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2023.12.16

VOL.14 「電気自動車ってなんだ?」

ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」日本初上陸!

今秋、ポルシェエクスペリエンスセンター東京(以下PEC東京)開業2周年を記念し、特別なプログラムが用意された。それは、電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」の日本初上陸に際し、報道陣および一般参加者、そしてカレラカップ参加ドライバーに向けて、同乗体験とポルシェのモータースポーツ部門における電動化戦略についてのワークショップを行うというものだった。

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文/藤野太一 編集/近藤高史(LEON)

感電しないようレクチャーを受けてから同乗

ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
GT4 eパフォーマンスは、将来的なポルシェのカスタマーレーシングを占う電動レーシングカー。ケイマンGT4 RSクラブスポーツのシャシーをベースに、911 RSR GTEのパーツを組み合わせたモデルだ。タイムアタックモードではタイプ992の911 GT3 カップをも上回る性能を発揮するという。

この日、幸運にも助手席に同乗する機会が与えられたのだが、ヘルメット、レーシングスーツなどをフル装備し万一、マシンにトラブルが発生した場合には、感電しないようにと助手席からジャンプアウトするレクチャーを受けてから、恐る恐る車両に乗り込んだ。
ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
▲ 「GT4 eパフォーマンス」をドライブするのは、GTワールドチャレンジにも参戦する現役ドライバーであり、ポルシェの開発ドライバーも務めるマルコ・ゼーフリート氏。
ドライバーは、ポルシェのワークスドライバーであり開発ドライバーも務めるマルコさん。通常は全開走行が禁じられているPEC東京の周回コース(2.1km)へ、いきなりアクセル全開でコースインする。まだ温まりきっていないミシュラン製の専用スリックタイヤがスキール音を上げる。

モーターやインバーターが盛大に音を放ち加減速に連動するので、エンジン音がないことへの違和感はそれほどでもない。それよりも前後にモーターを搭載する4WDの電気自動車ということもあって、コーナーの立ち上がりでもラグタイムなく瞬時に加速し、直線の少ないこのコースでは常に高Gにさらされる。想像以上に速い、速すぎる……。
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ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
ポルシェの歴史においてモータースポーツは、切っても切り離せないものだ。それば、メーカー選手権としてワークスマシンとワークスドライバーが戦うWEC(世界耐久選手権)やフォーミュラEのようなファクトリーレーシングだけではない。どのサーキットで、どういったレギュレーションでといったレースフォーマットを用意し、顧客はレースカーを購入し自らステアリングを握ってレースに参加するカスタマーレーシングの先駆者でもある。

その代表格が911カレラのレーシングバージョン(通称カップカー)で競われる“世界最速のワンメインクレース”、ポルシェ「カレラカップ」。30年以上の歴史があり、現在世界10カ国以上で開催されている。日本でも2001年にカレラカップジャパン(PCCJ)がスタートし、今年で23シーズン目を数える人気ぶりだ。

「GT4 eパフォーマンス」は、将来的にこの911GT3カレラカップの代替になりうるのか。ポルシェの開発チームはそのリサーチのために世界ツアーを敢行しているのだという。ワークショップでは、ポルシェのカスタマーレーシング部門のマネジャーであるオリバーさんからプレゼンテーションを受けた。
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ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
▲ 2021年に公開されたミッションRコンセプトと、電気モーターやバッテリー技術など多くのコンポーネントを共有。専用のオイルクーリングシステムを備え、前後2基のモーターで最高出力は1088psを発揮。
「モータースポーツは、創業以来、ポルシェのDNAに刻まれているものです。これまでもずっと量産車とレースカーには相関性があり、互いに影響しながら車両開発をしてきました。いま電動化という課題に直面するなかでモータースポーツはどう変わっていくのか、どんな役割を果たすことができるのか。われわれは新たにエレクトリックカスタマーレーシングを開拓していく必要があります」
現時点の「GT4 eパフォーマンス」において、1スティント、25〜30分間のレースを911GT3カップと同等のタイムで走行する性能はすでに達成している。しかし、まだ世界に2台しかないプロトタイプカーであり、マシンの価格は公表できないほど高価なものなのだとか。走行するためにはエンジニアやメカニックなど6名のスタッフが必要で、いますぐに顧客へと提供できる状態ではない。将来的には経済面や整備面など、現在のカレラカップと同様の予算や人員で参加できるものを想定しているという。

「ストリートカーと情報をシェアしながら開発を進めていくことになります。それによって、開発費、スペアパーツ、ランニングコストなどをさげていく。そしてレーシングプラットフォームをつくっていかなければなりません。どのサーキットに、どのような充電設備がいくつ必要なのかなど、ひとつひとつ課題を挙げてクリアしていく」
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ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
▲ 電気自動車の専用設計ではなく、ケイマンGT4 RSクラブスポーツのシャシーを利用しているため、80kWhのバッテリーをフロント、助手席、リアの3分割で搭載する。ステアリングに備わるパドルは回生ブレーキのレベル調整ではなく、トルク配分を行うという。

2030年までに8割以上を電気自動車へ

ポルシェはいま、2030年までに80%超の市販車を内燃機関から電気自動車へとスイッチしていくと目標を掲げる。タイカンに続く電気自動車の第二弾は、来年の発表が噂される次期型マカン。そして次にスポーツカーの718シリーズが電気自動車になると言われている。

「GT4 eパフォーマンス」は、2022年から24年までをツアーフェーズとして、世界お披露目ツアーを行う。そして2025年には、次期718シリーズと並行して開発される次期型プロトタイプレーシングカーの開発に着手。その後、いつとは明言されなかったが、新たなエレクトリックカスタマーレーシングシリーズを立ち上げるという。
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ポルシェの電動レーシングカー「GT4 eパフォーマンス」
▲ ミシュランがこのクルマのために開発した電動レーシングカー専用のスリックタイヤ。使用済タイヤのリサイクル材などを53%使用しながら、グリップや耐久性など従来品以上の性能を実現する。将来的にはワンメイクレース用のタイヤとして採用される見込みだ。
ここで勘違いしてはいけないのが、そのタイミングで「GT4 eパフォーマンス」が、911カレラカップにとって代わるのものではないということ。ポルシェのトップも、最後まで内燃エンジンが残るのは911になるだろうと発言している。オリバーさんも、そのために世界をまわって「GT4 eパフォーマンス」を見てもらい、チームやドライバーをはじめすべてのステークホルダーからフィードバックをもらう。

最終的に判断するのは市場であり顧客で、そのための選択肢を用意するのだと話していた。電動化しようとも、レースにかける思いは変わらないという、ポルシェの本気をまざまざと感じたのだった。

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