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2022.05.15

携帯電話が3kgもあった時代のこと、覚えていますか?

この四半世紀で急速な進歩を遂げ、もはや電話機能はおまけ扱いになってしまった携帯電話。さらに遡れば壁掛け式の箱型電話にもなじみがあったという筆者が、黒電話、ショルダーホンを経て現代のスマートフォンに至るまで、人並み以上に使いこなしてきた私的電話機ストーリーとは?

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第184回

電話機の私的変遷史 

小学校3年、、1948年頃から、わが家には電話機があったと記憶している。74年前だ。

壁掛け式の箱形でダイヤルはない。左側のフックに受話器が架けられ、右側にグルグル回して交換手を呼び出すハンドル。そして、前面にはベルとラッパのような送話器がある。

この電話機、調べてみると「デルビル磁石式壁掛電話機」というそうで、1896年から1965年頃まで、、おおよそ70年間使われたとのことだ。

壁掛け式電話機の高さは大人に合わせているので、僕が話す時は椅子か脚立に乗った。

次のわが家の電話機は黒の卓上式でダイヤル付き。1953年、僕が13歳の頃だったと思う。

この頃もまだ電話の普及率は低く、電話番号の横に(呼)と書かれた名刺をよく見た。

(呼)とは隣近所の家の電話番号で、掛かってきたら「呼び出して貰う」取決めのできている電話のこと。大らかな時代だった。

その後、電話の普及は急速に進み、通話品質も良くなっていった。

そして、1960年代の終わり頃、「プッシュホン」の出現で一気に時代は進む。さらには、1980年代終わり頃に出た「コードレスホン」で、今に繋がる固定電話の形はほぼ整った。

しかし、今や、固定電話はほぼ不要になりつつある。わが家でもまず使うことはない。掛かってくるのは怪しげなセールスや勧誘ばかり。FAXで送られてくる文書もここ1~2年で激減した。

なので、そろそろ、固定電話 / FAXを解約しようかと思い始めている。
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携帯電話のはしりは自動車電話。1980年頃だったと思うが、通信エリアが限られていたので、あまり便利とは言えなかった。

アンテナが目立つので、搭載車はすぐそれと分かった。なので、最新の通信機器を自慢したいためだけで入手する人もいた。そういえば、アンテナを2本立てる人もいたし、アンテナだけを立てる(電話機は無し)人もいた。

携帯電話の時代が正式に幕を開けたといえるのは1985年。日本初の携帯電話は、ポータブル式の「ショルダーホン」だった。

名前通りの肩掛け式で、通話機も大きく、バッテリーも大きく、重さは3kgもあった。

僕は自動車電話は買わなかったが、ショルダーホンはすぐ買った。決してカッコいい物ではなかったが、買わずにはいられなかった。

その2年後には通話機とバッテリーが一体化し、小型化されたハンディタイプが出た。これもすぐ買った。そして、人と会ったりする時、これ見よがしにテーブルの上に置いたりしたものだ。

携帯電話が現在のようにコンパクト化され、デジタル化され、国際電話サービスも開始されたのは1990年代に入った頃から。ここから、携帯電話は日常生活に欠かせない重要なツールになった。

いちばん最初に買った、、記念すべき携帯電話はモトローラ。だが、以後はボーダフォンに変わり、そして、iPhone3G以後は、ずっとiPhoneオンリーになっている。

1964年の初海外行きから長い間、日本との連絡には苦労が続いた。ホテルからの電話は高額なので、日本に掛けるときは公衆電話でのコレクトコールを使った。恐かったけれど、人気の絶えた夜中でもそうした。
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パリにいた時、新聞社から急ぎの取材依頼が入った。翌日までに電話で答えがほしいとのことだった。

その問い、、誤解のないように答えを伝えるには、ある程度時間がかかる込み入った内容だった。

なので、「ホテルからの電話代はかなり高くなりますよ!」と伝えた。でも、その担当者は、「領収書さえ頂ければいくらでも大丈夫ですよ。気にしないで下さい」と、、。

で、その結果だが、、電話代は、僕の宿泊料の数倍ほどだったように記憶している。

そんな状況が一気に好転したのは、1990年代半ばを過ぎた頃から。携帯電話にSMS機能が加ったことから始まった。

互いに時間を気にせず、短い言葉で用件を伝え合い、気持ちを伝え合う、、時差が8時間だろうと16時間だろうと、、一切気にせずに済むようになったのだ。

ホテルのベッドで目覚めて携帯を手にとる。SMSに「おはよう!、よく眠れた?」とメッセージが。「よく眠れたよ。これから朝食! 美味しいんだよ、ここの朝食!」と返す。「イイなぁ!」と返ってくる。

仕事先で素敵な景色に出逢ったりすると、写真を送る。、、と、すぐ「行きたいなぁ!」みたいな返信がくる。で、「了解! 今度は一緒に来よう!」みたいなことになる。

仕事の話でも、込み入ったことでない限りはSMSで済んでしまう。

電話で生の声を聞くのももちろんいい。でも、SMSでの短い言葉のやりとりには、なにか、、それぞれの心の内が凝縮されて詰まっているように感じることも多い。
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いい歳をして、、僕は、アナログよりデジタルの方に感覚がより馴染むようになってしまっている?、、のかも知れない。

たとえば、クルマを買うにしても、セールス担当と何度も会ってやりとりするのは面倒。だから、ほとんどSMSのやり取りだけで済ませる。その方がずっと楽なのだ。

でも、セールス担当とは仲が良いし、時々会って、クルマの話や世間話を楽しんでいる。

電話器の進化で旅のあれこれも変わった。極端な話、クレジットカードを登録したiPhoneさえ持っていれば、世界中を旅できる。

航空券もiPhoneのウォレットに入れておけばいいし、コロナによって、金銭授受(カード等も含めて)の「非接触化」は、世界中で大きく進んでいる。

世界の主要都市内の移動では、交通機関用プリペイドカードやICカードを使うのが便利だが、ここでも、非接触決済対応のクレジットカードを使える環境が整備されつつある。

僕はiPhoneのウォレットにVISAを登録しているが、これを非接触タッチするだけでバスや地下鉄に乗れるということ。現段階ではまだ「どこでもOK!」とはいかないものの、今後加速度的に普及していくだろう。

フライト中にWi-Fi 接続サービスでインターネットが使えるのも有り難い。メールをしたり、FBを見たり、友達とメッセージをやり取りしたり、、、そんなことで、退屈な時間をかなり楽しく過ごせる。

僕は旅行中に原稿は書かないので、たいていPCは持たない。旅を共にするのはiPhoneとiPadだけ。
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原稿は書かないが、ふと思いついたあれこれをすぐ書きとめるのは習慣になっている。これに役立っているのがiPhoneの「メモ」。

長時間のフライト中には、なぜか思いつく事が多くあるので、「メモ」は大活躍だ。次に書く予定の原稿のあらすじなども、フライト中のメモでほとんど出来上がってしまう。

高齢になって、物忘れが多くなっているのは明らかだが、それもiPhoneの「カレンダー」と「メモ」と「アラーム」が、ほとんどカバーしてくれている。大助かりだ。

好きな音楽、写真、雑誌、ファッション、クルマ等々のアプリも入れているので、これまた暇つぶしには大いに役立つ。

とにかく、携帯電話の高性能化に比例して、僕の生活も旅も各段に快適さを増した。

ちなみに、iPhoneとiPadは旧型を下取りに出さずに新型を買う。なので、iPhoneは6台、iPadは5台ある。

そして日々の仕事には、27インチのiMacと13 インチのMacBook Proを使っている。家内もまた27インチのiMacとiPhoneの愛用者。わが家はアップル製品だらけということになる。

僕はほぼ75年、通信手段の変化 / 進化を直接体験してきたわけだが、改めて思い返すと、「すごいことだな!」とつくづく思う。

今年のクリスマスシーズンには、スッキリした気分で海外の旅に出たい。軽装で、iPhoneとiPadを持って、、ハワイかウィーンに行けることを願っている。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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開場時間/10:30~19:00
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