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2020.03.08

トヨタも参入する超高性能車のニーズとは

1億円超の「ハイパーカー」が増えている理由

「スーパースポーツカー」と表現されることも多いハイパーカー。例えばブガッティ「ヴェイロン」やマクラーレン「セナ」など1億円超の価格が一般的な超高性能車市場に、いま、トヨタが参戦しようとしている。「GRスーパースポーツ」と命名されたそのクルマは、どんな意図のもとに開発されているのだろう?

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文/工藤 貴宏(自動車ライター)

記事提供/東洋経済ONLINE
2018年1月に発表された「GRスーパースポーツコンセプト」(写真:トヨタ自動車)
1月に千葉県・幕張メッセで開催され、3日間で約33万人が来場した自動車イベント「東京オートサロン2020」。市販車をベースに手を加えたカスタムカーが中心の催しだが、国内外の自動車メーカーも数多く出展する、日本を代表するカーイベントのひとつだ。

その中でもひときわ盛り上がっていたのが、トヨタのブース。理由は、WRC(世界ラリー選手権)を戦うために開発され、この会場で正式発表された高性能車「GRヤリス」が大きな話題となったからだ。

発表のプレゼンテーションは、トヨタ自動車の副社長で、同社のスポーツカーやモータースポーツ事業を統括するGAZOO Racing(ガズーレーシング)カンパニーのプレジデントである友山茂樹氏が担当。

そのスピーチの冒頭では、スクリーンに偽装姿でサーキットをテスト走行する興味深いクルマが映し出され、同時にそのレーシングカーのようなクルマについて「市販を視野に入れている」ことが強調された。

それこそが、公道走行可能なレーシングカーであり、「ハイパーカー」というジャンルに属する「GRスーパースポーツ」と呼ばれるクルマだ。本物のレーシングカーの流れを汲みつつ、ナンバーを取得し公道走行ができるモデルである。
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モビリティカンパニーである一方で

「良品廉価」を得意とする大手自動車メーカーのトヨタが、まるで少量生産のスーパーカーメーカーのような“市販車”を発売するのだから、驚かざるをえない。

デビューは2022年とも2023年とも言われていて、世界最高峰のレーシングカーのテクノロジーが投入されているだけに、価格は少なく見積もっても“億”となるだろう。
2018年のル・マン24時間レース会場で「GRスーパースポーツコンセプト」の市販に向けた開発が始まったことが発表された(写真:トヨタ自動車)
トヨタはいま、ハイブリッドをはじめEV(電気自動車)やFCV(燃料電池)などのエコカーを広め、同時に従来の自動車メーカーから脱して “モビリティカンパニー”を目指している。その一方で、高性能車の究極の形ともいえる領域へも踏み出そうとしているのだ。

ところで、「ハイパーカー」という言葉に、聞き馴染みのない人も多いかもしれない。はたしてどんなジャンルなのだろうか。

「スーパーカー」と聞けば、多くの人はどんなクルマかイメージできるだろう。ハイパーカーを一言でいえば、“スーパーカーを凌駕した存在”である。

ハイパーカーはあくまで概念なので「これを満たせば認められる」という数値上の基準はないが、最高出力がおおむね1000馬力程度もしくはそれ以上あり、最高速度は350km/h以上。

さらに“億超え”の価格であるのが一般的だ。もちろん、どれかが欠けていれば認められない、というものではない。生産台数が10台未満というモデルもある。

また、スタイリングはレーシングカーをイメージさせるのが通例だ。これは後述するモータースポーツとの関連もあってのことである。

では、具体的にどんなモデルがあるのだろうか。
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筆頭は「ブガッティ」や「マクラーレン」

世の中でもっとも知られているハイパーカーは「スーパースポーツカー」と表現されることも多いブガッティ「ヴェイロン」だろう。
2005年に登場したブガッティ「ヴェイロン」(写真:ブガッティ)
2005年に市販モデルがデビュー(余談だがコンセプトモデルや市販仕様のお披露目は東京モーターショーだった)し、最高速度はガソリンエンジンだけで1001ps(ベーシック仕様)を誇り、最高速は407km/h。

価格は当初、1億6300万円だったが、上位タイプは2億円を超えるなど、それまでのクルマの概念を覆すものだった。400km/hという速度領域では、100Lの燃料タンクが12分で空になるという。

ヴェイロンは2015年に生産を終了したが、ブガッティはその後継となる「シロン」も登場させている。こちらは1500psで最高速度は420km/h(リミッター作動)、邦貨換算で3億円オーバーと、あらゆる点でヴェイロンを超えていた。
マクラーレンの最上位「アルティメットシリーズ」に属する「セナ」(写真:マクラーレン)
また、イギリスのスーパーカーメーカーであるマクラーレンの「セナ」もハイパーカーに数えられる。

「マクラーレンのラインナップでもっともサーキット走行を重視したモデル」として2018年にデビューし、エンジンにモーターを加えたトータル出力は最大916ps。世界で500台だけが作られ、価格は67万5000ポント(日本発表当時のレートで約1億2500万円)だった。

多くのハイパーカーは、超高性能車を専門とするメーカーが手掛けることが多いが、量産車メーカーが手掛ける場合もある。

その代表格がドイツのメルセデス・ベンツが開発している「メルセデスAMG プロジェクトONE」だ。
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「メルセデスAMG Project ONE」は、東京モーターショー2017でアジア初公開された(写真:ダイムラー)
モータースポーツの最高峰である「F1」のテクノロジーを最大限に活用して公道走行も可能にしたクルマである。

エンジンもF1と同じ形式で、排気量1.5Lの4気筒ターボながら超高回転型としてパワーを稼ぎ、電気モーターと組み合わせてトータルで1000psを発生。最高速度は350km/hと同社は説明する。

開発の遅れにより市販は当初の計画より遅れているようだが、3億円を超えるといわれる価格にもかかわらず、生産予定台数の275台はすでにオーナーが決まっているという。

主要パーツは「TS050 HYBRID」と同じ

イタリアのスーパーカーメーカーであるパガーニの「ウアイラ」やイギリスのアストンマーティンの「ヴァルキリー」、さらには日本のアスパークが開発している「OWL」など、世界中に多くのハイパーカーが存在し、その数は着実に増えている。そこへ、トヨタも“参戦”しようというのだ。

トヨタが開発しているの「GRスーパースポーツ」に関して、公開されている情報は多くない。
「GRスーパースポーツ」のメカニズムはレーシングカーの「TS050 HYBRID」とほぼ同じ(写真:トヨタ自動車)
しかし、2018年1月のコンセプトモデルのお披露目時には、2400ccのV型6気筒ツインターボに電気モーターを組み合わせ、トータルで1000psであることが明らかにされ、同時に「レーシングマシン『TS050 HYBRID』とほぼ同じ主要パーツで構成される」とアナウンスされた。

コンセプトモデルにナンバープレートを装着する場所が確保されていたのも、公道走行を可能にするという強い意気込みと言っていいだろう。

では、なぜトヨタはそんな未知の領域に踏み出そうとしているだろうか。

トヨタがハイパーカーに進出する理由のひとつは、世界最高峰のレースのレギュレーションの見直しだ。日本でも有名な「ル・マン24時間耐久レース」でトヨタは2018年と2019年に総合優勝し、今年は3連覇を目指している。

そのレースでのトップ争いが、今後はハイパーカーをベースにレース仕様へ仕立てたモデルへと移行する予定となっているのだ。トヨタのハイパーカーは、そこへ参戦しようというのである。

しかし、それ以上に大きな理由はトヨタにはある。「次の100年も自動車産業を面白いものとする」という壮大なテーマだ。
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東京オートサロン2020のプレスカンファレンスに登壇した友山茂樹副社長(写真:トヨタ自動車)
友山茂樹副社長は、2018年の東京オートサロンでこうスピーチしている。

「『自分の意志で自由に移動したい、どこまでも遠くに、誰よりも早く、美しく移動したい』という人間の欲求は、不変的なものであり、それを実現してくれるクルマに対する人々の感情は、豊かで、心ときめくものがあります。次の100年も、クルマを徹底的に面白くするというTOYOTA GAZOO Racingの挑戦は、まだ始まったばかりですが、お客様の笑顔のために、自動車産業の未来のために、心ときめくクルマづくりに拘(こだわ)り続けていきたいと思います」

トヨタのチャレンジを見守りたい

究極のエコカーやカーシェアリングなど、トヨタの描くクルマの将来像は従来のクルマ好きが楽しめるような未来とは言いがたい。しかし、トヨタ自身がそれをしっかり理解しているからこそ、クルマが白物家電化する一方で、クルマ好きをときめかせるようなモノづくりも同時に進めていこうとしているのだ。

良品廉価のモノづくりを得意としてきたトヨタには、高額なスーパーカーを得意とする欧州メーカーとは異なり、1億円を超えるような市販車作りのノウハウはない。それはすなわち、ハイパーカーの開発と市販化が驚くほどハードルの高いプロジェクトだということを意味している。

しかし、クルマ好きの1人として、そして日本人として、日本を代表するメーカーのそんな無謀とも思えるチャレンジの成功を、大きな期待とともに見守りたい。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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