2026.07.08
まるで現実世界で『グランツーリスモ』⁉ ホンダ「スーパーONE」はファンに溢れたEVだった!
5月22日、オヤジさんにとっては懐かしいシティターボⅡの再来と言われるデザインをまとったコンパクトEV、ホンダ「スーパーONE」が発売された。スポーティな走りと魅力的な価格設定で大きな話題をよんでいる注目のモデルに乗って峠道へと出かけてみた。
- CREDIT :
写真/Honda、藤野太一 編集/森本 泉(Web LEON)
軽乗用EV「N-ONE e:」を魔改造で開発がスタート

ホンダゼロシリーズの開発中止やソニーとの協業によるソニー・ホンダモビリティのアフィーラの発売中止と近頃ホンダにまつわるEVに関してはあまりいい話が聞こえてこない。
しかし、ホンダはEVの開発のすべてをやめてしまったわけではない。ゼロシリーズも小型車の開発は継続するとアナウンスしており、国内においてもすでに軽商用モデルの「N-VAN e:」と軽乗用EVの「N-ONE e:」を発売している。

▲ スーパーONE というネーミングには、これまでの EV の常識や軽自動車規格の枠を超越するスーパーな存在として、ホンダならではの唯一無二(One and Only)の価値を提供するという意味が込められている。
実はその開発過程において、「N-ONE e:」のポテンシャルの高さに気づいたことが、スーパーONEを開発するきっかけだったという。

▲ 前軸にモーターを、そしてシート下にバッテリーを配置することで、重心高が低く、前後重量バランスに優れた設計となっている。
スーパーONEの開発陣はこのように振り返っている。
「N-ONE e:は車体の真ん中の床下に重量のあるバッテリーを積んでいます。すると重心が下がって前後の重量バランスも良くなる。もともとガソリン車のN-ONEのボディ剛性が高かったこともあり、EVにしてハンドリングがすごく良くなった。
走りの方向性を探るためにいろんなテスト車をつくるなかで、N-ONE e:にワイドトレッドスペーサーを組みつけてトレッドを拡げ、Honda eを使ってパワーウェイトレシオを70kW相当にしたモデルがあった。走ってみたらすごく面白くてこれはいけるぞと。それで役員を乗せたら予想通りの反応がかえってきて開発がスタートしました」

▲ オヤジさんたちにとっては懐かしのシティターボⅡ。デビューは1983年。
瓢箪から駒ではないけれど、こうしたフットワークの軽さはホンダ本来の持ち味のはずだ。軽自動車の枠をはみ出してもいいとなれば、ワイドトレッドにし、大きく張り出したブリスターフェンダーを組み込むことができる。
そしてオヤジさんにとっては懐かしいシティターボⅡを彷彿とさせるデザインが生み出された。さらに同じく右ハンドル左側通行の英国でも販売できることになったという。
懐かしの“シティターボII”をオマージュした内外装

▲ シンプルで居心地のよいインテリア。9 インチの Google搭載 Honda CONNECT ディスプレーを標準装備。
ボディサイズは、全長3580mm、全幅1575mm、全高1615mm。ベースの「N-ONE e:」より全長185mm、トレッドは40mm、全幅はオーバーフェンダーにより左右それぞれ50mm、計100mm拡大している。ホイールベースは同寸だ。

▲ カラーリングとサイドサポートの張り出しが特徴的なシティターボⅡのものを彷彿とさせるシート。
インテリアも基本的にN-ONE e:を踏襲するが、フロントシートは専用品で左右の脇腹や腿などのサポート部分が大きく張り出している。これもシティターボIIのシートをオマージュしたものだ。液晶メーターにはスポーティな3連メーターのグラフィックを採用している。

▲ 身長180cmの大人でもゆったりと座ることができる後席。リアシートダイブダウン・チップアップ機構もNシリーズから継承しており積載性も高い。
ホンダの開発拠点があることで知られる埼玉県和光市で試乗車を借り受ける。広報担当者がぜひワインディングも走ってみてくださいと言うので、和光から往復可能な正丸峠を目指すとする。片道約74km、往復約150kmのルートだ。
スーパーONEのカタログ上の一充電走行距離(WLTCモード)は274km。しかし、借り受け時にメーターを確認してみるとバッテリー残量は97%で航続可能距離は130kmと表示されている。それでは峠までは行けても帰ってこれないのでは・・・と少しばかり不安になる。実際のところは以前に運転した人の電費をもとに計算されたもので、走り方によって航続距離は大きく異なる。

▲ フロントマスクに備わる充電口。バッテリーの総電力量29.6kWhとコンパクトゆえ充電時間は6kW 以上の普通充電で約 4.5 時間で満充電に、急速充電は出力が50kW 以上であれば充電量 80%まで約 30 分と待機時間のストレスもない。
外環の和光から関越自動車道経由で圏央鶴ヶ島ICを出て、一般道で峠を目指す。高速道路一般道の割合は半々といったところだ。
ドライブモードは「ECON(イーコン)」「CITY(シティ)」「NORMAL(ノーマル)」「SPORT(スポーツ)」「BOOST(ブースト)」の5種類。デフォルトはノーマルで、イーコンはモーターの出力をおさえつつ、エアコンの効きもセーブすることで電費をおさえてくれる。航続距離130kmなんて表示されていただけにイーコンでセーブして走ろうかと思ったが、この日は外気温が30度を超えていたこともあり、基本的にはノーマルで走行する。イーコンやノーマルモードではパドルシフトを使って回生ブレーキの減速度の調整が可能で、右のパドルをはたくと回生が弱く、左のパドルで回生が強くなる。
高速区間を渋滞なく走り終えると、一般道ではシティモードを試す。これはいわゆるワンペダルモードでアクセルをはなせば完全停止まで行う。したがってシティモードを選ぶとクリープはしないし、他のモードではクリープをする制御となっている。いずれにせよ回生の度合いをシチュエーションや個人の好みに応じて選択できるのはいい。
車内に響くエンジン音、手に伝わるギアチェンジ感

▲ ステアリングの右側に配置されたブーストモードスイッチ。最高出力が通常モードの 47kWから70kWへとアップする。
いよいよ峠道の区間にさしかかるとスポーツモードを試してみる。モードを切りかえるとまるで4気筒エンジンのような音が聞こえてくる。標準装備のBOSEサウンドシステムによって疑似エンジン音を車内に響かせるアクティブサウンドコントロールという機能によりアクセル操作に応じて音が変化する。そしてパドルシフトが疑似トランスミッションとなり7速の有段変速機のようなギアチェンジ感が得られる。
変速時のシフトショックまで再現しているためもはやEVであることを忘れてしまう。これらはハイブリッドのプレリュードやシビックRSにも使われている技術だが、実に楽しい。

▲ 「BOSE プレミアムサウンドシステム」を標準装備。荷室に設置した 13.1リッターの大容量サブウーファーを含む 8 つのスピーカーにより、重低音から高音までバランスの取れた高品質なサウンドを実現。楽しくなる疑似エンジン音も車内に響かせる。
最後は、ステアリングに備わるスイッチでブーストモードを起動する。すると最高出力が通常モードの 47kWから70kWへと高まる。アクセルレスポンス、そして変速スピードは鋭くなり、さらに疑似エンジン音が高まる。愛嬌のあるスタイリングからは想像できないほどのスタビリティをもってコーナーを曲がっていく。あまりに楽しくってもはや笑うしかない。
ドライビングシミュレーターの「グランツーリスモ」でリアルワールドを走行している感覚といえばいいだろうか。すくなくともEVであっても運転する楽しさは存分に味わえるし、シティターボⅡを知るオヤジさんたちの心は間違いなくグリップするはずだ。
念のため峠からの帰路に充電ポイントをいくつか見繕ってはいたけれど、途中で充電することなくそのまま帰途につくことにする。最終的に走行距離は154kmでバッテリー残量は28%、平均電費は8.6km/kWhだった。高速道路や峠道を楽しんでも、実測で200kmくらいは走れそうだ。家庭に充電器があれば、通勤、通学、買い物など日常生活はこれで十分に賄えるだろう。
気になる価格は車両本体価格が339万200円。これに国のCEV補助金が130万円、自治体よって異なるが東京都の場合は90万円、さらに太陽光発電設備の導入によって30万円の補助金まであるという。
補助金はいささかやりすぎな気もしなくはないが、2026年6月上旬の受注台数はホンダの予想を大きく上回る1万1000台に達するという。ホンダが謳っている“日常の移動を刺激的な体験へ”と変えてくれそうな、ルックスもドライビングもファンなEVであることは間違いない。

■ Honda Super-ONE
ボディサイズ/全長3580×全幅1575×全高1615mm
ホイールベース/2520mm
車両車重/1090kg
駆動方式/FWD
モーター/交流同期電動機
バッテリー総電力量/29.6kWh
最高出力/95PS(70kW)
最大トルク/162Nm
一充電走行距離/274km(WLTCモード)
車両価格/339万200円

こちらの記事もオススメです













