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2019.11.04

【試乗】メルセデス・ベンツEQC。初の完全EVはなにがスゴイのか?

欧州で富裕層がいよいよ注目しはじめたとも言われる、ラグジュアリーEV(電気自動車)。なかでも注目の今年7月に日本で発表された「メルセデス・ベンツEQC 400 4MATIC」に試乗した。

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取材・文/小川フミオ

走りはじつにナチュラル

ピュアEVとしての”けれんみ”はなくまっとうなスタイリング
欧州で富裕層がいよいよ注目しはじめたとも聞く、ラグジュアリーEV(電気自動車)。2019年7月に日本でも発表された「メルセデス・ベンツEQC 400 4MATIC」はかなり出来のいいモデルで、いよいよ未来が現実になってきた感がある。

「EQ」はメルセデス・ベンツがハイブリッドや代替燃料車に使うブランドネームだ。メルセデス・ベンツ、メルセデスAMG、メルセデス・マイバッハに続く、第4のブランドとなる。

なかでも今回のEQC400 4MATIC(以下EQCと略)はピュアEVのメルセデス車としては日本初だ。今後、EQSとかEQEなどが出てくる可能性が高い(実際、EQSはかなり動きが慌ただしい)。

EQCの特徴のひとつが、スタイリングである。シルエットは、ステーションワゴンとSUVが合体したような、クロスオーバーというべきもので、奇をてらったところがない。
ヘッドランプと一体化したグリルは新しいが、やや保守的な好みの顧客のためには写真の橫バー入りのタイプも用意される
側面から見ていると、SUVのGLCをより洗練させた印象で、アウディやジャガーといったメーカーが手がけるEVモデルと比較すると、かなりおとなしめのスタイリングだ。

フロントマスクは、少なくとも新しい。EQのコンセプトモデルにも使われてきたヘッドランプと一体化したメルセデス言うところの「ブラックパネルグリル」だが、それでも、新しさに違和感を感じるユーザーもいるのでは、とメーカーでは懸念があるようだ(なんて慎重な!)。そんなひとのためには、クロームの橫バータイプを用意するなど、ユーザーを閉め出すのでなく、門戸を拡げるのに腐心しているようだ。

買うほうにしてみたら、1000万円以上の出費となるのだから、せっかくならフロントグリルぐらいは、従来のメルセデス車と違っていてほしいのではないかと思うのだけれど。どうでしょう。

なにより注目点は、走りにある。じつにナチュラル。ひょっとしたら、EVと気がつかないひとだっているのではないだろうか。従来の内燃機関(ICE=Internal Combustion Engineと最近では呼ばれる)から乗り換えて、ハンドリングも乗り心地も、さらに加速感やブレーキに違和感がほぼ皆無なのだ。
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写真の車両は21インチホイールを履く「AMGライン」装着車
GLCをベースに開発されているという報道もあるけれど、実際には多くのパーツは違うそうだ。たしかに床にはバッテリーが入っているし。2873ミリのホイールベースの長さが同一なのは、工場の同じラインで流しやすくするためだとか。

ドライブモードは「コンフォート」「エコ」「スポーツ」、それに走行特性とサスペンション特性とステアリング特性を個別に設定できる「インディビジュアル」という4つからなる。

765Nmというかなり太いトルクが踏み始めて一瞬に出るのがEVの特性だが、エコやコンフォートは少し抑えめ。そのぶんバッテリー消費量が少なくなる。

私がいいなと思ったのは「スポーツ」モードだ。ダイレクトな加速感とともに、足まわりがびしっとする。ドライブモードセレクターを備えたモデルでは、往々にしてスポーツモードのほうがより好感をもてるもので、EQCも例外でなかった。
全長4761ミリ、全幅1884ミリ、全高1623ミリ ※欧州仕様車の参考値
全長4761ミリ、全幅1884ミリ、全高1623ミリのサイズ(※欧州仕様車の参考値)に、2495キロの車重というボディだが、このモードだときびきびと走れるのだ。静止から時速100キロへの加速は5.1秒だから、俊足だ。

メルセデス・ベンツに乗りなれているひとには、ステアリングホイールを切ったときの操舵感覚と、加えて車体のロール速度が、従来のモデルとかなり近いのに驚くのではないだろうか。

他社のEVもそれなりに個性もあるし、操縦する楽しさがあるが、ナチュラルさでいうとEQCが飛び抜けている。ここが市場では大いなる強みになりそうだ。

前と後ろに1基ずつモーターを備えているが、前輪駆動が基本だ。急激な加速時などに後輪にもトルクが伝達される。このモーターをオルタネーターとして使うのが、さきに触れた回生ブレーキで、それによってバッテリーへの充電をおこなう。

リチウムイオンのバッテリーは、容量は80キロワット時で、実際により近い数値がでるWLTCモードによるフル充電からの後続距離は400キロと発表されている。日本仕様の充電はCHAdeMO対応だ。
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充実のサービスと丁寧な味付けでEV初心者も入りやすい

メーターパネルは10.25インチの液晶ディスプレイを2つつながている
その際、電気の流れがモニターに表示されるのが、EQCならではだ。あとは「ハイ、メルセデス」の呼びかけで起動するボイスコントロールシステムなど、他のモデルと同様の装備が搭載されている。

もちろん、EVのメリットともいえる、ワンペダル走行もそれなりにできる。ワンペダル走行とはアクセルペダルをオフにすると(回生ブレーキシステムが作動することで結果)制動がかかるものだ。

BMWやフォルクスワーゲンは、市街地ではほとんどアクセルペダルのオンオフだけで、発進も減速も停止もできるような設定である。いっぽうメルセデス・ベンツは(「少なくも現時点では」とのことだが)完全停止までは至らない。

通常のエンジン車では変速機をステアリングホイールから手を離さず操るためのパドルシフトがつく位置に、「D+(プラス)」と「D−(マイナス)」と記されたパドルが備わる。これが回生ブレーキの効きを調整するためのものだ。
ステアリングコラムに設けられたパドルで回生ブレーキの強さを調節できる
D+は「コースティング」といって、回生ブレーキが効かないモード。あとはDが軽度、D−が中程度、D−−が強度となっている。通常の市街地走行ではDだと減速が強めに効くので、往々にしてブレーキがわりに使える。

いっぽう、D−はけっこう強く制動が効き、D−−にいたっては、アクセルペダルを閉じた瞬間に大きな手でつかまれたように車両が停止に近いほどの減速をする。

追突される危険性もあるので、使用はあまり勧めらない、と試乗に際してメルセデス・ベンツ日本法人の広報からアドバイスを受けた。実際にそのとおりというかんじなのだ。

室内は空間的な余裕が充分。前席の基本造型はメルセデス・ベンツ車そのもののである。液晶パネルが2枚並べて立てられたようなメーターとインフォテイメント操作システムは、Aクラスをはじめ、最新のメルセデス・ベンツと共通だ。
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ドライブモードは4つ用意されている
一般保証、メインテナンス保証、24時間ツーリングサポートは登録から5年間(あるいは走行距離10万キロまで)有効で、バッテリーは8年間(あるいは16万キロ)保証される。

メルセデス・ベンツ日本では、上記に加えて、「Mercedes me Charge」と題した充電サービスも実施。提携の充電ステーションを使うかぎり、充電利用料および月額基本料が1年間無料となる。

価格は、1080万円。納車予定は2020年春ごろになるそうだ。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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