「UX300e」を開発したのは、レクサスにとって”必然”だった
レクサス「UX300e」は、単に二酸化炭素や窒素化合物を排出しないクリーンビークルであるだけない、とレクサスではする。ここがおもしろい点だ。
電動化のメリットのひとつは「ドライバーの運転感覚に寄り添った自然な加減速フィールと、高出力モーターによる優れた加速性能を両立」したところにある、と説明される。
世界に向けてこのクルマが発表されたのは、2019年11月に開催された広州自動車ショーでだった。北京と上海につぐショーで、世界中のクルマが揃うという、日本にいると信じられない大規模な展示が特徴。
クリーンなデザインがいかにもレクサスらしいブースで報道陣を前にベールを脱いだ「UX300e」は、ブルーのボディカラーが美しく、計算されつくしたライティングの下、存在感を発揮していた。
ところが、2019年6月に方針が変換され、補助金が削減されることに。噂は前から聞こえてきたのだけれど、電動車一辺倒ともいえた政策が変わったことで、電動車の販売には大きくブレーキが。
そんな”逆風”の吹くなか大丈夫なの? と今回の「UX300e」の行く末を早くも心配する声があるのに対して、レクサスインターナショナルの澤良宏プレジデントは、単にマーケティングのために発売を決定したわけではないのです、と説明してくれたのだった。
UX300eを開発したのは、レクサスにとって”必然”だったというのが澤氏の説明なのだ。このクルマの見どころは、比較的大きなバッテリーを搭載して、パワーが大きいところ。
前輪の駆動力を細かく丁寧にコントロールすることで、走りの質を上げていくことが、レクサスの電動車ならではの価値にしたいと、澤氏をはじめ開発陣は考えている。それが”未来”と関係しているのだ。
あちらは近未来のクルマの提案だけあって、4つの車輪に1基ずつモーターが組み込まれて、その制御で、スポーツカーのようにも走れることを謳っていた。「UX300e」はそこまでではないものの、ベースのコンセプトは同じだという。
従来のUXシリーズがベースの「コンバージョン」(転換)という位置づけになる追加車種だ。とはいえ、シャシーの一部を強化したり、サスペンションシステムに手を入れたりと、BEV(バッテリー駆動のEV)化は本格的の様子。
「バッテリーパックの搭載位置を下げることで重心高を下げて運動性能を向上させ、かつ、騒音吸収の働きも担わせています」
バッテリーパック自体に、小石などがぶつかる音などを含めて、室内へノイズが侵入しないよう、遮音効果をもたせているそうだ。これも電動車の構造を利用した賢いやりかた。
世のなかが電動車だけになったら味気ないという見方もあるけれど、そうではない、というレクサスの主張。それを知ったことが、広州自動車ショーで「UX300e」に出合っての収穫といってもいい。
このクルマ、中国と欧州では2020年に発売されて、21年に日本市場に導入される予定という。
広州自動車ショーで発表された
ショー会場で報道陣にクルマの説明をする澤プレジデント
ブレースの追加やダンパーの減衰力最適化などが実施されている
航続距離400kmという
運動性能と日常の使い勝手との“二律双生”を目指したとされる
「ドライバーの自然な運転感覚を大切に」し、走行中のサウンドにもこだわっているそうだ
後席バックレストは2対1の可倒式
内装の色使いがしゃれている
専用アプリによるスマートフォンとの連携で、バッテリー残量や走行可能距離などを確認できる
54.3kWhのけっこう大きなリチウムイオン電池を床下に搭載
広州自動車ショーで発表された
ショー会場で報道陣にクルマの説明をする澤プレジデント
ブレースの追加やダンパーの減衰力最適化などが実施されている
航続距離400kmという
運動性能と日常の使い勝手との“二律双生”を目指したとされる
「ドライバーの自然な運転感覚を大切に」し、走行中のサウンドにもこだわっているそうだ
後席バックレストは2対1の可倒式
内装の色使いがしゃれている
専用アプリによるスマートフォンとの連携で、バッテリー残量や走行可能距離などを確認できる
54.3kWhのけっこう大きなリチウムイオン電池を床下に搭載
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。