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2018.07.14

メルセデスの新型Gクラスに試乗! 伝統と革新はどう融合したのか?

一見すると旧モデルと見まがうようなルックスで登場した話題の新型Gクラス。ついにフルモデルチェンジを敢行したメルセデスは、超人気の歴史的名車をどう進化させたのか?

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取材・文/小川フミオ

G63は縦バーをもったパナメリカーナグリルと大型エアダムを持つ
G63は縦バーをもったパナメリカーナグリルと大型エアダムをもつ
ヨンクの王者といえば、メルセデス・ベンツGクラスにとどめをさすだろう。パワフルなエンジン、高いオフロード性能、むかしのライカカメラに通じるような堅牢性、そして意外に扱いやすいボディサイズ。街場で女性を含めて高い人気を誇ってきたのは故あることなのだ。

これまでも何度かモデルチェンジがささやかれつつ、39年間作られてきたGクラスが、2018年ついにフルモデルチェンジした。

最大の眼目は、オンロードとオフロードともに性能アップしつつ、おもにデザイン面だがアイコン的な要素は残すというものだったと説明される。
歴史あるカルカッソンヌの城壁都市が試乗会のベースだった
歴史あるカルカッソンヌの城壁都市が試乗会のベースだった
セパレート型のラダーフレームシャシーは従来から継続。ねじれ剛性は50パーセントも上げている。リアの5リンクリジッド式サスペンションも継続。ただしフロントはよりよい操縦性のためダブルウィッシュボーン式の独立懸架に変わった。

ドライブトレーンでも“Gクラス的”なところはしっかり残している。前と後ろと中央に設けられたディファレンシャルギアのロック機構だ。荒れ地走行にとって必要不可欠な機構、とメルセデス・ベンツでは説明する。

四角いボディスタイルも継続で、丸型ヘッドランプ、フェンダーに搭載したウィンカー、プッシュボタン式ドアオウプナー、外型に飛び出したドアヒンジ、外付けスペアタイヤなども“アイコン”として残された。
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従来の前後のトルク配分は50対50だったのが新型は40対60となった
従来の前後のトルク配分は50対50だったのが新型は40対60となった
いっぽうで、インテリアはかなりモダナイズされている。「今回のモデルチェンジの眼目のひとつがインフォテイメントシステムや運転支援支援システムのアップデート化」と開発者が語るとおり、Sクラスなどと共通する大型TFT液晶モニターが目をひく。

まず発表されたのが、メルセデス・ベンツG550と、メルセデスAMGのG63だ。ともに3982ccのV型8気筒エンジン搭載。

G550は310kW(422ps)の最高出力と610Nm の最大トルクを発生する。いっぽうG63はそれぞれ430kW(585ps)、850Nmとなっている。
大型液晶パネルとタービン型のエアベントなどはセダンと共通だが、3つのディフロックスイッチは変わらないGクラスならではのシンボル
大型液晶パネルとタービン型のエアベントなどはセダンと共通だが、3つのディフロックスイッチは変わらないGクラスならではのシンボル
G550のお披露目は2018年1月のデトロイト。G63は3月のジュネーブだったが、4月に2台の試乗会が南仏ラングドック=ルシヨン地方で開催された。

そもそもGクラスはメルセデス・ベンツのなかでも特別な存在。オーストリア・グラーツにある専用のラインで作られ、近くの山を利用したテストコースで開発されてきた。

今回南仏を試乗会の舞台に選んだのは、良好な天候だけが理由ではない。シャトー・ド・ラストゥールというワイナリーがあり、敷地内にダカールラリーを模したというオフロードコースが設けられているからだ。

ラリーの練習や、4WD車の走行テストでも使われているそうで、Gクラスも例外ではないとのこと。道の勾配は大きいうえに、岩場や砂利や泥など多くの条件を備えている。グラーツからここへ車両を運んでくることもあるとか。
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ステアリングホイールのスポーク部分にインフォテイメントや運転支援システムのコントローラーがインストールされている
ステアリングホイールのスポーク部分にインフォテイメントや運転支援システムのコントローラーがインストールされている
実際に乗ってみると、新型Gクラスはたしかに無敵というかんじだった。人間ではまず無理だろうという急勾配の上りでは、ボタンのワンプッシュでエンゲージするローレンジと、3つのディフロックが大いに活躍する。

G63も(ぎりぎりのところでG550にはかなわないとはいえ)信じられないぐらいのパフォーマンスを見せてくれた。

こちらのクルマには「トレイル」「サンド」「ロック」という路面に応じて選べるプリセットのオフロードドライビングプログラムがあり、いい仕事をしてくれる。
小柄なひとはキャビンに上がるのがやや大変かもしれないが、いちど腰を落ち着けたらじつに快適
小柄な人はキャビンに上がるのがやや大変かもしれないが、いちど腰を落ち着けたら実に快適
これにより、サスペンションの設定やステアリングの重さ、アクセルペダルの踏み込みに対する反応がモードによって変わる。

道なき道を進むというより、中東のように砂漠と一般道の境目がはっきりしないところでより効果を発揮してくれるだろう。

オフロードコースを出ると、細い田舎道と国道を混ぜた試乗コースが用意されていた。ここでは快適な乗り心地に、オフロードとは別の意味で驚かされた。

脚まわりの動きはしなやかで、従来のようにボディとシャシーが別べつに動くような本格的4WDの動きは感じられない。まるで高級セダンのような気分で乗っていられるのだ。

ステアリングホイールへの反応は速いし、アクセルペダルも軽めのうえ細かい調整が可能。細い道を飛ばす時は路肩ぎりぎりまで寄せられるし、高速ではロケットのようにぶっとんでいける。
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トレッドが拡大したりして室内はレッグルーム、ショルダールーム、エルボールームなどが拡大している
トレッドが拡大したりして室内はレッグルーム、ショルダールーム、エルボールームなどが拡大している
室内は静粛性が高くなっているのも、大きな特長だ。ウィンドシールドはかなり平面に近いのだが、空力的付加物のおかげで風の抵抗は小さく、かつ各所の遮音材が効いている。

アダプティブクルーズコントロールを使いながら高速で走っていると、Gクラスに乗っていることがにわかに信じられない気分である。
アプローチアングル、デパーチャーアングルともに1度増えるいっぽう、横斜度は7度も増え、渡河能力は水深が従来より100ミリも深くなった
アプローチアングル、デパーチャーアングルともに1度増えるいっぽう、横斜度は7度も増え、渡河能力は水深が従来より100ミリも深くなった
車体色や内装色のバリエーションは豊富だ。ホワイトもいいが、ブラックもいいし、意外にレッドも新鮮だ、などと現場ではオーナー気分で夢想を楽しんだ。

39年ぶりに変身したGクラス。クロスカントリー型4WDというカテゴリーにとどまらず、セダンのように汎用性の高い、超がつくほど強力な魅力をもった存在になった。
日本でもはやくも発売開始。価格は「G550」が1562万円、メルセデスAMGの「G63」が2035万円である。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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