• TOP
  • CARS
  • フォルクスワーゲンが自動車メーカーではなくなる? 自動運転技術がもたらす未来とは?

2017.12.31

フォルクスワーゲンが自動車メーカーではなくなる? 自動運転技術がもたらす未来とは?

2017年11月14日から日本で開催された政府プロジェクト「SIP-adus(戦略的イノベーション創造プログラム・自動走行システム)2017」のゲストスピーカーとして来日したフォルクスワーゲン・グループ自動運転研究部門責任者のヘルゲ・ノイナー博士に、「フォルクスワーゲンが考える自動運転」について話を聞きました。

CREDIT :

文/ハラアキラ

フォルクスワーゲン・グループ自動運転研究部門責任者のヘルゲ・ノイナー博士
フォルクスワーゲン・グループ自動運転研究部門責任者のヘルゲ・ノイナー博士

自動運転がもたらす4つのベネフィット

ノイナー博士は、2000年初頭から開発が始まったフォルクスワーゲンの自動運転技術について、「事故を減らすことができるという安全性、燃料や電力などを上手に使う効率性、社会インフラとして交通渋滞を緩和する公共性、ユーザーが運転していない時間を自分のために使える快適性、などのベネフィットがある」と説明しました。

「自動運転の段階はレベル0〜5まであり、今日、導入しているのは、クルマは常に人が車両のシステムを監視する必要があるレベル2。新型アウディA8が搭載するレベル3になると、自動運転中の運転操作はクルマに任されます。システムは運転操作の引き継ぎをドライバーに要求できるので、そのボーダーラインをはっきりさせることが必要です。マン・マシン・インターフェイスという観点から、インジケーターの色や音響が有効なことが、2015年ごろからのテストドライブで分かりました」
レベル3の自動運転技術を搭載したアウディ A8
レベル3の自動運転技術を搭載したアウディ A8
ちなみに、フランクフルトモーターショー2017で披露した完全自動運転車「Sedric(セドリック)」は、ドライバー不要のレベル5の走行を実現しています。エクステリアやインテリアはこれまでのクルマの概念とはまったく異なり、ハンドルもありません。

「セドリックは今までとは異なるビジネスモデルとして開発されました。クルマは消費者が買う、所有するというものから、タクシーのように呼び出して人やもの輸送する、共有モビリティサービスという考え方です。

自動運転になっても、1台に一人のドライバーというコンセプトでは、交通の絶対量を下げて渋滞を減らすという状況は変わりません。セドリックは小型ですが、そのファミリーにはもっと大型で、乗り合いバスのようなものもあります。この考え方は、既存の各自動車メーカーが注視しています」
PAGE 2
フランクフルトモーターショー2017で発表された完全自動運転車「Sedric(セドリック)」
フランクフルトモーターショー2017で発表された完全自動運転車「Sedric(セドリック)」

凱旋門のランナバウトで熟練ドライバーより上手な運転ができる

では、セドリックで提示した共有モビリティサービスが実現する時期はいつ頃なのでしょうか?

「こうした段階に、ステップ・バイ・ステップでいくのか、革新的に一足飛びにいくのか。カスタマーや技術的課題、世界の状況など複雑な要件があり、どちらが正しいというのではなく、並行して進むのだと考えています」

完全自動運転の技術レベルについては、「パリの凱旋門のランナバウトは、12本もの道路が流入する複雑な場所ですが、こうした場所でも熟練ドライバーより上手な運転ができるシステムです。それ以下なら市場に絶対出しません。数百万キロの走行データやシミュレーションによって、人よりもベターか、それが実現可能かを検証しています」と、ノイナー博士は言い切りました。
セドリックの車内には運転席が存在しない
セドリックの車内には運転席が存在しない
フォルクスワーゲンには、2020年にレベル4を搭載した航続距離600kmのEVを、現行のゴルフ並みの価格で販売するという計画があります。このプロジェクトについても、ノイナー博士は自信に満ちた表情で語ってくれました。

「私は商品の責任者ではないが、約束したものは必ず実現します。Eモビリティは弊社の全社的戦略です。EVに自動運転技術を組み合わせるのは当然です。開発コストについては、規模というフォルクスワーゲン・グループの強みが解決するでしょうし、IT系やサプライヤーなどと共同でスタートアップのソリューションを見つけ、コストは低くしたいと考えています」
PAGE 3
フォルクスワーゲンが2020年にデビューさせる予定のEV「I.D.」
フォルクスワーゲンが2020年にデビューさせる予定のEV「I.D.」

自動運転社会における各ブランドの差別化について

自動運転社会での、フォルクスワーゲン・グループにおける各ブランドの差別化についてはどうなのでしょうか。

「当初の自動運転のソリューションは、限定した地域のみに出す予定です。そのため、所有型とモビリティサービス型が混在します。ブランドにはそれぞれのDNAが引き継がれています。

例えばアウディはプレミアムブランドで、渋滞などでイライラしない快適なシステムを搭載します。ポルシェは素晴らしい加速性能をもっています。フォルクスワーゲン・グループ全体で基本の技術コンポーネントを適用しますが、それぞれのブランドに必要なものを再定義する必要があります。
「I.D.」の派生モデルとして上海モーターショー2017でお披露目されたSUVの「I.D.Crozz」
「I.D.」の派生モデルとして上海モーターショー2017でお披露目されたSUVの「I.D.Crozz」
つまり、今までの性能や馬力を重視するという考え方から、車内でどんな体験ができるか、どんな快適性が提供されるのか、というようにクルマに対する見方は変わってくるはずです」

自動運転時代の到来について、「フォルクスワーゲンは自動運転のトレンドを掴んでおり、改革を起こそうと思っています。弊社はクルマの製造業者から、モビリティサービスの会社への変革を目指しているのです」と語るノイナー博士。他のメーカーも含めて、自動車業界はどう進化していくのか。ますます興味は尽きないところでしょう。

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        フォルクスワーゲンが自動車メーカーではなくなる? 自動運転技術がもたらす未来とは? | 自動車 | LEON レオン オフィシャルWebサイト