そこで、今回は世界各地のカーイベントに自ら足を運び取材を行った本誌編集長の前田とモータージャーナリストの九島氏がそんな魅惑の世界を徹底リポートする。
2015 THE QUAIL MOTOR SPORTS GATHERING
グラスを手にスーパーカーを楽しむ祭典

マニアックな雰囲気も油の臭いもしない3つのヒストリックカーイベント
それはヒストリックカーとの付き合い方や、各国各地で開催されるショー、ラリーイベントのあり方にも影響を与えているように思えてならない。ここではまずアメリカとフランス、ふたつの場所で開催されたヒストリックカーイベントを例にとって、変容するその関わり方を専門誌とは少々違った視点で見てみたい。

なかでもあのザ・ペニンシュラホテルズが運営する『ザ・クエール・モータースポーツ・ギャザリング』は白眉だ。
一人600ドルという高額なチケットながら毎回チケットは発売と同時に瞬時に完売するという人気の秘密は、そこに集まるクルマもさることながら、そのホスピタリティによるところが大きい。なんと会場には世界各地のザ・ペニンシュラホテルズによるフードサービスが供され、白亜の大小のテントの下で美しいクルマを眺めながら、高級シャンパンとホテルクオリティの食事を楽しめるようになっている。

THE QUAIL CAR RALLY [ザ・クエール・カーラリー]
ペニンシュラのカーラリー 2017年に日本を走る!?
ザ・ペニンシュラホテルズグループを率い、ヒストリックカーの世界有数のコレクターでも知られるマイケル・カドゥーリー卿の声掛けによるカーラリー。至極プライベートな会でありながらも、そのラグジュアリーさで群を抜く。現在日本を含む世界での開催も視野にコース選定の段階だそう。カーツーリングのベンチマークになりそうだ。

それはまるで超豪華な仲間たちのツーリングのよう
これはラリーというよりも、同ホテルにゆかりのある友人・知人らが参加する至極プライベートな、言わばツーリングのようなもの。だから参加するクルマに明確な条件はなく、競技色も完全に排し、いわゆるチェックポイントもない。ただやるなら徹底的に楽しもうというのがいかにも本場。
その優雅な世界はやはりクルマを取り巻く文化の違いを感じずにはいられない。例えば前夜祭。禁酒法時代のシカゴをテーマにしたパーティは、男性なら当時のギャングスタイルを意識したスーツ、女性はこれも当時流行したきらびやかなヘアバンドにイブニングドレスを纏い、そこにはクルマを感じさせる要因はひとつもない。

ちなみに2017年にザ・ペニンシュラ東京の開業10周年を記念して日本で開催できないかとの検討がなされているらしい。いつ、どこを走るか、参加資格は、など詳細は未定ながら、開催されたらぜひ同行したいものだ。
CHANTILLY ARTS & ELEGANCE [シャンティイ・アーツ&エレガンス]
ペニンシュラのカーラリー 2017年に日本を走る!?
『ル・マン・クラシック』を主催することでも知られるリシャール・ミルによるシャンティイ城を舞台にしたヒストリックカーイベント。ドレスコードに加えピクニックのスタイルコンテストもあり、「クルマとファッションとライフスタイル」を提唱する新しいスタイルのイベントとして今後が注目される。

むしろ女性が楽しめる優雅でお洒落なイベントへ
ポイントはシャンティイ城の圧倒的な優雅さと、参加者に課せられた「男性はジャケット着用、女性はハットの着用が望ましい」というドレスコードだ。いかにもフランスならではの洒落たドレスコード(ちなみに一般来場者は自由)だが、これはつまり隣接する競馬場でのドレスコードにほかならない。
その結果会場にはクルマに負けず劣らずの美しい装飾を施したハットでお洒落した女性の姿が目についた。会場で数名の女性に声をかけさせていただいたが、皆さんクルマよりも周りの女性たちのファッションに興味津々のご様子で。ちなみにフランス語でクルマは女性名詞ゆえ、前述のカーコレクター曰く「結局男性は美しいものに目がないからね」と。

これら事例を富裕層のお遊びと括るのは簡単だ。けれどもヒストリックカーイベントはマニアのもの、男性だけのもの、油臭いものなどという固定観念を払拭することこそカーカルチャー先進国への第一歩じゃないだろうか。