
DBシリーズとは別物のキャラクター
その後もアストンは、主力モデルのDBシリーズにハイパフォーマンス・バージョンを追加するとき、好んでヴァンテージの名を用いた。

そんなヴァンテージの最新モデルが先ごろデビューした。

化粧っ気が薄く、無骨ささえ感じられるデザイン
長いノーズの後ろにコンパクトなキャビンを設けたプロポーションはハイパフォーマンスカーとして古典的なものといっていい。しかし、DB11以降のアストンマーティンは、そのシンプルでエレガントなボディラインにどこか未来的な要素を盛り込んでいる。これこそアストンの最新デザイン言語であって、この同じ言語から紡ぎ出されたDB11とヴァンテージが共通のイメージを醸し出していることはある意味で当然といえる。

外観上の違いは基本的なレイアウトだけでなく、そのディテールにも表れている。

いっぽうのヴァンテージは化粧っ気が薄く、ある意味で無骨ささえ感じられる。デザイナーのナイジェル・ブルックは“consequent”という言葉を用いてヴァンテージのデザインコンセプトを説明してくれたが、「〜の結果として生じる」を意味するその言葉どおり、デザインのためのデザインではなく、何らかの性能を実現するために生まれた形状で構成されているのがヴァンテージの特徴。こうした機能主義が、ヴァンテージにある種の凄みを与えているともいえる。

スポーツカーを操る喜びに満ちたハンドリング
こうしたハンドリング面での正確さと鋭いレスポンスのおかげで、ハードコーナリングでテールが滑り始めてもカウンターステアで切り抜けるのは容易。まさしく、スポーツカーを操る喜びに満ちたハンドリングと評価できる。

サーキットでこれだけの高性能ぶりを発揮しながら、一般道や高速道でも快適で扱いやすい一面を見せてくれたことは驚きでもあった。とりわけハイスピードクルージングでの安定した直進性は見事で、タイヤの発する騒音(ロードノイズ)が多少大きめなことに目をつぶれば長距離ドライブも難なくこなせるはず。つまり、新型ヴァンテージはサーキット専用というよりも、もうちょっと幅と奥行きをもつスポーツカーなのである。

そういえばVantageには「(攻撃などに有利な)ポジション」という意味もあるそうだ。