2020.05.24

映画とクルマの大人なカンケイ♡ VOL.2

オトコはクルマでナニを語る?

クルマは乗る人のキャラを雄弁に語るアイコニックなアイテム。名画は、人物像をクルマに語らせるのが上手。というわけで、”大人に似合うクルマ”をテーマに名画のなかのクルマをご紹介。第二回目は「ファントムスレッド Phantom Thread」「17歳の肖像 An Education」です。

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文/小川フミオ イラスト/ゴトウイサク

ファッションのキモとはなんでしょうか。なんて質問は、このサイトを観ているオヤジさんたちに失礼でしょう。そりゃあやっぱり、自分を引き立ててくれるってことが、なにより大事なわけですよ。

クルマも同じじゃないか。そう思うわけです。最新のスポーツカーに乗るのもいいでしょう。いっぽう、クラシックカーなら、もっとピンポイント的に、自分の存在感とか価値観と重なり合うモデルが見つかる確率が高いかもしれませんね。

なにしろ、1886年に内燃機関で走る自動車が開発され、以来、今日にいたるまで世界各地で、連綿とクルマづくりが行われてきたわけです。ちょっとおおげさでしょうか。でも選択肢の広さは、現行車の比ではありません。

端的にいってしまえば、好きなクルマこそ、もっとも似合うクルマなわけですが、映画のなかにちょっとしたティップス、つまり着想のヒントですね。それを見つけることだって出来るのですよ。

最近の作品でいうと、ポール・トーマス・アンダーソンが脚本と監督を手がけた「ファントムスレッド Phantom Thread」(2017年)があります。これ、男子必見フィルムといえるかもしれません。

1950年代のロンドンを舞台にしたフィクションで、ダニエル・デイ=ルイスがドレスメーカーの主人公を演じてます。ひとことでいって、気取った男はどう振る舞うか。その教科書のような映画なのですよ。

注文でドレスを仕立てるのが仕事だけあって、デイ=ルイスの趣味は洗練されているという設定です。着るものや食べるものから、グルーミング、喋りかた、人づきあいの仕方まで。そしてクルマ。

映画のなかでデイ=ルイスのために選ばれたのは、「ブリストル405」。1955年から58年にかけて、英国の自動車メーカー、ブリストルが手がけた4ドアサルーンです。これ、参考になりそう。
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ブリストルカーズは47年設立。母体は1910年に出来たブリストルエアロプレーンカンパニー(当初はブリティッシュアンドコロニアルエアロプレーンカンパニー)です。飛行機好きには、ボックスカイト(1910年)、戦闘機のブルドッグ(27年)、マルチロールの双発戦闘機ボーファイター(39年)などでも知られていますね。

音速旅客機コンコルドのプログラムがスタートしたとき、当初主導的役割を果たしていたのもブリストルです。そののち、ブリストルはアームストロングシドレーと合併します。後者も高級車メーカーでもあったので、こと英国では航空機とクルマの結びつきが強かったことがわかるわけです。

ブリストルの車両には、初期のサーブ車がそうであったように、航空機メーカー独特のディテールが見え隠れます。クルマを作りだしたときは、エンジンを含めてBMW車の英国版というかんじだったんですね。当時ドイツは敗戦国ですが、スポーティサルーンづくりなどで、英国に勝る技術を持っていたというわけです。

ブリストル405は、6気筒エンジンを収めた超がつくぐらいのロングノーズのプロポーションをはじめ、飛行機のバーティカルスタイビライザーを思わせるテールフィンや、グリルの中央にすえつけられた大型のドライビングランプなどが眼を引きます。インテリアも独特のデザインでいいかんじです。

ごくわずかしか生産されていなかったモデルですが、それを選んだということで、デイ=ルイスの趣味人ぶりが知れるわけです。

そういえば、同じブリストル405は、「17歳の肖像 An Education」(2009年)にも登場。第82回アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされたこの英国映画で”活躍”するんですね。

主人公の16歳の女の子ジェニーは、初めてこのクルマに乗り込んだとき「こんなクルマ、観たことない。セ・トレ・シーク(すてきね)」と。それに対して、ドライブしていたデイビッドは、「ブリストルは、多くは作られていないからね」と応えます。
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脚本を書いたニック・ホーンビーは、じつは「こんなクルマ、観たことない」と、ジェニーでなく、観客に言わせたかったんだろうなあと思います。それこそ、映画における、個性的なクラシックカーの”正しい”使いかたなんですね。

「将来ひとは、“日の下に新しきものなし”ということで、過去のものでもいいものは積極的に評価しようという考えにいたっているのではないでしょうか」

そう語ったのは、SF映画の傑作と評価が高い「ガタカ Gattaca」(1997年)の脚本と監督を手がけたアンドリュー・ニコル。この映画は公開時にクルマ好きのあいだでも大きな話題を呼びました。

舞台は、人類が宇宙へと進出しはじめた時代。遺伝子操作も当たり前の技術になっています。主演のイーサン・ホークらのコスチュームデザインはジョルジョ・アルマーニが担当していました。

クルマの選びがユニークです。アルマーニのミニマルなデザインのスーツをまとった主人公らが乗るのは、“過去のものでもいいもの”。

つまり、シトロエンDS(1955年)、スチュードベイカーアバンティ(63年)、ジェンセン・インターセプター(72年)、リンカーンコンチネンタルマークⅡ(56年)、それにビュイック・リビエラ(71年)といったぐあいなんです。

きわめつけは、警察署のシーンでしょう。警部らが乗るローバーP6(70年)がずらりと駐車場に並んでいるのですよ。こんな警察があったら、フラフラと逮捕されにいきたくなってしまう……なんてバカな連想が一瞬頭をよぎったほどです。

「ガタカ」には、名車と一般的に言われるクルマも登場しますが、どちらかというと、マニア受けする、ひとくせもふたくせもあるクルマばかり。私にとってかなり好物のクルマが多いので、何回観ても飽きません。
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たとえば、クライスラー製V8搭載の英国製GT、インターセプターは(ごくわずかしか作られていませんが)マニュアル変速機のモデルがあれば、いまでも欲しいと思っているぐらいです。

いずれにしても、どのクルマもキャラクターゆたかで、もし手に入れられたら、インターセプターにかぎらず、クルマライフがゆたかになりそうです。

ちょっとクラシックな仕立てのサビルロー的なスーツで乗るならローバーP6はいいでしょうし、すこしトンガった英国スーツが好きなら、ブリストル405やインターセプタがいまも似合いそう。

フレンチトラッドならDSだろうし、アメリカのスーツが好きなひとなら、リンカーンやアバンティもちょっとひねりが合って、好ましいかんじなのですよ。

こんなのが、オヤジさんにお勧めしたいLEON流映画の楽しみかたであります。ステイホームは、楽しい映画と!もうすこしガマンしましょう。

第一回「いつもポルシェにはイイ女が乗っている」はこちら

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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