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2020.03.22

乗ってわかった「メリット」と「デメリット」

FF化したBMW「1シリーズ」は、それでも魅力的なのか?

かつてFR(後輪駆動)のクルマしかつくらなかったBMWが、2シリーズの「アクティブツアラー/グランツアラー」以降、次々とFFモデルをつくっている。このほど、3世代目を迎えた1シリーズもまたFFだ。BMWにとってクルマをFF化する意味とは? それによってBMWの魅力は失われていないのか?

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文/岡本幸一郎(モータージャーナリスト) 

記事提供/東洋経済ONLINE
新たにFFとなったBMW「M135i  xDrive」(写真:BMW)
BMWはかつて、FR(後輪駆動)のクルマしかつくらない旨を公言し、実際にずっとそれを守っていた。

コンパクトハッチバックのエントリーモデルとして2004年にラインナップに加わった「1シリーズ」も2代目まではクラス唯一のFR車で、そこに共感するファンは少なくなかった。とくに日本では。FRだからこそ、1シリーズを選んでいた人も少なくない。

ところがBMWは、方針を転換した。まず「2シリーズ」の「アクティブツアラー/グランツアラー」というMPV(マルチ・パーパス・ビークル)に、傘下にある「MINI」のFF(前輪駆動)のプラットフォームを流用した。それが2014年のこと。

次いで、初代はFRだったSAV(=スポーツ・アクティビティ・ビークル)のエントリーモデル「X1」も、2015年に2代目にモデルチェンジする際にFF化した。その派生モデルの「X2」もFFで登場。そしてこのほど、3世代目を迎えた1シリーズも同じくFFとした。さらに、「2シリーズグランクーペ」も同様で、FFのBMWは着々と増殖中だ。

なぜBMWはFFを採用したのか?

理由はいたってシンプルで、言うまでもなく後席の居住性や荷室を広く確保できるからだ。1シリーズの場合、このカテゴリーは実用性を求めるユーザーが多く、逆に駆動方式にこだわるユーザーはそれほど多くない現状を受けてのことだという。表立っては言及しないが、コストダウンを図るうえでもFFのほうが有利であることも、裏テーマとしてあることは想像に難くない。
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中核モデルとなる118i(写真:BMW)
実用性が高いに越したことはないとして、日本ではこだわる人の少なくない駆動方式に、欧州のユーザーは意外と無頓着のようだ。調査によって、せっかくBMWが後輪駆動を採用していたのに、あまり共感を得られていなかったことが判明したと言う。

むしろ実用性を高めることでフォルクスワーゲン「ゴルフ」やメルセデス・ベンツ「Aクラス」、アウディ「A3」など同じ土俵に上がることのほうが大事で、メリットを生かすよりも、デメリットをなくすほうを選んだわけだ。

まずパッケージ面で新旧を比べると、後席の居住性と荷室容量は確かに拡大していて、違いは明白だ。

足元のスペースは約40mm広くなり、センタートンネルが細く低くなったことで、印象としてもかなり広くなり、乗り降りもしやすくなった。荷室容量も20リットル増えて380リットルと、このカテゴリーのベンチマークと称されるゴルフと並んだ。

着座姿勢についても、従来型は座面が平らで背もたれが立ち気味であったのに対し、新型はおしりを少し沈めて背もたれが倒されており、ヒール段差(フロアからシートまでの高さ)も増してより快適になっている。
ただし、ヘッドクリアランスは、従来型のほうが微妙に大きい。これらは、駆動方式の変更よりも、考え方の変化によるものといえる。

運転席に座ったときの印象も大きく変わっている。

FF化によりエンジンとトランスミッションが“縦置き”から“横置き”になり、フロントタイヤとの位置関係も変わることから、FRの従来型は車体の右側に余裕があってペダル配置も右に寄っていたのに対し、FFの新型は逆で、右側にタイヤハウスが迫っている。このあたりはセオリーどおりとして、なぜか新型ではシフトレバーの位置がやけに低くされたことが少々気になる。

「118i M Sport」が販売の5割

日本導入時点のラインナップは、ガソリンの1.5リッター直3ターボを積む2WDの「118i」系が3グレードと、2.0リッター直4ターボで4WDの「M135i xDrive(以下「M135i」)」の4モデル。

価格は「118i」が334万円、「118i Play」が375万円、「118i M Sport」が413万円、「M135i」が630万円と、トップとボトムで倍近く違う。

2020年1月時点における販売比率は「118i」のスタンダードが1割、「Play」が2割、「M Sport」が5割と、「118i M Sport」が圧倒的に売れ筋で、M135iが2割となっている。

FFになって、肝心のドライブフィールはどうなっただろうか。
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プロポーションもボンネットが短いFFらしいものとなった(写真:BMW)
118iから述べると、前後重量配分がほぼ50:50だった従来型に対し、新型はやはりフロントがだいぶ重く、ハンドリングも旋回中心が前のほうにある“いかにもFFっぽい感覚”となり、アクセルを踏み増したときに前輪が空転することも。加速時にフロントでひっぱっていく感覚は、リアから押し出すFRとは異質で、FRだから1シリーズを選んでいた人にとっては、気になるところだろう。

ただし、FFになって走りが退化したと言われないよう、BMWも手を打っている。その1つが、「ARB(タイヤスリップ・コントロール・システム)」だ。

「ARB」は、従来だと別々に行っていたエンジン制御と姿勢制御を統合したもので、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)で直接スリップ状況を感知し、DSC(横滑り防止装置)を経由することなく、以前より約3倍の速さでその信号を直接エンジンに伝達する機能で、FFにありがちなアンダーステアを抑制できるという。

その効果は、公道を走る程度では感じにくいが、ハードに攻めたり滑りやすい路面を走ったりすれば体感できるはずだ。

140psと220Nmを発生する1.5リッター直3ターボエンジンはなかなかの実力の持ち主で、レスポンスがよく、低回転から力強く盛り上がるトルク感を備えている。3気筒であっても、音質があまり安っぽくない点もよい。
「M135i xDrive」のエンジンルーム(写真:BMW)
118iの倍以上となる306ps、450Nmを発生する2.0リッター4気筒のM135iは、同じクルマだとは思えないほど違う。パワフルであることは言うまでもないが、それを余すところなく路面に伝える新開発の機械式LSD(リミテッド・スリップ・デフ)や高性能な4WDシステムが効いて、ステアリングを切った方向にぐいぐいと進んでいくのだ。

ここまでくると、ベースの駆動方式がFFなのかFRなのかというのはもはや関係なくなってしまう。ただただいかにも特別なクルマに乗っているという感覚をドライブしている間、ずっと味わえる。

いわゆる「ホットハッチ」として見ると、サイズも価格も超えているが、こうした高性能な2ボックスカーは欧州、とりわけドイツブランドの定番商品だ。その中でもM135iの位置づけは、かなり上のほうだと言える。少々高価でも高性能な2ボックスカーに乗りたくて、BMWが好きという人にもってこいだ。
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FFのBMWは強敵の中で戦えるのか?

日本市場では海外で不評なFFの2シリーズ アクティブツアラー/グランツアラーも売れたぐらいだから、BMWブランドの神通力はまだまだ十分に通用するだろう。

ただし、周囲を見わたすと、現行型になって間もなく、まだまだ新車効果のあるAクラスや、まもなく新型が日本に上陸するゴルフなどといった強敵が居並ぶ。
年内に国内発売されると言われる新型「ゴルフ」(写真:フォルクスワーゲン)
クラス下ながら、これまた新型になって間もないアウディ「A1」も少なからず競合するだろうし、いずれA3も新しくなる。

そんな中で、FR時代と違って1シリーズでなければ得られないものが見えにくくなったのは事実だ。とはいえ、FRという独自性は薄れても、ウイークポイントが解消したことで、商品力が高まったことには違いない。

いずれにしても数が増えれば、BMWにとっては御の字だ。そして、FFになっても“駆け抜ける歓び”は健在かと聞かれれば、十分に「YES」と答えられる仕上がりであることには違いない。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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