2018.03.11
翼のマークが消えた! “新生”ブライトリングの真の狙いとは!?
あのブライトリングから翼のマークが消えた! 2017年夏にCEOに就任したジョージ・カーン氏率いる新生ブライトリングとして初となる、上海での大型プレゼンテーションを取材した。
- CREDIT :
文/前田陽一郎(LEON.JP)

一般のユーザーにとってはあまり関心のないことかもしれないが、ジョージ・カーン氏が歴任してきた時計ブランドの躍進ぶりを知る時計好きからすると、氏が率いるブライトリングがどうなるのか、というのは相当の関心事だった。

時計ブランドとして異色のプレゼンテーション
いかんせん、プレゼンテーションに割かれる時間の大半はムーヴメント解説に偏っていて、新しい機構や精度、ときには既存モデルの微差(技術的には革新でも一般ユーザーからは難解なアップデイトという意味で)の解説に終始するのが一般的だからだ。
ところが“新生”ブライトリングとしてはじめてとなる1月末に開催された「上海ロードショー」と名付けられたアジア向け新作発表の場ではほぼその時間をコンセプチュアルなプレゼンテーションに終始した。
もちろん、2017年夏にCEOに就任したばかりのジョージ・カーンにとって、この短期間でまったく新しいチームで新しいムーヴメントや機構を作り上げることはほぼ不可能だったはずだから、こうした発表に終始せざるを得ないところはあっただろう。それでもその徹底ぶりから見るに、彼が本気でブライトリングを変えようとしていることは確かだ。
「クラシック」「ヘリテイジ」「ライフスタイル」
「上海ロードショー」で印象に残ったキーワードは「クラシック」「ヘリテイジ」「ライフスタイル」の3つ。いや正確にいえば、これ以外の言葉は記憶に残っていない。
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?
会場に展示されていたブライトリングの歴史的モデル。これらにインスパイアされたモデルやデザインが登場するということ!?



モテるオトコは決まってブライトリングだった

これは空、飛行機、パイロット、という既存のイメージが少々ハードに寄り過ぎているという事実を認めたうえで、あらためてファッション性や時代性を加味したソフトへのイメージ戦略も重要視することへの宣言だと思われる。
「80年代後半、僕が大学生になった頃、お洒落でモテるヤツはみんなブライトリングをしていたのをよく覚えている」と話してくれたのは、新しくチーフマーケティングオフィサー(CMO)に就任したティム・セイラー氏だ。

時代のキーワードは、ネオクラシック
およそ30枚ほどの写真で構成されたイメージには過去の大戦中のパイロット、戦闘機、ダイバーなどの写真に混ざり、現代のカフェレーサースタイルにカスタムされたBMWやトライアンフ、クラシックなルックスにハイパワーエンジンを搭載したシンガー社が手がけるポルシェ、そして海のロールスロイスとも言われるリーヴァ社のボートが採用されていた。日本ではあまり知られていないが、それらはいま、ヨーロッパのアクティブな新富裕層を象徴するギヤとブランドばかりだ。
ここからはCMOのティム・セイラー氏とのやりとりを。
——イメージボードの一枚一枚をどこまで意識して作成しましたか。
「もちろん詳細に調べた上でのイメージボードです。ビジネス上の関係うんぬんではなく、あくまでユーザーのライフスタイルや価値観を想起させるものとしてですが」
——モダン建築にカフェレーサー、リーヴァにシンガー。すべてわかったうえでのチョイスですよね。
「そうです、わかりましたか!我々が考えるライフスタイルはただ豪奢なだけではない、趣味に彩られた豊かなもの、現代の“クール”です」
——まさにクラシックとライフスタイルの融合という?
「いわばネオクラシック、ですね。ただの懐古趣味ではない、現代のスペックと過去の素晴らしいデザインとの再解釈です」
「ナビタイマー8」に見る新生ブライトリング
気になる“8”という数字は、ウィリー・ブライトリングが1938年に設立したユイット・アビエーション(ユイットはフランス語で8を意味する)部門に由来している。これは軍事航空で使用するオンボードクロックなどに求められるパワーリザーブが8日間であったことから、その実現を目指した開発部署名として掲げられ、第二次大戦前には英国王立空軍から大量発注を得た歴史的名前でもあるそうだ。


実際に手にとることができたのは、完全自社開発製造ムーヴメントであり、COSC公認の精度と70時間のパワーリザーブを誇るキャリバー01を搭載し、横方向に積算計が並ぶ「ナビタイマー 8 B01」、COSC公認クロノメーターのブライトリングキャリバー13をムーヴメントにもち、縦方向の積算計が特徴的な「ナビタイマー 8 クロノグラフ」、ほか「ナビタイマー 8 デイ&デイト」「ナビタイマー 8 オートマチック」。
あ!翼のマークがない!
と、ここでお気付きの方もいらっしゃるだろう。
じつは今回発表された「ナビタイマー 8」シリーズのロゴまわりには、あの象徴的なウィングマークがついてない。ここも新生ブライトリングの「空だけではない」決意表明のひとつのようだ。
今回発表された「ナビタイマー 8」はその決意表明の第一弾らしい。
やはり1月下旬に発表されたイギリスを代表するオートバイブランド、ノートンとの提携は「空だけではない」ことの具現化としてその結実を待ちたい。詳細は未着ながら、プレゼンテーション後半でCEO自らが予告した、ブライトリングのヘリテイジを“リ・エディション”するという新作も秋には発表される模様で、これは「ナビタイマー 8」以上に、同社のクラシックを再定義するモデルとなりそうだ。
