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2020.06.14

ライバル不在の「SUVクーペ」という新形態

新型ハリアーにみるRAV4とまったく異なる価値観

トヨタ「RAV4」の兄弟車でありながら、まったく異なるキャラクターをもつ新型「ハリアー」がいよいよ6月17日に発売となる。爛熟したSUVブームの間隙を縫うように「SUVクーペ」という見た目のスマートさを優先させた新形態に挑む新型「ハリアー」に勝算はあるのか?

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文/鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
4代目となる新型「ハリアー」(写真:トヨタ自動車)
2020年4月13日に発表され、6月の発売が予定されているトヨタの新型「ハリアー」。ショールームで実車にお目にかかれるのはもう少し先だが、注目度の高さは自動車メディアやSNSでの反響を見れば明らかだ。

では、この新型ハリアーは今回のフルモデルチェンジでどのように進化し、どんな特徴を持っているのだろうか。
そして、人気車種もフルモデルチェンジは、国内のSUV市場にどのようなインパクトを与えるのだろうか。国内のライバルたちや、ヨーロッパのプレミアムブランドの巧みな戦略から、新型ハリアーの可能性を考察してみたい。

兄弟車「RAV4」の存在

新型ハリアーを端的に言ってしまえば、2020年春に発売された「RAV4」の兄弟車だ。プラットフォームは同じTNGAの「GA-Kプラットフォーム」で、ホイールベースも前後のサスペンションの形式も同じ。2.0リッターと2.5リッターのハイブリッドというパワートレインのラインナップも同じだ。
5代目「RAV4」は2019年4月に発売されている(写真:トヨタ自動車)
しかし、新型ハリアーとRAV4が見せる世界観はまったく異なる。RAV4は、アグレッシブでゴツゴツとしたデザインをまとい、世界初をうたう「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を筆頭に、複数の4WDシステムを用意する。イメージさせるのは、悪路をものともしないオフローダーである。

一方、ハリアーは都会派。ルーフもリアに向かってぐっと下がっている。実用性を考えれば、車体後方を高くしたほうが、室内空間は大きくとれる。しかし、ハリアーはそうした実用性よりも、見た目のスマートさを優先させているのだ。ハリアーとRAV4は、同じメカニズムを共有する兄弟車には、まったく見えない。

メルセデス・ベンツやBMWなど、ヨーロッパのプレミアムブランドでは、このようなモデルを「SUVクーペ」と呼び、ここ数年で一気にラインナップを増やしている。新型ハリアーは、そうした欧州プレミアムたちほど徹底したクーペスタイルにはなっていないが、それでも狙う世界観は同じ。SUVクーペ的なモデルが新型ハリアーなのだ。
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そんなSUVクーペ的な新型ハリアーのライバルとなるモデルは何だろうか。

車格でいえば、マツダ「CX-5」、スバル「フォレスター」、日産「エクストレイル」、ホンダ「CR-V」がライバルに該当する。もちろん兄弟車のRAV4も同じクラスだ。いずれも2.0~2.5リッターのエンジンを搭載し、ディーゼルで勝負するCX-5を除けば、ハイブリッドも設定される。価格は、どれも300万円台が中心だ。

しかし、そうした国産SUVのほとんどは、4WD性能や実用性を重視しており、SUVクーペと呼べるほどのルックス重視の姿勢はない。

そんな中で、あえてライバルを1台挙げるとなればマツダのCX-5だろう。CX-5の特徴のひとつは、魂動デザインと呼ぶ優美なルックスにあるからだ。しかし、そんなCX-5もSUVクーペというほどではない。

もっとも近いのは「CX-30」だが……

では、もう少し視野を広げてみよう。一回りコンパクトなクルマには、近い考えのモデルが存在する。マツダ「CX-30」、三菱「エクリプスクロス」、ホンダ「ヴェゼル」、トヨタ「C-HR」だ。エンジンは多くが2.0リッター以下で、価格設定も200万円台前半からとなる。

これらのモデルは、実用性よりもデザイン重視で作られている。つまり、同じSUVクーペと呼べるような存在だ。

中でも「マツダ3」と基本的なメカニズムを共有するCX-30は、2019年10月にデビューしたばかりという比較的フレッシュな存在である。また、マツダ自慢の魂動デザインの洗練も進んでおり、SUVクーペとしてハリアーの強いライバルになるのではなかろうか。
マツダ「CX-30」(写真:マツダ)
しかし、ハリアーとCX-30では、全長が30cm以上も違う。当然、サイズの大きいハリアーのほうが室内空間(特に後席)も荷室も広いため、SUVクーペといえども実用性ではハリアーが上になる。

また、そもそもの販売力は圧倒的にトヨタのほうが上だ。そうやすやすとハリアーの顧客がCX-30に流れていくことはないだろう。

つまりハリアーには、ほとんど強力なライバルが存在しないのだ。アウトドア志向を強めたRAV4が登場したからこそ、トヨタはハリアーをより都会的でライバルのいないSUVクーペというジャンルに踏み込むことができたと言える。

また、国内の自動車市場では、SUVブームは爛熟(らんじゅく)ぎみだ。すでにSUVを所有しているオーナーも多く、車種も増えてSUVが当たり前の存在となってしまった。SUVであるだけで個性を主張できる時代はピークを越えたと言え、さらに個性的なSUVが求められているのだ。

そうした動きに目ざとく対応しているのが、メルセデス・ベンツやBMWといったドイツ勢をはじめとした、ヨーロッパのプレミアムブランドである。

メルセデス・ベンツでいえば、「GLC」と「GLE」にそれぞれ「GLCクーペ」「GLEクーペ」をラインナップするし、BMWでは「X2」「X4」「X6」がSUVクーペとなる。
メルセデス・ベンツ「GLCクーペ」(写真:DAIMLER)
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アウディもEVである「e-tron」にSUVクーペの「e-tronスポーツバック」を追加しているし、ポルシェも「カイエン クーペ」をラインナップに加えた。ランドローバーの「レンジローバーヴェラール」もSUVクーペと言えるだろう。
売れそうなところに、いち早く該当モデルを用意する嗅覚の鋭さは、さすがプレミアムブランドといったところだ。

SUVクーペの元祖は「X6」だが、BMWはヒットの兆しが見えたことでいち早く「X4」「X2」といった下位モデルを展開。ライバルもそれに追随した格好だ。もはやプレミアムブランドにSUVクーペは、欠かせない存在となっている。

2020年のベストセラーSUVになる可能性も

新型ハリアーに話を戻そう。新型ハリアーはライバル不在で、しかもトレンドの追い風がある。そういう意味で新型ハリアーのセールスは、コロナ禍という逆風はあるものの、本来的には非常に有利な状況だ。発売は6月だが、ひょっとすると2020年に最も売れるSUVになるかもしれない。

新型ハリアーのヒットを受け、「SUVクーペは国内でも売れる」という認識が広がれば、各社からさまざまなサイズのSUVクーペの新型車が登場してくるだろう。日産やホンダ、スバルなどから、新型SUVクーペが投入される可能性も十分に考えられる。

そうとなれば、国内SUVマーケットはさらに活気づき、よりSUVが存在感を増すことになるだろう。新型ハリアーの登場で、マーケットの活性化が期待できる。2020年代の国内マーケットに向けて、大きなインパクトを与えるモデルが新型ハリアーなのだ。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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