酒造りに大きく影響する。(映画「NOGUCHI-酒造りの神様-」より)
「酒造りの神様」と言うと仏様のようなニュアンスがありますが、別名「酒造りの鬼」とも呼ばれているそうでして、90歳を超えた今も酒造りの現場に入るとピリリとした緊張感を漂わせる杜氏。この作品のなかでは自宅でくつろぐオフショットもふんだんに収録され、今まで見知らなかった新たな杜氏の一面を知ることができました。
NOGUCHI
▲ 趣味は散歩と温泉という農口杜氏。(映画「NOGUCHI-酒造りの神様-」より)
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映画のくわしい内容はネタバレになってしまうため割愛しますが、私がこの作品から感じ取ったのは農口杜氏の不屈の精神。「若いころは自分が造りたいと思う酒を追求していたが、ある時飲む人に合わせた酒を造ろうと」気持ちを切り替えた杜氏は終始、“飲む人”の気持ちに寄り添った日本酒を追求しています。たとえば本作品の中で杜氏が取り組んでいた山廃の大吟醸酒は、日本酒を食中酒として食事を楽しみながら飲む昨今の風潮に合わせて、キレや酸が際立つ仕上がり。鑑評会で表彰されるような、それだけで飲んで美味しい日本酒とはちょっと違う仕上がりです。

75年間一筋に日本酒を造り続けてきて「もっと、もっと(良いものを)」と思えるその原動力は何なのでしょう? まずは恵まれた体力、ルーティンを繰り返し、自分を律する精神力、そして何より負けん気の強さ??  おそらくそのどれもであり、他にも要因はたくさんありそうですが、私がどんなコンディションでこの映画を観るかによって受け取れるメッセージも変わってくるのかもしれません。常より「80歳まで仕事する!」と自分に言い聞かせている私ですが、心や身体が疲弊しそうになった時、またこの作品を何度でも見返すことでしょう。
NOGUCHI 農口尚彦
ちなみに、今回の地震により、石川県小松市の酒蔵「農口尚彦研究所」の被害は奇跡的に小さく、農口杜氏のご自宅のある能登町も被害を被ったものの、ご家族はたまたま不在にしていて無事だったとか。よかった。これからも、能登半島、石川県、富山県などの酒蔵に想いを寄せ続けていきたいと思います。

NOGUCHI

NOGUCHI-酒造りの神様-

「杜氏・農口尚彦」。誰も味わったことのない最高の日本酒をつくりたい――。そんな祈りにも似た思いとともに70年余り、人生のすべてを捧げ、ただひたすらに酒づくりに打ち込んできた。完璧な酒を追い求める男の終わりなき探求の旅。そして、その技を継承すべく加わった若き弟子たち。カメラは一年間に渡り、酒蔵に密着。小松の厳しくも美しい四季を背景に酒づくりの神様とその弟子たちによる格闘のすべてを記録。これまで誰にも見せなかったその仕事の神髄をつぶさに見つめる。

Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、HuluのTVOD(都度課金サービス)やLeminoなど、各動画配信サービスにて2023年10月31日(土)より配信中。
最新の配信情報は公式サイトにてご確認ください。

https://noguchi.movie/

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石川県酒造組合連合会への義援金はこちらから

北國(ホッコク)銀行
金沢城北(カナザワジョウホク)支店
普通預金  036977
口座名義  石川県酒造組合連合会(イシカワケンシュゾウクミアイレンゴウカイ)

※寄付金控除の対象とはなりません

●海外から送金する場合
(NAME OF BANK) THE HOKKOKU BANK,LTD
(NAME OF BRANCH) KANAZAWAJYOHOKU BRANCH
(SWIFT CODE) HKOKJPJT
(ACCOUNT NO.) 119-0036977
(BENE'S NAME) ISHIKAWAKENSHUZOUKUMIAIRENGOUKAI
(BENE'S ADDRESS) 2-13-33, Motomachi, Kanazawa-shi,Ishikawa-ken, 920-0842, JAPAN

富山県酒造組合連合会への義援金はこちらから

北陸銀行 
富山丸の内(トヤママルノウチ)支店
普通預金 6046799
口座名義  富山県酒造組合能登半島地震
支援金受入口座(トヤマケンシュゾウクミアイ ノトハントウジシンシエンキンウケイレコウザ)

美味しい日本酒がもっと知りたい、飲みたい?

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