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2025.05.11

シンプルだけど安っぽくはない。「テスラ モデル3」は万人向けではないけれど素晴らしいEV車だ

日常の足としてプジョー e208を所有する筆者ですが、息子さんが買ったテスラ モデル3に乗って、そのEV車としての素晴らしさに驚いたと言います。デザインもインテリアも走り味/乗り味も、すべてが進化したテスラ モデル3の魅力とは?

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第257回

テスラ モデル3は大きく進化している!

イラスト 溝呂木 陽 テスラ モデル3
息子がトヨタ「MIRAI」から、テスラ モデル3に乗り換えた。いつものことだが、予告はまったくなし。突然、「テスラ モデル3に乗り換えたよ」と電話がかかってきた。

MIRAIは知っての通り、水素と酸素をFCスタックに取り込んで発電。その電気でモーターを駆動するシステムだが、走りは実に気持ちの良いものだ。

静かで、なめらかで、動力性能もいいし、シャシー/ボディの躾もいい。ほんとうに気持ち良く走る。気持ちよく、、の中には、素直で軽快な身のこなしも入る。
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僕も初めてMIRAIに乗った時、強く惹かれたし「ほしい!」とも思った。、、でも、諦めた。理由は、後期高齢者の僕と家内が乗るには、4975×1885×1470mmのボディサイズが大きかったからだ。

そんなMIRAIを手放してテスラ モデル3に乗り換えたのには、なにか大きな理由があったのかと思って聞いたら、「いや特にないよ」、「MIRAIは4年乗ったし、新しいモデル3がけっこういい感じだから、、」との答えが返ってきた。

ほとんどリタイア状態にある僕は、モデル3がマイナーチェンジされたことは知っていたが、それ以上のことは知らなかった。

雑誌やウェブの写真、試乗記事等々を見て、「けっこう良くなったようだな」くらいの意識は持っていた。、、が、前モデルの質感の低さや、乗り味走り味の粗さ等、いい印象はなかったので、大きな期待は持てなかった。

だから、息子からの「テスラ モデル3買ったよ!」との連絡にはけっこう驚いた。

「えっ、モデル3って、そんなに良くなったの⁉」と、思わず、、興奮気味⁉に聞き返してしまった。
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で、息子の答えは、、「うん、そうなんだよ。エクステリアもインテリアもよくなってるし、走り味も乗り味もよくなってる、、」

「近々、見せに行くから乗ってみて。きっとびっくりすると思うよ!」、、といったところで、電話は終わった。

電話を切った後、僕はすぐPCを開き、「モデル3」の記事と写真を次々チェックした。

まず、デザインが気にいった。エクステリア、インテリアともに、前のモデルよりグンと良くなっている。

気を衒ったところはないが、「テスラ感」は強くなった。ノーズが低くなったのがいちばんの変更点だが、表情はキリッと引き締まったし、ボディ全体の質感も高まっている。

全体的にもシャープさとインテリジェンス感は明らかに高まっており、1クラス格が上がったような印象すら受ける。

息子のモデル3のボディカラーは「クイックシルバー」と呼ばれるグレー系。18インチのフォトンホイールを組み合わせている。
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私事だが、息子と僕のクルマの趣味嗜好はかなり近く、クルマそのものにしても、スペックにしても、ボディカラーや内装にしても、互いに「嫌だな」「これ嫌いだよ」といった思いを抱いたことは、、たぶん一度もない。

グレー系のボディカラーは、ある意味平凡といった見方もできるが、息子は「名人」と呼ばれる職人の手によるコーティングを施すことで、そこも完全にクリアしていた。

質感を増し、鋭さと切れ味を増した新しいモデル3のボディは、上質なコーティングによって、その進化ぶりは際立ち、間違いなく格上のクルマに見えるのだ。

ちなみに、僕の愛車であるプジョー e208GTは「明るく深いブルー」を纏っているが、これも上質のコーティングを施している。

その結果だろう。かなり多くの人に「素敵なブルーですね!」と声を掛けられる。そして、毎日、e208と顔を合わせている僕と家内の口からも、「良い色だよねー!」「素敵な色よねー!」と自画自賛の声がよく出る。
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インテリアも気に入った。ひと言で言えば「超シンプル」といった表現がいちばん合っていると思うが、人によって評価には大きな差が付くだろう。「こんなの絶対嫌だ!」と拒絶する人がいてもおかしくはない。

ドライバーの操作するものはステアリングホイールとアクセル/ブレーキ ペダル、そして大型 iPad のようなディスプレイのみだ。

ウィンカーレバーもない。ステアリングスポークの左端に小さな矢印のついたスイッチがあり、それを親指で軽く押すだけ。シフト操作系もディスプレイ上にある。

「ええっ、ここまでやるの⁉」、、初めは驚いた。これじゃぁ、運転席に座った途端に「こりゃダメだ!」と投げ出す人も少なくないだろうなと思った。

でも、僕の場合、数回操作を重ねただけで、迷わず、狼狽えることもなくなった。

短時間しか運転しなかったので、しっかり意識がそっちを向いていたからだろう。むしろ、ある程度慣れた頃に、突然、慌てさせられることがあるのかもしれない。
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僕は新し物好きだが、それが中途半端だと好きになれない。でも、ここまで潔く、徹底して追い込んでいると「いいなぁ!」と思う。

もし、モデル3を買おうかな、、となった時でも、この超シンプルなインテリアがマイナス要素になることはまずない。ウィンカーの操作ミス辺りには「大丈夫かな?」という不安はちょっぴり過るが、、。

これほどシンプルなデザインのインテリアを持つクルマは経験したことがない。「シンプル」=「安っぽい」という方程式が大方の見方だとすれば、モデル3のシンプルさは、その常識を超えたところにある。

質感が高く洗練されたシンプルさとでも言おうか、僕の目にも心にも、「とても心地良く映った」ということである。

ちなみに、内装色はブラックとグレイ、ブラックとホワイトの組み合わせのみ。息子の内装は前者だが、意外なほど落ち付けたと報告しておこう。質感も仕上げもいい。

褒め言葉を並べたが、これはあくまで僕個人の価値観であり、多くに頷いてもらえるとは思っていない。
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例えば、光物が好きで、カラフルで、複雑な造形を好むような人には、ひと目でソッポを向かれる確率は高いだろう、、ということも付け加えておこう。

走り味、乗り味もいい。息子のモデル3は、194kW/350Nmのモーターを積んだRWD。バッテリーは60kWhで、航続距離も594kmと長い。息子も「電費の良さが気に入った大きな理由のひとつ」という。

特に、気候の良い今時は、空いた道路を淡々と60~70km/h程度で流していると、12km/kWhもの電費を引き出すという。ひとクラスコンパクトな僕のプジョー e208より、電費はずっと優れている。

種々の走行条件下での電費も比較してみたが、すべてでモデル3が優っている。より大きく、重く、走りも強力でありながら、だ。

EVは日々、どんどん進化しているということなのだろう。たった15分で、最大282km分もの電力を充電できる「テスラ スーパーチャージャー」も大いなる魅力だ。
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息子の場合、家の近くのスーパーマーケットの駐車場にスーパーチャージャーが設置されているのが、購入の決め手のひとつになったというが、そうだろう。

ちなみに、僕の場合は、わが家のガレージに設置された200V/3kWhの充電器で十分間に合っている。

25年ほど前、メーカーのEV開発の協力をしていた時に設置されたもの。100km走行分の充電時間は6~7時間程度だが、夜から朝までにはたっぷり時間があるので、不自由を感じたことはない。

僕のプジョー e208も、EVならではの静かで、滑らかで、パンチのある加速がお気に入りだが、新しいモデル3のそれとは較べものにならない。

また、モデル3の走り味/乗り味の滑らかさ静かさにも驚かされた。EVだから、モーターだから、、といった言い方では説明できない。ただシンとした静かさではなく、優しくまろやかな静かさとでもいえば良いのだろうか。
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ボディ周り、足周りからの音/振動の遮断も半端ではない。走り出した瞬間、「なに! このまろやかな静かさと優しい乗り味は、、」と思わず、口に出てしまった。

僕は確認できていないが、息子が疑問を抱いているのはADASの仕上がり。アダプティブ クルーズコントロールもレーンキープアシストも、制御は緻密さに欠け、信頼感に欠けるレベルでしかないとのことだった。

息子の現在の愛車は、これも先日納車されたばかりのポルシェ911 タルガと、テスラ モデル3の2台。

素晴らしいエンジン車と素晴らしいEV車(あれこれ課題も残るが)、、良い組み合わせだし、羨ましい組み合わせでもある。

基本的に近場への移動しかしなくなった後期高齢者の僕と家内にとって、コンパクトでそこそこ楽しめもするプジョー e208 GT LINEは、とてもいい選択だと思っている。
でも、10年、いや15年ほど若返れたら、僕もきっと、息子と同様の選択をする可能性大だ。「ああ、若返りたいなぁ──‼」
岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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