ブランドアイコンである、ダブルトゥールビヨンを刷新

しかし、トゥールビヨン本来の役割を正しく理解している人はあまり多くないようです。トゥールビヨンとは重力の影響をキャンセルする装置と言われますが、これはどういう意味なのでしょうか?
トゥールビヨンに限らず、時計の心臓部であるテンプには、ヒゲゼンマイが備えられています。これが平均的に収縮を繰り返せば、等時性が保たれ、時計は高精度を発揮できるとされています。しかし、時計を縦姿勢(文字盤が垂直の状態)にした場合、ヒゲゼンマイは均一に収縮することができません。特に収縮の方向が一方向となる平ヒゲの場合、収縮する方向が上を向くのと下を向くのでは精度に大きな違いが出てきます。
これを姿勢差誤差と言って、同心円状に収縮する巻き上げヒゲゼンマイ(通称ブレゲヒゲ)を用いた場合でも、巻き出し位置の向きによって、同様の誤差は生じてしまいます。

「ロジェ・デュブイ」のダブルフライング トゥールビヨンは、このキャリッジをふたつにして、さらに細かく誤差を平均化しようという試みでした。理論的には、左右一対のキャリッジの中で、ヒゲの巻きだし位置が逆向きになっていれば、その時点で平均化の第一歩は完了していることになります。
キャリッジの回転を2倍楽しめる
新しいエクスカリバー ダブルフライング トゥールビヨンは、こうした超複雑機構ゆえの難点も克服しています。テンプを収めるキャリッジの下部をチタン素材とすることで、SS素材に比べて2倍近くの軽量化を成し遂げました。
キャリッジの軽量化は、そのまま駆動力ロスの減少に繋がり、結果的に高精度が期待できるのです。
より立体的になったスターモチーフにも注目
▲ 「エクスカリバー ダブルフライング トゥールビヨン」手巻き、18KWGケース(45mm)、カーフレザー(クイックリリースシステム)。100m防水。世界限定8本。2900万円/ロジェ・デュブイ
▲ スターモチーフのブリッジを交差させるなど、立体感をより高めた本作。メカニカルな魅力が凝縮されている。
▲ 「エクスカリバー ダブルフライング トゥールビヨン」手巻き、18KWGケース(45mm)、カーフレザー(クイックリリースシステム)。100m防水。世界限定8本。2900万円/ロジェ・デュブイ
▲ スターモチーフのブリッジを交差させるなど、立体感をより高めた本作。メカニカルな魅力が凝縮されている。
従来のスケルトントゥールビヨンでは、「ロジェ・デュブイ」の象徴としても知られるスターモチーフが受けの一部を兼ねていましたが、これを機能的に完全に分離したことで、ダイアル上に浮遊する立体的なスターモチーフが誕生しているのです。
また、製作と仕上げが極めて難しいチタンキャリッジを採用しながら、ジュネーブシールの基準をクリアしていることも驚くべきことでしょう。「ロジェ・デュブイ」の新しいダブルフライング トゥールビヨンは、高精度と審美性、そして基幹ムーブメントとしての汎用性まで両立させた、新しいベンチマークなのです。