と、その前に、ウラカン STOについて簡単にご説明しよう。
強烈なダウンフォースを生むボンネットは通常のクルマとは逆に前側に向かって開き、そこにはヘルメットを収納できるスペースのみがぽっかりと空洞になっている。またボディ後方に目を移すと、サメの背びれを彷彿させるかのような通称セントラルシャークフィンが、また3ポジションに調整可能なリアウィングなど、これでもかというくらいにエアロパーツが目白押し。
RWDのエンジンに目を移すと、自然吸気V10エンジンは640ps/565Nm、0-100km/h加速タイムは3.0秒、最高速度は310km/hというパワーを発生させる。足まわりにはこのクルマのために開発されたというブリヂストン製『ポテンザ』にマグネシウムホイール&カーボンセラミック系のブレーキディスクという組み合わせを採用。もちろんこれはレース車両に採用されているブレーキングシステムを受け継ぐもので、従来のブレーキに比べて熱伝導率は4倍も高く、最大制動力は25%向上しているという。
またステアリングホイールに取り付けられたドライビングモード切り替えセレクターからしてやる気満々で「STO」、「トロフェオ」、「ピオッジア」となっているのもウラカン STOならでは。わかりやすく言えばこれらは「スポーツ」、「レース」、「ウエット」の3段階で、こんなところもサーキット由来な気分を味わえるのだ。
まずはドライブモードをSTOにしてピットロードからコースイン。素人でもまず感じたのはボディの軽さ。ステアリングフィーリングからもアクセルフィーリングからもそれを真っ先に感じられる。そしてブレーキもタイヤも(タイヤに関しては後述)まだ温めきっていないはずなのに危なげなくコーナリングをこなしていくではないか! コレはきっとカノジョを連れてサーキットに来ても格好つけられる1台に違いないと確信。
周回を重ね、少し慣れてきたところで最終コーナーの立ち上がりからアクセルを踏み込んでみる。2速から3速で引っ張りあっという間に100㎞/hを越し、4速、5速……。素人ながら270㎞/hまでスピードを出すことに成功。もちろん第1コーナーは、その強烈なブレーキングシステムにより安全に曲がることができた。ココまでの限界走行は一般道ではする機会もないのだが、コレだけのスペックをもつクルマなら絶対な安心感と優越感をもってドライブできると思った次第。
なぜ、亜久里氏がランボルギーニを試乗するのかというと、このたびのランボルギーニ ウラカン STOに採用されたタイヤが「ブリヂストン ポテンザ」。ブリヂストンタイヤがランボルギーニのスーパーカーに採用されるというビッグニュースに、ブリヂストンタイヤを知り尽くす亜久里氏もテストドライブを、となったのだ。
「一般道だけでは物足りないかも」(笑)
──“速く走ることがたいへんじゃない”って、おもしろい表現ですね。
亜久里氏 うん、サーキットを走るって、けっこうたいへんなのよ、クルマをコントロールしながら、時に修正しながら走るのって。でも、このクルマは性能が本当に良いからタイヤもエンジンもそうなんだけど、バランスが良いんだよね。
──亜久里さんの言う、乗り心地の良さとは?
亜久里氏 硬くてゴツゴツした足まわりでコーナリングしていくのではなく、ちゃんと足も動いていて路面状況もキレイに拾いながら、タイヤからのインフォメーションもしっかりクルマが拾ってドライバーに伝えながら走ってくれる感じって言うのかな。教科書のお手本のような乗り心地なわけ。
──バランスの良さはそれほど重要なんですか?
亜久里氏 実はココが本当に凄い!という部分があるのかもしれないけど、それすらもバランスの良さで消えちゃってるんだよね。クローズアップするところがないの。
亜久里氏 きっと、物足りないんじゃない(笑)。ずっとアイドリングして走っているみたいになんじゃないかな。能力を出し切れないはずだから。だってストレートで280km/h出して、そこからブレ-キングして2速まで落としてもまったくクルマはブレないし流れなかったでしょ。
──LEONは“モテる”をテーマにしています。このクルマ、亜久里さんから見て、どんなところがモテると思いますか?
亜久里氏 もうね、サーキットを走るしかないかもね(笑)。カノジョとか奥さんを連れてサーキットに来て、走る姿を見せる。あ、でも、凄さがわからないかも。だって危なげなくポテンシャル高く走れちゃうから、誰が運転してもそこそこ速く走れちゃうんで(笑)。
──ランボルギーニと亜久里さんと言えば、F1のドライバー時代に3位表彰台を獲得したこともありますが、ブランドイメージってどうですか?
亜久里氏 はっきり言って良くなかったの(笑)。1990年だったっけかな、イタリアの本社工場に自分のクルマを受け取りに行ったことがあって。ところがギヤは入らないしテールランプは雨漏りするしで、驚いて工場に戻ったの。このクルマ、おかしいよって。そうしたら「ランボルギーニはこういうもんだ」って逆に怒られてね(笑)。だから今回の試乗のお話をいただいて実際に乗ってみて、あまりの違いに驚いたよ。
亜久里氏 クルマとのバランスが良いからという前提でお話をすると、温まっているのかいないのかわからない段階でも、安心してドライブできるんだよね。普通は、温まってからじゃないとタイヤは機能し始めないから。それが、200km/hでコーナリングしても、低速でピットロードを走っても、乗り心地の良さを両立させるタイヤって凄いと思うんだよね。
本来はレースで勝つためにタイヤを開発するわけだから、低速域、ましてや公道での使用なんて考える必要がないわけで。それに、転がり抵抗を感じないんだよね。それでいてグリップもする。コレって大事なことで、燃費だって良くなるし、スピードも出やすいし、加速もしやすいわけだから。もちろん安全にも繋がるしね。このクルマにこのタイヤって開発をされたタイヤをはくって、すべての面でクルマのバランスが良くなることなんだよね。
『ランボルギーニ ウラカン STO』
全長×全幅×全高:4549×1945×1220㎜ 車重:1339kg
エンジン:5.2リッター V型10気筒DOHCガソリン
最高出力:640ps/8000rpm 最大トルク:565Nm/6500rpm
トランスミッション:7DCT 駆動方式:RWD
タイヤ:(フロント)245/30R20(リア)305/30R20ともにブリヂストン ポテンザ
価格:4175万円~/ランボルギーニ(ランボルギーニ カスタマーセンター)
鈴木亜久里(すずき あぐり)
1960年生まれの元レーシングドライバー。日本人としてふたりめのF1フル参戦を果たし、日本人初の表彰台を獲得。現在はARTA(AUTOBACS RACING TEAM AGURI)の総監督を務める。
◾️ お問い合わせ
ランボルギーニ カスタマーセンター 0120-988-889