2017.04.22
怒涛の年だったのは、ゼンマイだけにあらず…… 1969年、時計業界に何が起こったのか?〜vol.2〜
1969年は時計を語るうえで欠かせない年なのです。1969年の時計業界は、時代を大きく変化させる発明がたくさん生まれました。しかもその時計のDNAは、さまざまな形となって現代へと受け継がれています。そのなかから代表的なIWC [アイ・ダブリュー・シー]のダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ、Tag Heuer [タグ・ホイヤー]のホイヤー モナコ、Seiko [セイコー]のアストロン エグゼクティブライン 8Xシリーズ デュアルタイムの3つのモデルを紹介していきましょう。
IWC [アイ・ダブリュー・シー]
ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ/454万円
Tag Heuer [タグ・ホイヤー]
ホイヤー モナコ/61万5000円
Seiko [セイコー]
アストロン エグゼクティブライン 8Xシリーズ デュアルタイム /25万円
腕時計用の小さなムーブメントで高い精度を実現させるためには、常にゼンマイのトルクをフルパワーにしておくことが大切。
そのため腕に付けている限りはゼンマイを巻き上げ続ける自動巻きムーブメントが好まれました。
特にたくさんのパーツを使用するクロノグラフ機構の自動巻き化が急務となり、多くの時計メーカーの開発競争がスタート。
そして1969年に、タグ・ホイヤー、ブライトリング、ハミルトン、デュボア・デプラの4社連合によって世界初の自動巻き式クロノグラフムーブメント「クロノマチック」が完成したのです(同年にはゼニスとセイコーからも、自動巻き式クロノグラフが誕生しています)。
しかしその一方で、さらなる高い精度を追求するための新しいテクノロジーの研究も進んでいました。
スイスではスイス電子時計センターが、世界初のクオーツ式ムーブメント「ベータ21」のプロトタイプを製作。
さらにはセイコーがクオーツ式ムーブメントの量産化に成功して時代の寵児となり、その影響でスイス時計業界は一気に衰退していきました。
つまり1969年の時計には、栄枯盛衰のドラマがある。だからこそ魅力的なのです。
1969年にはこんなこともありました
ここではそんな歴史的な出来事を陰ながらサポートしていた時計を紹介しましょう。
1960年代後半は、社会が大きく揺れ動きました。
日本では学生運動が激化し、ベトナム戦争が泥沼化して全米に反戦運動が広がっていきます。
古い文化や慣習への反抗心からか、ミニスカートやカラーシャツ、ヒッピーカルチャーが隆盛を迎えたのもこの時期。
音楽フェスの原点である「ウッドストック・フェスティバル」もこの時代でした。
一方、科学技術ではアポロ11号が悲願の月面着陸を実現。
毀誉褒貶はあるものの環境対策や麻薬対策、ベトナム戦争の終結や中国と国交樹立など優れた手腕を発揮する政治家リチャード・ニクソンが、アメリカ合衆国の大統領に就任したのも1969年のことでした。
要するに現代へとつながる新しい時代が始まる分岐点が、1969年だったのです。
Vulcain [ヴァルカン]
50S プレジデンツ・ウォッチ クラシック/38万円
Omega [オメガ]
スピードマスター プロフェッショナル/53万円
スタイリング/久 修一郎 ヘアメイク/北村達彦
文/篠田哲生
写真協力/アフロ
2017年5月より