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2019.07.28

30周年を迎えたレクサスは世界に通用したのか?

ついに30周年を迎えたレクサス。それを記念し中米コスタリカで開催された「Lexus Milestones(レクサス・マイルストーンズ)」のイベントをリポートしながら、30年を振り返る。

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取材・文/小川フミオ

80年代中期、のちにレクサスとなる高級ブランド構想が始まった

レクサスがついに30周年を迎えた。長かったような気もするし、あっというまだったような気もする。それを記念する「Lexus Milestones(レクサス・マイルストーンズ)」なるジャーナリスト向けイベントが、2019年7月に中米コスタリカで開催された。

コスタリカって、どれだけのひとが行ったことあるだろう。私にとっても初めての地。マイクル・クライトン原作の「ジュラシックパーク」の舞台になった島のある国というていどの認識だった。実際は北のニカラグアと南(南東)のパナマに挟まれた自然ゆたかな国で、観光地として人気がある。
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車体側面にはフロントから続くキャラクターラインが新たに入れられた
レクサスはリベリアというニカラグア国境ちかくのリゾート地をイベントの舞台に選んだ。マイナーチェンジしたばかりの「RX」をはじめ、「LS」「LC」それに「GX」(日本名LX)といった現行モデルを持ちこんだ。加えて、初代LSや初代SC(LCのルーツ)など、なつかしのモデルもずらりと並べられ、試乗に供された。ぜいたくな内容だ。

思い返せば、のちにレクサスとなる高級ブランドを作る構想がスタートしたのは1984年ごろだったという。北米で輸入ブランドとしてナンバーワンになったトヨタは、トヨタの上を行くモデルを求める顧客の存在に気がついた。そのひとたちが、キャデラックやメルセデス、BMWなどに流れるのを食い止めるために着想されたのだ。

Fの字を円で囲んだ「サークルF」というプロジェクトチームが編成された。チームを率いた鈴木一郎氏という当時のチーフエンジニアが設定した目標は「時速155マイル(時速250キロ)、空気抵抗値0.29、室内騒音は時速60マイル時に58デシベル(dB)」だったという。「彼のエンジニアチームは、それが実現可能であるかすら懐疑的でした」とレクサスが用意した資料には書いてある。
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低振動と静粛性と作りのよさでライバルに大きなショックを与えた1989年のLC400の静粛性は現代でも高いレベルにある
これが達成されたのが89年の初代レクサスLSである。日本ではトヨタ・セルシオの名で発売された。私は1989年1月にデトロイトで開催された北米自動車ショーを訪れて、さまざまな自動車メーカーの幹部がレクサスのブースを偵察にやってきたのをこの目で見た。

ドイツのメーカーは(いかにも頭の固いドイツのメーカーらしく)思いつきで作った大型セダンという感想を隠さなかった。しかし実際は、静かで快適でつくりがよいレクサスは、みるみるうちに米国の市場で確固たる地歩を築いたのだった。

話は逸れてしまうけれど、営業畑のひとには興味あるかもしれない話題をひとつ披露しよう。米国でレクサスが受け入れられたのは、もちろんクルマがよかったからだが、ブランドの浸透のために、販売担当者は懸命の努力をした。
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2005年に北米で発表されたRX初のハイブリッド、RX400hはいまも魅力的な乗り心地を味わわせてくれた
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今乗ってもよく出来ている初期モデル

私がおぼえているのは、富裕層が住んでいれば小さな町でも、休日のスワップミートやポロなどの競技のスポンサーをまめに務めていたことだ。会場には黒地に白でロゴマークを染め抜いたレクサスのバナーが掲げられ、地元のひとの共感を得るようになっていたのである。

今回、試乗会の舞台は、細長く海へ突き出たパパガヨ半島というリゾートに建つフォーシーズンズリゾート・コスタリカだった。両側が砂浜というぜいたくな立地で、終始、波が打ち寄せる音が部屋に響く風情ある環境だ。

そこで、ほんとうに久しぶりに初代LS(1989年)、初代SC(1991年)、初代RX(1998年)といったモデルに接することが出来た。LSはモデルチェンジを繰り返していまは5代目、SCは2017年にLCとなり、RXは現在4代目が店頭に並ぶ。

昔のモデルに乗ってみると、驚くほど出来がいいのだ。レクサスインターナショナルで車両開発を総指揮するエグゼクティブバイスプレジデントの佐藤恒治氏も現地に来ていて、話をするなかでレクサス車の価値は「圧倒的静粛性、乗り心地、作りのよさ」が核にあると語っていたが、それが最初からかなり高いレベルで実現されているのに、改めて感心してしまった。

いまは新車で買えないモデルのことをあまりホメても、読むひともフラストレーションがたまりそうなので短くしておくけれど、広びろとした室内、速度が上がっても静粛性が保たれる室内、ボディパネルの合わせの隙間の細さなど、当初からレクサスは気合いが入っていた。
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RXは世界初のブレードスキャン式AHS(アダプティブハイビームシステム)を搭載
私はリベリアで、2019年5月30日にマイナーチェンジを受けたRX450hにも試乗できた。フロントグリルにL字のブロックメッシュパターンを採用したことをはじめ、側面のキャラクターラインのデザインが変更されたのが外観の変更点である。

ボディと足まわりにも手が入れられた。目的は「すっきりと奥深い乗り味を追究」するためとレクサスでは謳う。ボディはスポット溶接の打点を増やすとともに、構造用接着剤の接着長も拡大した。剛性を高めつつ、ステアリングホイールを切ったときなどボディがしなやかにたわんで気持よく曲がることが狙いだ。

サスペンションまわりでも改良が施された。ハブベアリングの剛性を高めることで車両の応答性を向上させているし、スタビライザーバーの剛性を上げることで、アンダーステアの軽減とロールの低減をはかっているのだ。

コーナリング中に加速すると車両は外側にふくらむアンダーステア傾向をみせるが、それを抑制するため新しいRXには「アクティブコーナリングアシスト」が採用されている。加えて、EPS(電動パワーステアリング)のチューニングにも改良を加え、リニアなステアリングフィールを実現しているという。

ホテル周辺の道は舗装がよく、道幅も広く、交通量は少ない。ドライブを楽しむにはなかなかよい環境だ。コスタリカのレクサスディーラーの尽力で、本来は運転が許されない外国人観光客の私(たち)も、このときだけ特例的にドライブが出来たのである。
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集まったプレスにデザインのプレゼンテーションをするレクサスインターナショナル・デザイン部の須賀厚一部長
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実際に操縦すると、たしかにコーナリングが気持よい。カーブだけでなく、街角のコーナーなどでもフットワークが軽快になったことがわかる。335Nmのエンジントルクに加え、フロントのモーターがやはり335Nm、リアが139Nmとトルクを上乗せするから、加速性のよさはかなりのものだ。

中低速コーナーが連続する道では、アクティブコーナリングアシストも作動するのだろう。コーナーの入り口、途中、そして脱出に向けての加速にいたるまで、加減速と車体の動きのコントロールがドライバーの意のままというかんじである。従来型よりさらに好感度が増した。

前出の佐藤氏によると、レクサスは2017年のLCから新しい時代へと入っているそうだ。はっきりとした言葉では聞けなかったが、運転する楽しさの追求が続けられるようだ。
「これからEV化もするでしょうが、そのときは四輪の制御技術などでレクサスらしさを追究していくつもりです」という言葉が印象に残った。

開発総責任者の視野には、LCから電気自動車までがひとつの線で続いて見えているようだ。私には想像も出来ないが、自信ありげな言葉を聞いていると、期待がふくらんでしまう。
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● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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