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2020.08.15

なぜBMW4シリーズのグリルは巨大化したのか?

2019年のフランクフルト・モーターショーで「コンセプト4」として世界初公開されたBMW新型4シリーズ。このときすでに大きかったグリルのデザインには否定的な意見もあったがBMWはそのまま市販化する道を選んだ。案の定、賛否両論を巻き起こしたデザインに、なぜBMWはこだわったのだろう。

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文/森口将之(モビリティジャーナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
▲発表されるやいなや賛否を巻き起こしたBMW「4シリーズクーペ」(写真:BMW)
今年上半期に発表された新型車の中でも、特にデザインに関する賛否両論が巻き起こった1台がBMW「4シリーズクーペ」だ。1933年以来、このブランドの自動車がフロントマスク中央に掲げてきたキドニー(腎臓)グリルが巨大化したからである。

伏線はあった。最上級セダン「7シリーズ」は昨年のマイナーチェンジで、キドニーグリルの面積を約40%拡大したと、具体的な数字まで出して大きさを誇示していたし、同時に発表した最上級SUVの「X7」は、SUVらしい屈強な印象を際立たせるためにキドニーグリルを縦に伸ばしてきた。
しかし、この2車種はBMWにとってのフラッグシップだ。存在感を強調すべくグリルを大きくするのも、理解できる。ところが4シリーズクーペは、名前が示すとおりクーペであり、低く流れるようなプロポーションを持つにもかかわらず、大きなキドニーグリルを掲げてきた。

新型4シリーズはまず、2019年のフランクフルト・モーターショーでコンセプトカー扱いの「コンセプト4」として世界初公開された。このときすでにグリルは大きかった。

発表予定の新型車に軽めのカスタムを施して、コンセプトカーとしてお披露目する例は多い。事前に公開することで反響を見るためで、その結果デザインが見直される車種もある。しかし、BMWはコンセプト4のデザインに否定的な意見があったにもかかわらず、そのまま市販化した。ただし、批判も予想していたはずで、プレスリリースではドイツらしく理論武装を重ねて自らの正当性を主張している。

過去の名車にあやかった「縦長のキドニーグリル」

記事の執筆にあたり参考にした日本語版プレスリリースは39ページにも及ぶが、そのうち5ページにわたりクーペの歴史を解説している。一昨年の3シリーズの本国発表時の日本語版リリースは29ページで、歴史の項は半ページにも満たなかった。

ここですべてを紹介することはできないが、新型4シリーズのプレスリリースには、過去のいくつもの名車が取り上げられた。
▲「縦長のキドニーグリル」は歴史的モデルに見られるものだと説明される(写真:BMW)
イタリアの公道レース「ミッレミリア」を制した第2次世界大戦前の代表作「328」のクーペ版、イタリアのベルトーネがデザインし、BMWクーペの基本形を確立した「3200CSクーぺ」、欧州ツーリングカー選手権で6度のタイトルを獲得した「3.0CSL」、世界一美しいクーペと言われた初代「6シリーズ」などだ。

記述の中には「縦長のキドニーグリル」という言葉が何度も出てくる。たしかに現在のキドニーグリルは横長で、3.0CSLや初代6シリーズの時代は縦長だった。その頃のクーペのイメージを蘇らせたというのがBMWの主張だ。
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ただし、昔のキドニーグリルはヘッドランプとの間が空いており、グリル自体の幅は狭かった。また、グリルの下端がバンパーの下まで伸びていたのは戦前の車種だけで、戦後は一貫してバンパーの上で完結していた。現行の横長グリルを縦に伸ばした新型4シリーズクーペのそれとは、顔に占めるグリルの比率は大きく異なる。

プレスリリースを読み進めていくと、「表情豊かなフロントビューによって独自のキャラクターを表現した」とある。さらに大型化の理由として、大量の冷却用空気が必要なパワフルなエンジンの存在を挙げている。縦方向のバーを入れた既存のキドニーグリルに対し、メッシュタイプを標準装備とした点も目立つ。

もっとも新型4シリーズクーペのメカニズムは、先代同様3シリーズセダンをベースとしており、2.0リッター直列4気筒のガソリン/ディーゼルと3.0リッター直列6気筒のガソリンが用意されるエンジンラインナップも、欧州仕様の3シリーズセダンと変わらない。

つまり、機能面よりもスポーツ性を高めた車種であることを強調し、明確な差別化を図ろうという考えが、大型グリルの採用に行き着いたと予想できる。フラッグシップである7シリーズやX7とは、拡大の理由が違うことになる。
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「グリルの大型化」は市場が求めた?

筆者は2018年11月、まだ我が国で発売前だった現行型3シリーズのデザインについての記事を書いた際に、同じ説明会で紹介された4シリーズの格上となる「8シリーズ」とオープン2シーター「Z4」のデザインについても触れた。
▲4シリーズとは異なり横長でメッシュが採用されるBMW「Z4」のキドニーグリル(写真:BMW)
どちらもキドニーグリル外側の尖ったポイントが下に移動し、ヘッドランプが斜め上に位置していることが共通しており、スポーツカーについては今後、この造形でいくというのが当時の説明だった。しかし、新型4シリーズクーペにはこの路線は受け継がれなかった。

なぜ、キドニーグリルを大きくしてきたのか。今後も成長が見込まれる中国などアジア市場で、「大きく見えるデザイン」が好まれることが大きく関係しているだろう。

昨年のBMWおよびミニの販売実績を見ると、中国では約72万台を売って前年比13.1%増となり、BMWグループが1994年に中国市場に参入して以来、最高の実績となった。それに対し、アメリカでは1.8%増となる約36万台と微増であり、ヨーロッパでは約108万台で1.5%減となっている。圧倒的な伸びを示している中国市場を重視したクルマ作りを行うのは、当然だろう。

一方、昨年2.0%増となったBMWブランドに限って見ると、8シリーズ、7シリーズ、X7からなるラグジュアリークラスの販売台数が、対前年比66.0%増という驚きの数字を出している。7シリーズとX7のキドニーグリルの拡大は成功だったと言えるのだ。

しかも、昔からBMWに親しんできたがゆえに、日本同様キドニーグリル拡大に賛否両論があると予想するヨーロッパでは、これから企業別平均燃費基準(CAFE)がさらに厳しくなっていく予定で、電動車両の比率を高めていく必要がある。ラグジュアリークラスとスポーツモデルは大型高性能エンジンを積む傾向にあり、燃費の面では不利なので、中国など他の市場の嗜好に合わせたという見方もできる。
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端正なフォルムとの決別

フロントデザインに多くのスペースを割いてしまったが、新型4シリーズクーペのそれ以外の部分にも触れておこう。

ボディサイズは、現行型と比較すると全長は128mm伸びて4768mm、全幅は27mm広がって1852mm、全高は6mm増えて1383mmになっている。ホイールベースも41mm伸びて2851mmになった。
ボディサイドは8シリーズに似ており、ウエッジシェイプとリヤフェンダーの張り出しを強調し、リヤウインドーとトランクリッドの角度を近づけてファストバックに近づけたスタイリングとしている。サイドのラインが水平に近く、トランクがキャビンから独立した、3200CSクーペ由来の端正なフォルムとは決別した。

8シリーズやZ4では、ドアの前に「エアブリーザー」と呼ばれるスリットを設け、そこからせり上がるラインに接する面に複雑な変化をつけることで後輪駆動らしさを強調するというのが、一昨年の説明だった。しかし、新型4シリーズクーペにエアフリーザーはなく、キャラクターラインで表現しており、そこからほぼ水平に強いアクセントを伸ばす方向に変わっている。

リヤについてはL字コンビランプ、リヤバンパー両端に垂直配置されたダクトなど、最近のBMWのフォーマットに沿っている。ナンバープレートは3シリーズ同様、ランプの間に置かれた。
▲インテリアの基本的なデザインは「3シリーズセダン」と同じ(写真:BMW)
インテリアはドアトリムが一新され、前席はスポーツシートが標準装備となり、後席は2人掛けになること以外は、インパネを含めて基本的に3シリーズセダンと共通となっている。

メカニズムについては、先に簡単に触れたように、現在のBMWの方向性に基づいている。こうして見てくると新型4シリーズクーペは、BMWブランドならではの世界観をより多くのユーザーにアピールすべく、大胆なエクステリアを採用してきたのではないだろうか。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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