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2020.10.11

伝説の自動車評論家はクルマをどう選んできたのか?

クルマ選びのこだわりポイントは人それぞれです。モータージャーナリストとして、数々の名車に乗ってきたジャーナリスト岡崎宏司氏ですが、そのクルマ選びは意外にもシンプルな基準がありました。

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第144回

僕の愛車選び   

レクサスLS400 イラスト/溝呂木 陽
昔から、僕はコンパクトなクルマが好きだった。なので、僕の愛車歴のほとんどはコンパクトで占められる。

かといって、大きなクルマが嫌いかというと、決してそうではない。「アメリカン・ドリーム」をそのまま形にしたような、巨大で華やかな50~60年代のアメリカ車には憧れた。

高いテールフィンの2ドア・ハードトップ。ボディカラーもアイボリーとサーモンピンクの2トーンというド派手なモデルが、僕の愛車歴に名を連ねている。1957年型デソート・ファイアスイープだ。

今も、コルベットは当然のこと、アメリカンSUVもピックアップも大好き。

SUVなら、フォード・エクスプローラー、リンカーン・ナビゲーター、キャデラック・エスカレード辺り。ピックアップ・トラックなら、ダブルキャブのラム1500やフォード150辺りがいい。もちろん、エンジンはV8だ。

僕がもし、カリフォルニアや、アリゾナや、テキサス辺りで暮らしていたら、こうしたモデルを愛車選びのリストに載せるかどうか、大いに悩むだろう。

今時の流れに逆行。ガスガズラーに乗る罪悪感は強く抱きながらも、「旧き佳きアメリカの象徴」の魅力に押し切られるかもしれない。

基本、コンパクトなクルマが好きなのだが、その一方で、青春時代の憧れだった、巨大でタフで大らかで華やかな「アメリカン」にも未だ強く惹かれる僕がいるということ。

デソートの他にもう1台だけ、、コンパクト好きの僕を血迷わせたクルマがある。デイムラーダブルシックス。手造りに近いような繊細さと美しさをもつ英国製大型サルーンだ。

美しさに加えて、「神秘的な!」とさえいえるような鼓動感をもつV12にも惹かれたのだが、これは、91年モデルと、日本への最終船積み車(93年)の2台を買った。

時に、基本的な考え方とは大きく異なる行動をとってしまう、、まぁ、思い当たる節がおありの方も少なくないはずだ。
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さて、本題に話を進めよう。

僕が初めて4輪を買ったのは1959年。19才の時。記念すべき「人生初の愛車」に選んだのは「ルノー・4CV」だった。

なぜ、ルノー・4CVだったのか、、理由を挙げると、、コンパクトで、オシャレっぽくて、楽しくて、いい感じのブランドで、(もちろん安くて、も理由に入る)、、ざっとこんなところになる。

買ったのは当然中古。目黒通りにあった中古車店で、好きなボディカラーに塗ってくれて、好きなシートカバーも作ってくれるという条件に飛びついた。

ボディカラーはミルクチョコレート系濃淡の2トーン。シートカバーも淡いミルクチョコレート(をイメージした)系無地で頼んだ。

このルノー、今はもうない(あるわけがない)「タクシー上がり再生車」(タクシーでお役ご免になったものを再生したクルマ)だったが、見事に再生。

特別な、他にない、やたら人目を引く、、そんな4 CVに仕上がった。僕は得意になって乗り回した。銀座や赤坂でも人目を引いた。

パワーはなくスピードは望めなかったが、身のこなしは軽快で楽しめた。ここは、当時の日本車とは大きな違いだ。

以後、僕の愛車歴に名を連ねたクルマは、、MG、アルファロメオ、ポルシェ、アウディ、メルセデス、ルノー、BMW、VW、MINI、ボルボ、、等々。

まあ、錚々たる顔ぶれだが、僕が乗ったのは、ほとんどコンパクト系。

メルセデスでいえばSLKであり、BMWであれば4、5代目の3シリーズ・クーペや初代Zであり、アウディでいえば80クアトロ、TT、初代A4アバント、、といったところ。
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アウディは200クアトロも買ったが、これは欧州家族旅行の足に使った流れで、なんとなく買ってしまった。

アルファロメオは昔(1963年)のジュリアスーパーと155、164。164はややオーバーサイズ気味だったが、デザインにも走りにも強く惹かれて、ちょっとルールを超えた。

ルノーは、シュペール・サンク・バカラと2代目クリオ。ボルボはV50。

MINIは先代のクーパーSコンバーチブルとクーパー。VWはいうまでもなく「ゴルフGTI」。GTIは今乗っているPerformanceが3台目だ。

ポルシェは930と964しか僕の車歴には載っていない。もちろん最新の911も好きだし、ほしいのだが、僕のサイズ枠からははみ出している。

そんなことで、少しの例外はあるものの、僕はずっとコンパクトなクルマに乗り続けてきたし、これからもそうするだろう。

そして最近、僕のクルマ選びには外せない、新たな条件が加わった。それは「安全運転支援システム」だ。

僕は16才から運転してきた。仕事柄、多様な経験も積み重ねてきた。とはいえ、後期高齢者であれば、たとえ自覚症状は少なくても、衰えは絶対にあると自ら言い聞かせている。

自分でハッキリ自覚しているいちばんの衰えは夜間視力。50才代半ば辺りまでは、昼と夜の違いを意識させられることはまるでなかった。しかし、今はハッキリ自覚している。

だから、基本的に夜は運転しないようにしている。例外的に夜間運転せざるを得ない場合は、できるだけ知っている道路、できるだけ幅広い道路を選ぶ(狭い裏道は避ける)。

そして、「交通の流れに乗って走る」ことを基本に、車線変更や右左折での周囲の状況確認、徐行や一時停止等々、確実に行うことを常に意識している。

つまり、自分でできることはやっているつもりなのだが、どこまでできているのか、、。
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そこで登場するのが安全運転支援システムだ。すでに話したような愛車選びの条件に、「最新の安全運転支援システムを装備していること」が新たに加わったということ。

となると、基本的に最新のクルマしか選択肢はなくなる。現行モデルでも条件を満たしていないクルマは多い。つまり、選択肢はかなり狭まる。

旧いクルマは好きだし、ほしいクルマもいろいろある。僕も過去長い間、複数台を所有してきた、、が、最近はさすがに、そうしたことは控えている。

もう、おわかりだろう。ほしいクルマは数あれど、現実的に絞り込んでゆく、、コンパクトで、カッコよくて、楽しくて、魅力的なブランドで、最新の安全運転支援システムを装備していて、、となると的は絞られる。

クルマ選びは楽しいもの、、だが、僕の場合、現時点ではけっこう悩ましい状態だ。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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