2019.12.17
やっぱり、お金じゃなくてセンスです
LEONの掲げる標語「お金じゃなくてセンスです」は創刊から18年たったいまどう響くのか? 先日出会った書籍から気づかされた視点についてのお話です。
- CREDIT :
文/高橋大(LEON.JP)
タカハシです。
さて年末です。
この季節になると、ぐっと寒くなってきますが、いろいろと入り用も増えて、お財布の方もなかなか寒くなってきますね。
LEONの標語は「お金じゃなくてセンスです」
といいつつ、ご紹介するモノやコトはなかなかな高額なので、インターネット上ではこんな高いモノ庶民には買えない!とお叱りも受けたりいたします。
では、そういった庶民感覚を軽視しているのかといえばさにあらずでして、むしろ本当にお金じゃなくて、センスで楽しんで頂きたいと思い日々アレコレと思案しながら記事を製作しているのですが、やっぱり無料や安価で大人が満足のいくようなサービスだったりモノを探し出すのは難しい。
やっぱりセンスにはお金が必要なんでしょうか?
と自問自答していた数日前に出会ったのがこちら。

内容はというと、夏目漱石、太宰治、内田百閒、永井荷風、赤塚不二夫、つげ義春、村上春樹、国木田独歩、直木三十五、江戸川乱歩、芥川龍之介、宇野千代、阪口安吾と明治から近年までのあらゆる文豪たちによる、「お金」にまつわる随筆、作品などがコラージュされています。

永井荷風は、文章で暮らすことは不可能であり、親の臑齧りで生きていると、嘆息します。
かと思えば赤塚不二夫は、新しモノ好きであれこれ手を出しまくった、例えば数千万で購入したクルーザーを2回乗っただけで飽きて数百万で売ったから、1回数百万だった。でも金なんてそんな使い方で楽しきゃいいんだ、酒を飲む金だけあればいいと豪快に語る。

そんななかでちょっと引っかかったのが村上春樹の貧乏についての文章。
若い頃貧乏だったけど、それをつまらないとか恥ずかしいと思ったことはなく、むしろ楽しかった思い出だ。
だけど、最近の若い女の子に「貧乏はいやですか?」ときくとほぼすべてのこが「絶対にいやだ」と口を揃えた。
いまの時代に「貧乏」はなくなってしまったのだろうか?という話。
ちょっとはっとしました。
いま、というよりいまにいたるまで、なんだかひとつのイメージに向かって私たちは突進し続けてきて、ふと気づくといろいろなものがこぼれ落ちてしまっていた。そのひとつが「貧乏」だったのかなと。
貧乏の楽しさ、これがどれだけのものなのかいまの世の中で大人になった自分があえて体感するのは、なかなか勇気がいるけれど、そういうレイヤーを知覚できなくなっていくのはちょっとマズイんじゃないかな、と。
そう考えてみると、お金じゃなくてセンスですという言葉がかなり意味深長に思えてきます。
さて、この永遠のパラドックス、楽しめるかどうかは自分次第、貴方次第。
気になった方はぜひご一読を。
ではまた!
「お金本」2300円/左右社
金に泣いて笑った96人の文章や作品が詰まった一冊。ありそうでなかったなかなかの編集は、あらゆる年代、職業の人にちょっとした視座を与えてくれるはず。