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2025.11.09

往年の名車を振り返る!? レジェンド評論家が今また乗りたいクルマとは?

長きにわたり、第一線の自動車ジャーナリストとして活躍してきた筆者が、自動車遍歴を振り返ります。MGA、デソート ファイアスイープ、ポルシェ 356SCなどなど、往年の名車のインプレッションがずらり。必読です!

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第270回

「もう一度乗ってみたいクルマたち!」/ その1 

イラスト 溝呂木 陽 「もう一度乗ってみたいクルマたち!」その1
19歳で初めてマイカー「自分のくるま」を持って以来、いったい何台くらいのクルマを乗り継いできただろうか。

若い頃のわが家は、いつもクルマ関係の出費で、財布は空に近かった。 、、だが、幸いにも親の家に同居していたため、住居費と食費はかからない。これは大きかった。

とはいえ、基本的にお金に余裕があるわけなどない。だから、ほしくても手がでないクルマは多かった。となれば、目標にするクルマは、自然にコンパクト系が中心になった。
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幸いにも、僕も家内も基本的にコンパクト系が好きだった(これは今に至るまでずっと変わっていない)。なので、限られた金額の中での候補車探しは比較的楽だった。

上記したような経済状況下で手に入れたクルマの中で、「もう1度乗りたい!」と思う最初の1台は「MGA」。

たしか1962年頃手に入れたと思うのだが、年式は1955年。デビュー時のモデルだ。

その時はマイナーチェンジ版のMK IIが出たタイミングだったと思うが、幸いにも、僕はMKⅡには惹かれなかった。オリジナルのMKⅠのデザインが断然好きだった。

走りも使い勝手も、MKⅡの方がずっと向上していたが、それよりも僕はMKⅠのデザインに拘った。

MGAの次は「MGB」に惹かれた。これもオリジナルデザインのモデルが好きだった。買ったのは1963 年型。

ジムカーナに勝てないのは悔しかったが、同時期に生沢徹もMGBに乗っていて、彼ですら勝てなかったので、妙にホッとしたものだ。
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ちなみに、MGBは1985年にオリジナルモデルを買い、徹底的にレストアしたのも、大切な思い出になっている。

ブリティッシュグリーンのボディとイングリッシュホワイトのハードトップのコンビネーションは最高だった。今でも、その写真は、わが家の居間の特等席に飾ってある。

BMC ADO16シリーズのスポーティ版として送り出された「MG1300」も、もう1度乗りたい1台だ。

前にも書いたが、ボディはかなりの額を掛けて僕のオリジナルカラーに塗り替え、中身のコンディションにも可能な限り拘った。ゆえに、走りも乗り心地も上々だった。

濃いめのワインカラーとブリティッシュホワイトの2トーンカラーは大成功。仲間内でも話題になり、街でも多くの目を惹いた。

テールフィンの全盛期、1957年の「デソート ファイアスイープ」も忘れられない。わが家はコンパクト系が好きと書いたが、これは例外で、フルサイズだった。

ピンクの濃淡の2ドアハードトップで、巨大なテールフィンを突き出していた。
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当時の大スター、宝田明さんの所有車だったのだが、宝田さんが手放す時、「岡崎クン、デソート手放すんだけど買わないか。似合うと思うよ!」と。、、僕はビビったけれど、勇気を奮って買った。

基本的に大きなクルマは好みではないものの、史上もっとも華やかな時代のアメリカ車の代表的な一台の魅力には抗えなかった。

僕は得意になって、銀座、赤坂、六本木辺りを流したが、注目度の高さは支払った額に十分見合ったものだった。

しかし、ガソリン代修理代の高さにはついて行ききれなくなり、短期間で手放すことに。悲しかったが、やむをえない。

「ポルシェ 356SC 12V サンルーフ付」、、356の最終モデルだが、これは最高だった。僕のクルマではなく、兄のクルマだが、これだけは特別参加をお許しいただきたい。

最近、356SCの最終モデルに乗る機会があったのだが、60年前のクルマとはとても思えず、改めてその実力のすごさ、素晴らしさを再認識させられた。
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1968年に手に入れた2代目後期モデルの「セドリック スペシャル6」は、僕が買った数少ない国産車の一台だが、忘れられない一台だ。

ピニンファリーナにサポートされたデザインが気に入ったのだが、前期モデルはピニンファリーナ色が少々強く出過ぎていて、馴染めなかった。が、そこを上手く抑えた後期モデルには強く惹かれた。

カタログには白のボディカラーもあったが、気に入らず、日産の試作工場で、僕の好みの、純白に近い白に塗り替えてもらった。

タン系のボディカラーを纏った、「アルファロメオ ジュリアスーパー」も強く思い出に残っている。

1968型だったが、個性的なボディデザインも、色気のあるインテリアも、ツインカムエンジンの見た目も回転感も、しなやかなフットワークも、、みんな気に入った。今乗っても、きっと快感に包まれるだろう。

1972 年の「VWビートル1303S」は、パワフルでも速くもなかった。でも、質感、堅牢さ、信頼性は抜群だった。出場したラリーの多くで、優勝か上位入賞を果たした。
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つまり、悪路走破性とタフさは圧倒的だったということだ。自動車ジャーナリストになってから、「乗っておいて良かった!」と思ったクルマの最上位クラスに入る一台だ。

1980年に買った「三菱ランサーEX 1800 GSRターボ」は、まずはルックスが気に入った。シャープでバランスのいい3ボックススタイルは今でもほしいと思うカッコよさだ。

高速スタビリティに難はあったが、日常的にも、箱根の山を走りにいっても、大いに楽しませてくれた。

1983年の「VW ゴルフ2 GTI」は、FWD車の可能性の高さに確信を持たせてくれたクルマだった。

このクルマに乗るまで、FWDでの高性能車の将来は、とても明るくは考えられなかった。

しかし、なぜか、VW本社に1人で呼ばれ、ゴルフ2 GTIに乗せられて、FWDへの将来性への意識は一気に変わった。

タイトなワインディングロードでの深い舵角で、アクセルをガンガン踏み込んでいってもゴルフ2の前輪は、しっかり路面にトラクションを伝え続けたのだ。
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僕のFWDへの悲観論は、この時を境に、一気に楽観論へと変わり、期待は大きく膨らんだ。そして、その期待は裏切られなかった。

1984年に発売された「シビックCR-X バラードスポーツ」は、運転免許をとった息子へのプレゼントとして買ったが、僕も好きだったし、乗りたかった。

サイズもルックスも気に入っていたし、STDのままでも十分楽しかった。

ところが、仲のいいホンダ栃木研究所のメンバーが、「もっといい感じにしてやるよ!」と言ってチューニングしてくれたCR-Xの走り味/乗り味は文字通り「最高!」だった。

息子にプレゼントしたクルマだが、僕も乗りたくて乗りたくて、、機会があれば乗った。

同じ年に欧州を家族旅行したが、その時の足がアウディ200クアトロ。ミュンヘンからベニスを往復する長い旅だったが、その相棒に200クアトロを選んだのは大正解だった。

カッコよし、走りよし、、アウトバーンはほとんど全開で走ったし、道中には雪の峠もあったが、スイスイ走れるだけではなく、大いに楽しめもした。
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で、、家族みんながすごく気に入り、日本に帰ってすぐ注文を入れた。明るめの紺のボディカラーのモデルだが、これは欧州の旅で使ったクルマと同じ色だ。

僕のアウディ好き、わが家のアウディ好きははこの時から始まり、以後、5台のアウディを乗り継ぐことになった。

残り行数も少なくなったので、今回は「キャディラック ドゥビル(日本名はフリートウッド)」で〆とすることにしよう。

キャディラック ドゥビル(1985年)は、わが家のクルマではない。息子の大学卒業を祝って、LAからサンディエゴ往復の家族旅行で使った記念すべきクルマなので、特別参加をお許しいただきたい。

家族会議で、「アメリカを旅するならアメリカ車がいいんじゃない。一生の記念の旅だし、贅沢だけどキャディラックにしよう!」という結論がスンナリ出た。

そして、キャディラック初のFFモデル、ドゥビルを旅の友に選んだ。
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サイズは従来モデルよりひと回り以上コンパクト化されたが、キャディラックの威厳は損なわれていなかった。室内空間、特に前席のそれはむしろ良くなっていた。

キャディラックでの家族旅行は楽しかったし、快適だったし、贅沢な気分もたっぷり味わえた。大正解だった。

LAではビバリーヒルズ ホテル、サンディエゴではホテル デル コロナードに泊まったが、当然、白のキャディラックとの相性は「バッチリ!」だった。
岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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