
いつでもエレガントかつ快適であること、それがメルセデスのカブリオレ
2017年6月にスイスとイタリアとフランスの国境あたりを舞台に、新型Eクラス・カブリオレの試乗会が開催された。
ジュネーブ市街を出発して、モンブランなど冬はスキーリゾートと知られる一帯での試乗。高地のさわやかな風がじつに気持ちよいドライブだ。

フルオープンというとスポーツカーを連想してしまうけれど、じつはセダンをベースにした車両は欧米では戦前から主流だ。
太陽光線を欲しがったドイツのメーカーであるだけに、メルセデスはカブリオレを得意としてきた。スタイルへの審美観と、技術面での豊富な経験は新型Eクラス・カブリオレでも生きている。
メルセデスならではと思わせるのは、まずスタイル。トップを上げたときも下げたときもエレガントな印象が強い。

カブリオレはいわば家。何層にもパッドの入った耐候性と遮音性も高い幌を備える。リアウィンドウが熱線入りガラスという場合も多い。
そのぶあつい幌をもこもことさせずに薄く、美しく仕上げるのに心を砕くのがメルセデスだ。Eクラス・カブリオレのまるでクーペのようにきれいなルーフラインを描く幌は、手がかかっている“いいもの”の証明といえる。
もちろんそれだけではない。新型はぐんと性能がアップしている。ひとつはシャシーが専用になったこと。従来はCクラスのものを使っていたが、今回はEクラス・クーペと共用だ。
ボディはひとまわり大きくなった。ホイールベースも伸びたことで「後席の居住性がアップしました」とメルセデス・ベンツの技術者が語ってくれた。
さらに力のあるエンジンや充実した先進的安全装備も、最新のラインナップに負けずとも劣らない。そのことは走るとすぐわかった。
優雅でしなやかにしつけられた新型の走りに感嘆
ぼくが乗ったのは(おそらく日本に導入されるのと同じ)E400 4MATICとE300だ。前者は245kW(333ps)の3リッター6気筒にフルタイム4WDシステムの組み合わせ。E300は180kW(245ps)の2リッター気筒を搭載し、後輪を駆動する。
最初のE400 4MATICにはおどろいた。非のうちどころがないクルマだ。オプションのエアボディコントロールというフルエアサスペンションシステムを組み込んでいたせいもあり、しなやかで、路面の凹凸による揺れはしっかり抑えた乗り心地だ。

走ったのが冬はスキーを楽しむ山岳地帯だということは触れたとおりで、山間を縫う道は狭くて曲がりくねっている。そこを走り抜けるときの車体の動きのよさには、あらためて感心した。
ステアリングホイールはことさらシャープさが期待されているわけではないが、しかし、切りこんだ感覚と車体の反応とのみごとなシンクロぶり。
コーナリングは安定した姿勢で行われ、ステアリングホイールを握っているドライバーにはクルマの状態がまさに“手にとるように”わかる。

ところが実際はこんなに安心してコーナリングが出来るクルマはめったにない。Eクラス・カブリオレのみしりともいわない剛性感の高い車体と、よくしつけられたサスペンションシステムとが、みごとにタッグを組んでいる。
エンジンももちろん走りのよさに大きく貢献している。E400の3リッターV6ユニットは480Nmという大トルクを1600rpmという低い回転域から発生する。
それだけでも十分な走りが期待できるが、さらに9段オートマチック変速機が手助けしている。走行パターンなどを記憶しつつ的確な演算によって走行状況に応じて最適なギアを選ぶのだ。

ゆえに180kW(245ps)の2リッター搭載のE300でも十分な力を感じさせる。スタートから加速を続けていくと途中でややトルクが薄くなるところに気づくが、たとえば東京の市街地で使うのに不満をおぼえることはなさそうだ。
最新技術でカバーされたカブリオレにもはや死角はない?
以前は風の巻き込みや気温など、人間が着るもので調整しなくてはならなかったカブリオレ。最新のEクラス・カブリオレの快適性はセダンなみに上がっている。
そもそもウィンドシールドが前席乗員の頭上まで伸びていて風の巻き込みが少ない。加えて後席背後に電動で出るウィンドストップなる風巻き込み防止のスクリーンも効果的だ。
ウィンドシールド上端にはエアキャップ。センターコンソールのスイッチで作動するウィンドストップなる風の巻き込み防止用のデフレクターだ。
寒いときは前席乗員の首もとに温風を吹き出すエアスカーフも。冷涼な気候の時期が多い北欧で発達した、そもそも馬車の形式だっただけに、工夫が多いのだ。

インテリアのクオリティ感は高く、レザーとウッドとクロームがふんだんに使われていて、オーナーのプライドをくすぐること間違いなし。
ダッシュボードのウッド(そうでない仕様もある)は表面に微妙なカーブがつけられているのも、加工技術を思えばただものでない。Eクラスだけにぜいたくな雰囲気がしっかり味わえる。
さきに書いたように、Eクラス・カブリオレは幌をあげたまま洒落たクーペとして乗ってもサマになる。日本では実際、ほとんどのカブリオレ・オーナーが開けたのは買った直後の1回だけとか。それでは少しもったいないので、彼女をせっせと誘って、一緒に楽しもうではありませんか。
従来型より全長で123ミリ、全幅で74ミリ拡大し(欧州値)
ホイーベースが従来より113ミリ伸び後席空間が広がった
トップを上げたときのプロポーションも考え抜かれていて美しい
万が一の横転時には後席の背後から瞬時にプロクション用のロールオーバーバーが飛び出す仕組み
後席のレッグルームは従来よりプラス100ミリ拡大されたという
平均的なドライバーは20年所有したら5000回幌の開け閉めをするそうだが、メルセデスでは2万回開閉する耐久試験を実施したそうだ
小ぶりで径が太めでフラットボトムのスポーティなステアリングホイール
この仕様はカーボンファイバー調のデコラティブパネルに漆のようなグロスブラックのコンソールが美しいマッチング
ドライブモードで経済性中心からエンジン回転を上のほうに保つダイナミックまで好みの特性を選べる
アンビエントライトとメルセデスが呼ぶ室内のアクセント照明は好みで色が変えられる
ダッシュボードに並んだエアアウトレット一つとっても細工が細かく上質感がある
TFT液晶モニターでは幌の開け閉めなどさまざまな情報を得ることが出来る
メルセデスのデザイン言語「センシュアルピュリティ」にのっとった張りのある面によるスタイリング
トップは開けるのも閉めるのも約20秒で時速50キロまでなら走行中にも行える
リアシートにはトランクスルー機構もありゴルフなどにも使える
ヘッドレストの下にエアスカーフの吹き出し口
カーボン調の内装には赤のアンビエントライトが雰囲気に合っている
欧州でもホワイトの外板色がスポーティと人気とのこと
トップを上げると385リッターとかなり大きな容量を誇るラゲッジルーム
E400 4MATICは後輪に67パーセントのトルクが配分される
80個のLEDを一つずつコントロールするアダプティブ機能を備えたマルチビームヘッドランプ
センサーとカメラのネットワークを用い乗り心地から先進的安全装備の数かず、さらに半自動運転までを実現している
後席のためのエアコンの吹き出し口も上質感がある
シートのカタチをしたコントローラーはメルセデスが特許をもっているとか(写真の車両はオプションのブルメスター・ハイファイシステム装備)
ジュネーブ郊外で試乗がスタートした
大型TFT液晶モニターにはナビゲーションに加えさまざまな情報をWiFi経由で取得できる
ウッドパネルはふくらみが美しい
マジックビジョンコントロールという新機構のワイパーはウォッシャー吹き出し口が内藏されていて下に向かって噴射されることで乗員にかからないよう配慮されている
太陽光線の下では66度Cまで上がる熱を55度Cていどで抑える熱反射機能も備えたレザーシート採用
ウッドとレザーの効果を最大限いかしたクラシックな雰囲気の仕様もかなり好ましい
従来型より全長で123ミリ、全幅で74ミリ拡大し(欧州値)
ホイーベースが従来より113ミリ伸び後席空間が広がった
トップを上げたときのプロポーションも考え抜かれていて美しい
万が一の横転時には後席の背後から瞬時にプロクション用のロールオーバーバーが飛び出す仕組み
後席のレッグルームは従来よりプラス100ミリ拡大されたという
平均的なドライバーは20年所有したら5000回幌の開け閉めをするそうだが、メルセデスでは2万回開閉する耐久試験を実施したそうだ
小ぶりで径が太めでフラットボトムのスポーティなステアリングホイール
この仕様はカーボンファイバー調のデコラティブパネルに漆のようなグロスブラックのコンソールが美しいマッチング
ドライブモードで経済性中心からエンジン回転を上のほうに保つダイナミックまで好みの特性を選べる
アンビエントライトとメルセデスが呼ぶ室内のアクセント照明は好みで色が変えられる
ダッシュボードに並んだエアアウトレット一つとっても細工が細かく上質感がある
TFT液晶モニターでは幌の開け閉めなどさまざまな情報を得ることが出来る
メルセデスのデザイン言語「センシュアルピュリティ」にのっとった張りのある面によるスタイリング
トップは開けるのも閉めるのも約20秒で時速50キロまでなら走行中にも行える
リアシートにはトランクスルー機構もありゴルフなどにも使える
ヘッドレストの下にエアスカーフの吹き出し口
カーボン調の内装には赤のアンビエントライトが雰囲気に合っている
欧州でもホワイトの外板色がスポーティと人気とのこと
トップを上げると385リッターとかなり大きな容量を誇るラゲッジルーム
E400 4MATICは後輪に67パーセントのトルクが配分される
80個のLEDを一つずつコントロールするアダプティブ機能を備えたマルチビームヘッドランプ
センサーとカメラのネットワークを用い乗り心地から先進的安全装備の数かず、さらに半自動運転までを実現している
後席のためのエアコンの吹き出し口も上質感がある
シートのカタチをしたコントローラーはメルセデスが特許をもっているとか(写真の車両はオプションのブルメスター・ハイファイシステム装備)
ジュネーブ郊外で試乗がスタートした
大型TFT液晶モニターにはナビゲーションに加えさまざまな情報をWiFi経由で取得できる
ウッドパネルはふくらみが美しい
マジックビジョンコントロールという新機構のワイパーはウォッシャー吹き出し口が内藏されていて下に向かって噴射されることで乗員にかからないよう配慮されている
太陽光線の下では66度Cまで上がる熱を55度Cていどで抑える熱反射機能も備えたレザーシート採用
ウッドとレザーの効果を最大限いかしたクラシックな雰囲気の仕様もかなり好ましい
ライフスタイルジャーナリスト。慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。