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2026.02.22

フェラーリ F40とロールスロイス ドーン、思い出のドライブ

フェラーリの創業40周年を記念して制作された超絶スーパーなモデルF40。箱根のワインディングロード試乗で打ちのめされたと語ります。一方、奥様とロールスロイス ドーンで出かけた思い出のドライブ旅行。対局な2台の思い出が今回のストーリーです。

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第276回

「もう1度乗ってみたいクルマ達!」最終回

イラスト 溝呂木 陽 フェラーリ F40 ロールスロイス ドーン

この思い出話、若い頃から現在に至るまで年を追って書いてきたが、迂闊にも、とんでもないミスを犯していた。


数日前、絶対に忘れてはいけないクルマを落としていたことに突然気づいた。


それは、1988年に試乗した「フェラーリ F40」。フェラーリの創業40周年を記念して制作されたスーパーなモデルだが、エンツォ フェラーリが、その生涯の最後に手がけたクルマともされている。


F40の開発テーマは「そのままレースに出られる市販車!」といったものだったとされるが、乗ってすぐ頷けた。「凄まじく熱い!」クルマだった。

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エンジンは2.9ℓ V8 ツインターボ。パワー/トルクは478hp / 58,8kgmを引き出し、トランスミッションは5速MTを積む。


ボディはカーボンケブラー製で、重量は1250kgにとどまる。で、、最高速度は公称324km/h、0~100km/hは3,8秒。凄いパフォーマンスの持ち主だ。


こんな超スーパーなクルマ、、というよりもマシンであれば、テストコースかサーキットで乗りたかったが、雑誌社が連れて行ってくれたのは箱根のワインディングロード。


走り慣れているコースとはいえ、「レーシングマシン⁉」を一般車と混走させるわけだから、否応なくプレッシャーは高まる。


試乗前、海外の雑誌の試乗記にいくつか目を通したが、ほとんどのテスターが「かなりビビっていた!」のは間違いなかった。


ビビっていたいちばんの理由が「強烈なドッカンターボ‼」にあるのもすぐわかった。


なにしろ、当時のフェラーリのドライバーだったゲルハルト ベルガーにさえ、「俺は、雨の日には絶対乗りたくないね!」と公言させたほどの「ドッカンぶり」だったのだから。

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そんなF40を箱根で目の前にした時は、緊張感でドキドキだった。でも同時に、「F40に乗れるんだ‼」といううれしさの方のドキドキも湧き上がってきた。


ステアリングにも、ブレーキにも、パワーアシストはないし、クラッチも重かった。


でも、エンジンはすぐかかったし、クラッチも重かったがスムースに操作でき、難なく発進できた。


まずは慎重に走り、一つひとつの所作とその反応を確かめ、感覚を掴んでいった。


低回転域はトルクが「ほとんどなく!」、走りはかったるい。明らかに「ダル!」」だった。しかし、回転数が一定以上の領域に上がると、F40の走りは一気に豹変した。


サーキットやテストコースなら少しづつ慣れていっただろう。、、が、タイトなコーナーが連続する山岳ワインディングロードで「極端なドッカンターボ」を上手く操るのは極めて困難、、いや無理だった。


コース幅の広いコーナーで、何度か、意を決して「無謀なチャレンジ⁉」を試みてはみたものの、結果はいずれも失敗。

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スピンこそ免れたものの、試乗に与えられた短時間内で、ドッカンターボが引き起こす極端なリアの挙動を克服し、コントロール領域に引き込むことはまったくできなかった。


まぁ、ノソノソ走るだけでも「F40に乗った!」という勲章はもらえる。だが、僕はそうはしたくなかった。だから、踏み込んだ。


その結果、F40の箱根での試乗は、「すっごい‼」「怖い‼」「これは無理‼」といった情けない結果で僕をうちのめした。


もし、1度だけでも「コントロールを決められ」、カウンターステアでコーナーを鮮やかに立ち上がれていたら、、僕は一生ものの、無上の喜びを得られたに違いない。


でも、ガックリはしながらも、ちょっとでも「F40にチャレンジした!」という意味での充足感は得ることができた。


フェラーリ F40の極熱の思い出話が多くなってしまったが、ここからは真反対の静寂なクルマの話に切り替える。

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贅沢なコンバーチブル、「ロールスロイスドーン」の思い出話だ。


僕が買えるわけもないし、たとえ買えたとしても、とても着こなせる器でないことは百も承知。なので、考えたことも想像したこともない。


前にも書いたが、僕がロールスロイス(以下はRR)に初めて乗ったのは1964年。60年以上も前のことだ。世界一周の旅でロンドンに滞在していた時、クルーの本社を訪ね、工場を見せてもらい、試乗もさせてもらった。


ヅダ袋を背負い、世界一周の旅をしていた24歳の若造が、いきなりRR訪問を電話で申し込む、、。今考えると赤面ものもいいところだが、僕はやってしまった。


RRはそんな無礼な若造を丁寧に迎えてくれ、工場見学だけでなく試乗までさせてくれた。しかも、一般道のちょい乗りだけでなく、シルバーストーンサーキットまで走らせてくれたのだ。ほとんど1日仕事に近い。


RRとの出会いはほんとうに暖かく、幸せなものだった。以来、僕は、オーナーにはなれないものの、RRファンであり続けている。

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そんな僕のところに、2019年のある日、日本のRR代理店から突然電話が入った。


「たまには、奥様とご一緒にRRで箱根にでも遊びにいらしたらいかがですか。いつでもご用意します。お勧めはコンバーチブルのドーンですが」、、という内容の電話だった。


僕はちょっと戸惑った。僕一人なら、すぐ「お願いします!」と答えを返す。だが、「奥様とご一緒に、、」となると、当然、家内の答えも聞かなくてはならない。


家内は、実は、、贅沢なクルマ、煌びやかなクルマにはあまり乗りたがらない。嫌いということではないのだが、自分の身の丈から外れたクルマにはあまり乗りたがらないのだ。


、、で、「ありがとうございます。後ほど、改めてお返事させていただきます」と言ってとりあえず電話を切り、早速、家内に電話の内容を伝えた。


家内の反応は予想の通り。「有難いお誘いだけど、わたしは、、ちょっと、、、」と、というのが第一声だった。

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「でも、RRを買って乗ろうというわけじゃないんだし、たまにはいいんじゃない。きっと、楽しい思い出になるよ!」と僕。


家内は迷ってはいたものの、僕の誘いの言葉に、あまり強くは反発しなかった。


、、で、RRドーン、、艶やかなワイン色のコンバーチブルの写真を持ってきて見せたら、「やっぱり恥ずかしいな。、、でも、これに乗って箱根って、たしかにいい思い出になるでしょうね! 行こうか!」となった。


箱根は行きつけのホテルをとった。ちゃんとしたガレージのあるホテルだ。


家内は初めは居心地が良くなさそうだった。でも、時間が経つに連れて、少しづつ口数も多くなり、楽しげな様子になっていった。


オープンにしたのは箱根路に入ってからだが、「ワー、気持ちいい! 今までいろいろなオープンに乗ってきたけど、、これがゴージャスっていうのかな、、」と、すっかりゴキゲンに‼ 


ホテルに着くとすぐ顔馴染みのマネージャーが、「ようこそ! 今日はまたステキなお車ですね‼」と満面の笑顔で出迎えてくれた。

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で、ガレージに行ったのだが、2台区切りのスペースの真ん中に駐めるよう誘導された。


僕は驚いて、「これって、他のお客様に失礼ですし、僕としても照れくさいし、、」というと、、「お気遣いありがとうございます。でも、このクルマに傷でもつけられたら大変なので、これでお願いします」と。


で、翌日はオープンで箱根を走り、美術館に寄ったり、カフェでお茶を飲んだり、芦ノ湖スカイラインを走ったりしたのだが、、家内は終始ゴキゲンだった。


家に帰った後もご機嫌は続いた。なので、試しに(答えはわかっていたが)「RRドーン、気に入ったみたいだけど、買う?」と聞いてみた。もちろん冗談だが、、。


で、家内の答えは、、「ステキなドライブだったわ‼ でも、買いっこないでしょ。たとえ買えても、、。私が気軽に楽しく付き合えるのはコンパクト系、、大きくてもせいぜいCセグメントくらいまでだから、、。わかっているわよね!」とピシャリ!

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当然、この答えは聞く前からわかっていた。なので、スンナリ納得だった。だが、その後の「年に1度くらいなら、こんな楽しみもいいわね!」という言葉は予想外だった。


コンパクトでシンプル系のクルマを好む家内としては「大賛辞」と言ってもいい言葉だ。


当然、ラグジュアリー系のクルマにもあれこれ乗せているが、「また乗ってもいいわ!」といった肯定的な言葉を聞いたのは、確か初めてだったように思う。


多くのクルマにいろいろな形で乗ってきた。もちろん、辛いことも少なからずあったが、それを大きく超えるあれこれを手に入れた。ハッピーな人生だったとつくづく思う。

岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
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