世界最薄記録を更新し続ける、ブルガリ流のウォッチメイキング
しかし、もっと根幹となる自社製ムーブメントまで手掛け始めた2010年代になると、ブルガリは「時計専業メーカーをはるかに凌ぐハイウォッチブランド」と認識されるようになっていきます。
その嚆矢となったのが、2014年に登場した「オクト フィニッシモ」でした。ブルガリは、専業メーカーでさえ生産が困難な“超薄型時計”をそのままハイコンプリケーションと位置付けて、次々とワールドレコードを更新していったのです。
同時にブルガリは、薄型であることが“新しいラグジュアリーのカタチ”という共通認識を、時計愛好家とファッショニスタの双方にもたらしました。
"薄い"がラグジュアリーなワケ
こうした設計の難しさに加えて、薄い部品は取り扱いが難しく、また部品同士のクリアランス(隙間)も徹底的に詰める必要が出てきます。ムーブメントを薄く仕上げ、しかも正確に組み上げることは、想像以上に難しいのです。しかし、これがそのままラグジュアリーである理由にもなってきます。
▲2014年には、ムーブメント厚1.95mm、ケース厚5.00mmの双方で、手巻きトゥールビヨンの世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」手巻き、TIケース(40mm)×ブレスレット、1156万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
▲2016年には、ミニッツリピーターの世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」手巻き、TIケース(40mm)、アリゲーターストラップ、限定50本。1816万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
▲2014年には、ムーブメント厚1.95mm、ケース厚5.00mmの双方で、手巻きトゥールビヨンの世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」手巻き、TIケース(40mm)×ブレスレット、1156万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
▲2016年には、ミニッツリピーターの世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」手巻き、TIケース(40mm)、アリゲーターストラップ、限定50本。1816万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
そして、ブルガリの凄すぎるところは、真っ向から斬新なスタイルの“超薄型”を作り上げてしまったこと。2014年には「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」が、手巻きトゥールビヨンの世界最薄を更新。この年は同時に、手巻き3針モデルの「オクト フィニッシモ」も発表されました。
1年空けて2016年には、ミニッツリピーターの世界最薄を更新した「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」が登場。薄型ケースの中で打鐘の音を反響させるために、インデックスをくり抜いたダイアルも大きな話題になりました。
▲2017年には、ムーブメント厚2.23mm、ケース厚5.15mmで、自動巻きの世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ オートマティック」自動巻き、TIケース(40mm)×ブレスレット。159万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
▲2018年には、自動巻きトゥールビヨンで4つ目の世界最薄記録を達成。設計が難しいペリフェラルローターを、手巻きトゥールビヨンの外周に配置して、1.95mmのムーブメント厚をキープ。さらにケース厚は3.95mm(=手巻きよりも薄い!)まで絞り込んだ。「オクト トゥールビヨン」自動巻き、TIケース(42mm)×ブレスレット、世界限定50本。1359万円/ブルガリ
▲2019年には、GMT機構を搭載したクロノグラフで、5つ目の世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」自動巻き、TIケース(42mm)×ブレスレット。191万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
▲2017年には、ムーブメント厚2.23mm、ケース厚5.15mmで、自動巻きの世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ オートマティック」自動巻き、TIケース(40mm)×ブレスレット。159万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
▲2018年には、自動巻きトゥールビヨンで4つ目の世界最薄記録を達成。設計が難しいペリフェラルローターを、手巻きトゥールビヨンの外周に配置して、1.95mmのムーブメント厚をキープ。さらにケース厚は3.95mm(=手巻きよりも薄い!)まで絞り込んだ。「オクト トゥールビヨン」自動巻き、TIケース(42mm)×ブレスレット、世界限定50本。1359万円/ブルガリ
▲2019年には、GMT機構を搭載したクロノグラフで、5つ目の世界最薄を更新。「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」自動巻き、TIケース(42mm)×ブレスレット。191万円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)
翌2017年には、最もアイコニックなフィニッシモが登場します。マイクロローターを備えた「オクト フィニッシモ オートマティック」が自動巻きの世界最薄を更新し、3度目のワールドレコードとなりました。またこの年は、14年の手巻きトゥールビヨンをスケルトナイズした「オクト フィニッシモ トゥールビヨン スケルトン」が登場。これもレコードホルダーです。
4回目のワールドレコードモデルも、同様にスケルトンモデルでした。2018年に登場した「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」が、自動巻きトゥールビヨンの世界最薄を更新。ブルガリは、レコードホルダーだったトゥールビヨン腕時計の最薄記録を、自ら塗り替えたのです。
さらに2019年は、5度目のレコードブレイカーとして、クロノグラフの最薄記録を更新。この「オクト フィニッシモ クロノグラフ」も、ペリフェラルローターを備えた自動巻きでしたが、手巻きまで含めても、文句なしの世界最薄でした。
次世代のラグジュアリースポーツへと変革するオートマティック
超薄型かつ複雑なファセットをもつフィニッシモのケースを磨き分けるのは、とても難易度の高いこと。しかし、ブルガリはケース厚を1.23mm増やすことで、仕上げの困難さと薄型のスタイリングを両立させました。
このアレンジによって防水性能が100mまでアップしたことを考えれば、これは“フィニッシモのラグジュアリースポーツ化”とも言えるでしょう。シースルーバック仕様になったことで、メカニカルな魅力も倍増しています。
ついに登場した超薄型のハイコンプリケーション
▲リミテッドナンバーが描かれたリュウズが誇らしげなケースサイド。従来のフィニッシモに比べれば、やや薄くらいのサイズだが、中身は超絶ハイコンプリ。そのギャップを知れば知るほど、驚きを隠せない。
▲メカニカルな魅力が凝縮されたケースバックからの眺め。スケルトナイズが凄みを効かせるが、一直線で構成されたリセットハンマーや、フライング方式を改めてブリッジを追加したトゥールビヨンなど、基本設計は極めて合理的だ。
▲リミテッドナンバーが描かれたリュウズが誇らしげなケースサイド。従来のフィニッシモに比べれば、やや薄くらいのサイズだが、中身は超絶ハイコンプリ。そのギャップを知れば知るほど、驚きを隠せない。
▲メカニカルな魅力が凝縮されたケースバックからの眺め。スケルトナイズが凄みを効かせるが、一直線で構成されたリセットハンマーや、フライング方式を改めてブリッジを追加したトゥールビヨンなど、基本設計は極めて合理的だ。
都合6度目となる最新の世界最薄記録は、8月26日に始まったジュネーブ・ウォッチ・デイズで発表されました。7.4mmというケース厚は、日常的に使えるスタンダードサイズのようですが、これにトゥールビヨン クロノグラフが収まっていることを知れば、時計に詳しい愛好家ほど驚きを隠せないハズ。
なぜなら、トゥールビヨンとクロノグラフは、厚さを削ることが難しい両巨頭なのです。「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン」が、“普通よりやや薄いサイズ”に収まっていることがすでに大事件。
しかも、世界最薄トゥールビヨンの設計を最大限に活かすため、クロノグラフの部分は完全新設計。2時位置プッシャーだけで操作するワンプッシュクロノとして新設計されているほか、クラッチの方式も、2018年のクロノグラフとはまったく異なる“スイングピニオン”です。難しいことは一旦置いておくとしても、ブルガリの気合いは十分に伝わってきます。
デイリーに使えるラグスポへと進化したオートマティックと、さりげなく超絶機構を身にまとえる薄型のハイコン。フィニッシモは、それが分かる大人にこそ相応しい選択なのです。